【精霊の守り人】実写版を原作者・上橋菜穂子はどう観た?

私の作品を読み込んでくださっている読者ほど、ここは同じ、ここは違うという見方をしてしまう可能性がありますが、あえて変えているところもあります。

原作者は実写版『精霊の守り人』をどう観たのか

NHKで放送がはじまった『大河ファンタジー 精霊の守り人』(毎週土曜 後9:00、全4回)。19日の初回の番組平均視聴率は11.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と上々の滑り出し。原作者の上橋菜穂子氏は実写版『精霊の守り人』をどう観たのか。

■「よくぞここまで、誠実に一生懸命、映像化してくれた」

私の『精霊の守り人』という本は、実は今年で20歳(はたち)になります。シリーズ第1作が出版されて20年になりました。小学校の図書館で出会ったという人たちが、いまは立派な大人になって、「そろそろ自分の子どもにも読ませられます」というくらいになっております。この20年の間に、日本だけではなく世界中、いろいろなところで読んでいただけるようになりました(7ヶ国語に翻訳)。

しかし、私はこの20年の間に、アニメにはなっても実写でこれをやっていただけるなんて、露にも思っていませんでした。それはなぜかといえば、とてつもなく作るのが難しい世界だと思っていたからです。

第1回を観て、一番大きく胸に迫ったのが、「よくぞここまで、私の物語の世界を誠実に一生懸命、映像化して下さったな」との思いでした。これはご覧いただいた方も驚かれたのではないでしょうか。それくらいによくできている。

そして、バルサを演じる綾瀬はるかさん。どういう風になるんだろうと思っていたんです。出だしのシーン、「若いな!」と思いました。

でも、それはわかっていたことで、この作品は、1クールで終わるドラマではないんですね。シーズン1として4回放送され、次の年、その次の年…と3年間にわたって、全22回放送される。主人公の少年は10歳だったのが17歳まで成長していきます。実際の時間で3年間、そして物語世界の中では7年の月日が流れるんです。

実写版のみどころの1つはこの時間経過に伴う「成長と変化」です。ドラマに登場する人物も、ドラマを作るスタッフ・キャストも人生経験を積んでいく、そういう面白いドラマになっていると思います。

■「綾瀬さんは読めない役者さん」

綾瀬さんのバルサは最初の印象は若かったんですが、チャグムをおんぶするあたりから、綾瀬さんが持つ温かい感じが出始めまして、笑顔の時と、男っぽい表情の時との落差に驚かされます。それが不思議で、面白いと思いました。

綾瀬さん自身はお肌もすごくきれいですから、泥だららけのメイクは、もったいないんじゃないかと思いましたが、ご本人は「泥だらけになるの好きなんです」と言ってくれて。綾瀬さんという人は本当に読めない役者さんですね。実際に演じられたことによって、どんどん変わっていく部分がある方だなあと思いました。

そして子役がまたすばらしいです。チャグム役の小林颯くんは本当にいくつもの面がありますね。ひと筋縄じゃいかない子だな、と思いました。精霊の卵を宿したことから「怖い」と疎(うと)まれる一方、「この子を守って何とか生かしてやりたい」と思わせるかわいらしさもある。それが非常にうまく出ていると思いました。

そして、バルサの養父・ジグロがいいですね(笑)。演じている吉川晃司さん。デンと大きく構えた男で、槍を持つ姿が格好よかったです。綾瀬さんもそうですが、大人に向かっている時は、凛とした大人ですが、小さい子に向けるまなざしには優しさがあふれている感じがよかったですね。

呪術師トロガイはどうなることかと思いましたが、高島礼子さんがさまざまな工夫をこらして演じているのが大変面白かったです。

■「完全に同じイメージの人はこの世にはいないから」

「イメージと違うものになるかもしれないのに、なぜ実写化するのか」と思っている原作ファンの方もいらっしゃるでしょう。

でも、完全に同じイメージの人なんて、この世にはいないです。私の作品を読み込んでくださっている読者ほど、ここは同じ、ここは違うという見方をしてしまう可能性がありますが、あえて変えているところもあります。

ストーリーの順番も変えています。そういうことにも意味があるんです。原作者側が、それこそ自分が好きなテレビドラマを見るような気持ちで1から見ることができますし、原作ファンの方々にも味わっていただけたらと思います。

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