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「長時間労働は仕方ない」の意識を変える。 白河桃子さんに聞く、子育て夫婦の新しい働きかた

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女性活躍を推進するなら、男性の家庭進出も推進すべき。

けれども管理職になりたがる女性はなかなか増えず、男性の家事・育児への参加も遅々として進まない。原因は「男らしさ」「女らしさ」という古い価値観による役割分担か、それとも日本社会にはびこる長時間労働問題のせいか――。   

作家・少子化ジャーナリストの白河桃子(しらかわ・とうこ)さんは、著書『「専業主夫」になりたい男たち』で育児期の共働き夫婦に新しいかたちを提唱している。一億総活躍会議の民間議員も務める白河さんに、これからの夫婦のキャリアについて聞いた。

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■20代はすでにカップル単位で人生戦略を立てている

――白河さんは大学講師として若い世代に接する機会も多いと思いますが、「男は仕事、女は家事・育児」という性別役割分担に対して、世代別で意識の違いは感じられますか?

今の大学生はまだ、母親が専業主婦だったという子が圧倒的に多いんです。どこの教室に行ってもだいたい8割くらいが「専業またはパート主婦の母と、サラリーマンの夫」の家庭で育っている。男女役割分担を見て育った世代なので、夫婦のロールモデルはまだそこにあるようです。

けれども、今の20代女性はキャリア教育も進んでいるので、「仕事はできれば続けていく」と思っている割合が高いですね。あくまで私が見ている範囲ですが、共働きがデフォルトとまではいかないけれども、就活をちゃんとしていいところに入る、仕事はしなければいけない、という意識は強い。問題は出産後、子育てしながら働く部分がまったく白紙なところです。イメージゼロです。

逆に、今40代の働く女性にとっては、仕事は特別なもの。主婦になって仕事をやめていく女性が大勢いた中で残った側なので、仕事を続けてきたことに彼女たちは誇りを持っている。30代はちょうどその中間ですね。

――都市部で働くキャリア女性は、仕事を優先させた結果の高齢結婚・出産というケースも少なくありません。そういう上の世代を見ている現在の20代は、どのようなキャリア設計を理想とするのでしょう。

アンケートでも、今の若い女性は、早く結婚して早く産みたい、その上で仕事も続けていきたいと思っている子が多いです。バリバリ仕事をこなして遅く結婚して40代で子どもを産む、という姿にはあまり憧れがない。そういうことができるのは一部のスーパーウーマンで、彼女たちにとってのロールモデルにはならないと思っている。

私の研究会の学生の中には、「彼氏が9時5時で帰れる公的な機関に就職できたので、じゃあ私はちょっとハードな職場でも大丈夫かなと思っています」という子がいましたね。

――大学生のうちからカップル単位でのバランス、戦略をもう考えているんですね。

そうそう。その一方で面白かったのが、この本を出したら「実はうちにも主夫がいるんです」と40代以上女性たちが次々とカミングアウトしてくれたこと。彼女たちに共通しているのは、経営者やマスコミ業界といった、休めない、降りられない、つまりマッチョな職場であるということ。

彼女たちがすごいのは「自分は主夫になれるくらいの男性とじゃないと子どもを育てられない」ということを自覚していて、実際にそういう相手を選んで結婚したり、潔く大黒柱をひきうけているところです。でももちろんそういった男性だって最初からすんなり主夫になれるわけじゃない。話し合ってそのかたちに落ち着いたケースも多いです。彼女たちはさっき話した女子大生よりも、戦略的にキャリア設計を考えています。

これまで日本の女性には、わが子を養うというマインドはあっても、夫を養うというマインドはありませんでした。たとえ妻のほうが高年収であっても、です。でもこれからは「子どもが小さいときはどっちのキャリアを優先させる?」ということを夫婦で話し合う時代になっていくと思います。むしろ、そういう風になっていかざるを得ない。

――夫婦で、子育て期のキャリアを話し合っていくことが大事なんですね。

ここ数年、共働きの妻たちによるパートナーへの訴えかけのスキル、交渉術がすごく上がっていますよね。「共働きであることのメリット」を夫にプレゼンして共働きを勝ち取った女性の話も聞いたことがありますし、家事や育児を分担するための働きかけなんかも、Ⅳ象限の家事分布図を作ったりと、仕事のスキルと同様に上がっていると思います。

■長時間労働の是正に向けて、国と企業も変わろうとしている

――2016年1月末に開催され、白河さんも出席された第4回一億総活躍国民会議では、安倍総理が初めて「長時間労働の是正」について踏み込んだ発言をしました。国や企業も大きく変わっていかなければならない局面に差し掛かっているのでは。

これをきっかけに2016年が「長時間労働撲滅元年」になっていく流れができてほしいと思っています。今の日本では「長時間労働は仕方のないこと」と皆が思っていますけど、その意識を変えていく仕組みをまずは作っていかなければならない。

具体的な施策のひとつとしては、女性活躍推進法の良い認定をとるには、企業は「平均残業時間を45時間以内にする」ことが必須です。この45時間という数字は、1日2時間ずつ残業すると仮定しての数字です。多くのワーキングマザーは17時前後に会社を出て子どものお迎えに向かいますよね。一方、他の同僚たちは1日約2時間残業しているとする。でも2時間はみ出るくらいの差だったら、17時に帰ったワーママたちもなんとか翌日にはキャッチアップできるんです。

――たしかに。



ところが、これが毎日22時まで残業されたら、どんなに効率を上げて頑張っても追いつくのは難しい。無制限に残業できる人と、17時には絶対帰らなければならないワーキングマザーという構図では、フェアな競争にはなり得ないんです。そこに対して女性活躍推進法を使って、ワーキングマザーでも活躍できる仕組みを作っていけるようにしなければ。

――他にどのような仕組みが有効でしょうか。

ヨーロッパのように総労働量時間の規制をするという手もあります。それが実現すれば日本人の働き方はかなり大きく変わると思いますが、かなりの大手術です。せめてEUの勤務間インターバル規制(1日の最終的な勤務終了時から翌日の始業時までに、一定時間のインターバルを保障することにより従業員の休息時間を確保する制度)を導入したほうがいいと思いますが。EUは11時間のインターバル規制です。

■女性が活躍できる社会とは

――国や企業の変革も必要ですが、やはり制度が普及するまでには時間がかかりそうです。そういう要素も踏まえて、今まさに子育て真っ最中のカップルには、「主夫」という選択肢も十分に検討の余地がありそうですね。

専業主夫に限らなくても、兼業主夫でもいいんです。とにかく男性のほうもちゃんと責任をもって主体的に家事・育児に取り組む。そういう人たちはもっともっと増えていいと思います。

私はこれまでずっと、女性に向けて「これからは結婚とか出産とか子育てとか、女性としての幸せを考える上でも仕事はしなきゃ駄目だよ」と言い続けてきたんですね。でも、なかなか意識は変わらない。「やっぱり男が稼がなきゃね」とみんな本心では思っている。

ひょっとしたら順番が逆だったのかなと最近考えるようになったんです。一緒に家事や育児をしてくれる男性の存在を信じられない限り、女性は社会で活躍する気にはなれないんじゃないか、って。もしかしたら男性に発信するほうが先だったのかもしれない、と反省しています。

3月には、主夫になりたい男子&主夫がほしい女子のためのイベントを開催する予定なので、興味のある方はぜひ参加してみてください。「独身限定」でハッピーワークショップという手法(慶応大学SDM研究所が開発)を使います。カップリング目的の婚活パーティーではなくて、「男は仕事、女は家事・育児」という役割分担の概念から自由な人たちが集まるワークショップです。今回が2回目なのですが、1回目があっという間に満席になって好評だったので、これから定期的にやっていく予定です。

白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどをテーマに執筆、講演、テレビ出演など多数。2015年より「一億総活躍国民会議」の民間議員も務める。

最新の著書『「専業主夫」になりたい男たち』(ポプラ新書)では家事・育児を主体的に担う専業主夫とその妻たちへの取材をもとに、性別役割にとらわれない夫婦のあり方について考察している。

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取材・文 阿部花恵)

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