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「未経験者でもできることがあった」 熊本地震の災害ボランティアを体験して分かったこと

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KUMAMOTO
活動報告をする、ボランティアの宮坂均さん | Kei Yoshikawa
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4月14日からの一連の熊本地震で大きな被害を受けた被災地で、ボランティアの受け入れを始める自治体が増えてきました。大型連休を迎え、被災地を訪れて役に立ちたいと思っている方も多いと思います。

どんな活動をするのか。現地で求められていることは何なのか。それを確かめるために23日、私は熊本市の災害ボランティアに参加しました。「未経験の私が参加して迷惑では」という不安もありましたが、現地で求められているのは、必ずしも体力や経験が必要なものばかりではありませんでした。わずか1日ではありますが、見えてきたことを報告します。


■午前8時 受付待機列に並ぶ

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ボランティア受付の待機列

まず被災地のボランティアセンターに参加登録をする必要があります。登録、申請方法は自治体により様々ですが、4月23日の熊本市では、午前9時から市街中心部の広場に集合でした。

小雨も降る肌寒い日でしたが、午前8時の時点ですでに70人ほどが列に並んでいました。上下つなぎの作業着に長靴姿の男性もいれば、ジャージ姿の高校生ぐらいの女性まで年齢層は様々。列に並んでいた、広島県から来た男性(48)は「2014年の広島の土砂災害で、ボランティアに助けられた。県民としてその恩返しのつもりで参加した」と話していました。


■午前9時 ボランティア登録の受付開始

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ボランティア受付票

午前9時、受付票に必要事項を記入して受付に提出すると、黄色いテープにカタカナで名前が書かれた名札を右腕に貼られました。これで登録完了です。登録にあたっては、ボランティア保険への加入が義務付けられています。自分の住む地元の社会福祉協議会で、必ず事前に加入しておきましょう。被災地のボランティアセンターで加入することは受付を混雑させるなど、迷惑になるおそれがあります。

センターでは受付、誘導、ガイダンスなどスタッフの役割分担が明確で、戸惑うことなく手続きができました。その後、広場内のテントに移動してオリエンテーションがありました。この日の活動の流れと注意事項が伝えられます。


■「ボランティア参加者が絶対にしてはいけないこと」とは

オリエンテーションでは、「被災者に寄り添うような行動を」という説明が強調されました。たとえば被災者の家の片付けで、泥にまみれた箱を見つけた時、「絶対にしてはいけないのは『このゴミどうしますか?』という聞き方です」とスタッフは説明します。

安易にゴミという言葉は使わず、「これ、洗ってとっておきましょうか」といった被災者に配慮した言葉遣いが求められます。「瓦礫やゴミに見えても、被災した方にとってみれば、それはかけがえのない思い出の品かもしれないんです」。スタッフの言葉に、改めて身の引き締まる思いがしました。


■午前9時20分 ボランティアの「マッチング」。私に割り振られたのは…

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被災者に配布したボランティア依頼票。被災者はボランティアに依頼したいことを記入し、ボランティアセンターに提出する

その後、マッチングという作業が行われました。「区役所で物資仕分け作業に10人必要です。力仕事ですが希望者は手をあげてください」「避難所のトイレの掃除に5人必要です。車でしか行けないので自家用車で来ている方にお願いしたいです」というように、ボランティアを適材適所に割り振るものです。

私はここで「ポスティング」という活動に割り振られました。市内の家に、ボランティアのニーズを調査する「ボランティア依頼票」を配る活動です。運営スタッフは「被災者がどんなことに困っているのか、それを拾い上げるための活動です。これをもとにして、今後のボランティア活動が決まります。避難所の支援と同様、熊本市では第一にやるべきものだと位置付けています」と説明しました。

私を含めて26人が1つのグループとなり、熊本市東区の尾ノ上地区でポスティングをすることになりました。この地域は陸上自衛隊の駐屯地にほど近いですが、高齢者の住民や築年数が古い一軒家も多いため、住民たちの困っていることをヒアリングすることが求められていました。ガイダンスが終わると、マイクロバスで現場へ向かいました。ここから先はグループの中から選んだリーダーを中心に活動します。

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ボランティアを送迎するマイクロバス


■午前10時30分 ポスティング開始

バスに揺られること約30分、午前10時30分に現地に到着しました。センターからはそう遠く離れていませんが、途中で渋滞もあり、参加者からは「結構時間がかかったね」という声も聞こえました。グループメンバーを5~6人ずつ5班に分けて、担当地区を分担します。参加者26人のうち、熊本市内の人が8人いたので、すべての班に土地勘がある地元の人を振り分けました。

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地図を参考に、ボランティア依頼票を各戸に配布した

配布にあたっては「被災者のニーズを把握するため、できる限り直接手渡ししてほしい」「枚数に限りがあり、まずは損壊が目立つ戸建ての家、お年寄りが住んでいる家を中心に配ってほしい」と指示がありました。住宅地図を見ながら、配布先を目指します。

この地区は小高い丘の上にある家も多く、歩いていると徐々に汗ばんできました。怪我の防止や汚れても良いように、長袖・長ズボンを着なければいけませんが、これから先の季節では帽子や汗拭きタオルも持参したほうが良さそうです。脱水症状や熱中症を防ぐため、水だけでなく塩分補給のために塩味の飴などもあると安心です。


■「次に大きな地震が来たら…」不安語る被災者

この日、初めてボランティア依頼票を手渡したのは、尾ノ上地区に住む主婦の松尾さん(67)でした。高台にある2階建ての家は、一見すると異常はなさそうですが、近づいてみると外壁に亀裂が入っていました。「何かお困りのことはありませんか」と尋ねると「屋根の瓦が剥がれちゃって、家の基礎部分も壊れちゃったのよ」と被害の状況を説明してくれました。

松尾さんは築30年ほどの家に長女と暮らしていますが「次に大きな地震が来たらきっと壊れちゃうわ」と不安そうに語ります。余震が怖く、夜は近所に借りたアパートで過ごしています。

同じ地区に住む主婦の平川さん(85)の家も、16日の地震で屋根を損傷しました。今はレジャーシートで穴をふさいでいますが、壁にも大きな亀裂が縦に入っていました。幸いにもライフラインは復旧し、ガスもプロパンガスを利用しているため、不都合はないそうです。地震直後は「部屋の中の家具はみんなひっくり返って、部屋の中はめちゃくちゃになった。プロパンガスのタンクが地震で倒れたらと思うと…」と、心配しています。

築年数は40年ほどで「ひ孫が7人いて、遊びに来てくれるのが楽しみ」と語るが、建物の危険度調査の結果次第では、この家に住めなくなる可能性もある。それでも平川さんは「今日には神戸に住む娘が帰ってきてくれるのよ。お米とかもあるし、暮らしには不自由してないわ」と気丈に話していました。

途中で雨が強まり、雨具を羽織りながらポスティングを続けました。外での活動時は、必ず雨具を携帯したほうが良さそうです。自分が風邪を引いて周りに迷惑をかけてしまっては元も子もありません。


■午後0時35分 空き時間で昼食 ボランティアの食事はどんなもの?

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昼食に持参した携帯食

約2時間をかけて、30世帯ほどに依頼票を配りました。すべての班が配り終えたのは、午後0時30分ごろでした。ボランティアセンターに戻るマイクロバスを駐車場で待つ間に、参加者たちは地元から持参した昼食を摂りました。おにぎりやパンの他にカロリーメイトなどを手に持つ人の姿もありました。

夏に向けて暑くなるので、食べやすく、持ち運びやすく、保存が効くものを持参するのが良さそうです。レトルトのおかゆなども良いかもしれません。私は東京から持参したチョコレート味の携帯食を食べました。これ1本で164kcal。甘味も効いていて、気分転換ができました。


■地元から参加した高校生 車中泊のつらさを語る

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岩村拓海さん

昼食を食べながら、参加者たちは自己紹介するなどして交流を深めました。同じグループだった県立熊本北高校3年の岩村拓海さん(17)は両親と弟と4人で熊本市内のマンションに住んでいます。自宅は16日の本震で激しい揺れに襲われました。

余震が続く中、一時は家族4人で車中泊をしていましたが、「家族4人、ミニバンで寝るんですが、とてもじゃないけど眠れないです。シートが平らにならず、足も伸ばせず、夜中に何度も目を覚ましました。車内が暑くなって窓を開けると、そこから蚊が入ってきて身体中刺されて大変でした」。そう言って見せてくれた左手には、蚊に刺された赤い跡がポツポツと数カ所残っていました。

「家にいてもやることもないし、どうせなら何か人の役立つことをやりたい」「もう家の中は落ち着いたので。明日も友達と参加する予定です」と、はにかみながら答えました。


■午後0時53分 バス待ちしていたら、突然「加勢してくれ」

駐車場でバスを待っていると、突然、白い軽トラックが目の前に止まりました。運転席から作業着姿の白髪の男性が出てきて「ボランティアの人たちか。今から家具を運ぶから、2人ばかり加勢してくれんか」と、話しかけてきました。突然のボランティア要請、参加者たちの表情に緊張と戸惑いの色が見えました。

飛び入りの依頼があった場合、ボランティアセンターでは「まずセンターに依頼してください」と対応するようボランティアに呼びかけています。「どんな場所で作業をするか分からないので、安全を保証できない」というのが理由です。

グループの1人が手伝えない旨を説明すると、「電話したけど出なかったんだ」と、男性は強い口調で述べました。ボランティアセンターの電話回線は限られ、つながりにくい状況が続いています。人員も足りない中、全ての依頼に応えるのはなかなか難しそうです。


■午後1時30分 ボランティアセンターに戻る

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活動報告をする、ボランティアの宮坂均さん

ボランティアセンターに戻ったのは午後1時半ごろ。今日の活動をグループ全員で振り返った後、リーダーが内容をまとめて、スタッフに報告します。この間に、他のボランティアは解散しました。こうして私が参加したボランティア活動は、午後2時すぎに一連の業務を終えました。

見ず知らずの人たちとグループを組むので、初めは何となく話しかけづらい雰囲気がグループ内にありましたが、1日の活動を通すことで、新しい縁も生まれました。グループのリーダーだった宮坂均さん(58)は、愛媛県から参加した佐々木純伍さん(21)が車中泊すると聞くと「よかったらうちに来ませんか」と誘っていました。

宮坂さんは幸いにも自宅マンションに被害がなかったため、今回の活動に参加しました。これまでに東北の被災地で、草むしりボランティアなどに参加したことがあるそうです。「たった1日でも良いんです。ボランティアをすることで、普通なら絶対に会えない人と知り合える。それもボランティアの大切なことだと思います」と語りました。


■ボランティアセンター「宿泊先だけは確保していただけると…」

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中川菜穂子さん

被災地でのボランティアに参加する上で、どんなことが必要なのでしょうか。センターを運営する熊本市社会福祉協議会・事務局長の中川菜穂子さんに話を聞きました。

中川さんによると、熊本市内ではコンビニでは品物が揃いつつあり、物流も復旧してきているそうです。「食料はもう持参しなくても良いと思います。熊本市内で購入していただくことで、『買って応援』していただきたい段階だと思います」と述べました。

ただ中川さんは「宿泊先だけは確保していただけると嬉しいです」と話します。市内のホテルは、地震の影響で営業を停止したり、被災者の受け入れ先になっているため宿泊は難しいそうです。一方で「(熊本市北区の)植木町や菊池市の方では、もしかしたら宿が取りやすいかもしれません」と、熊本市街から少し離れたところで宿泊先を探すことを勧めています。

また、車中泊をしながらボランティアに参加する人が増えていることについては、「ハードな仕事もあると思うので、できるだけ体を休めていただきたい」と、なるべく避けるよう話していました。


■自分ができることから。年齢や性別、経験は関係ない

私はこれまで、災害ボランティアに参加したことはありませんでした。それは私が、東日本大震災を日本で経験していないことが大きく影響しています。2011年3月11日、私は旅行でイタリアに滞在しており、日本にいませんでした。ローマ近郊の高速道路のパーキングエリアのテレビに、真っ暗な中で火が広がる宮城県気仙沼市の様子が映っていたことをよく覚えています。

自分の生まれ育った国が未曾有の危機を迎えていた時に、海外にいた自分の事を、私は心のどこかで後ろめたく思っていました。帰国後、みな口々に「地震があった時どこにいた?」という話をしていましたが、私はその話が出る度に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。震災後のボランティア活動も、何度か参加を考えたのですが、どうしても後ろめたさがあり、躊躇していました。

今回、熊本でボランティアに参加するにあたっても「迷惑をかけるのではないか」という不安をずっと抱えていました。しかし「どんな人にでも、来ていただけるだけでありがたいです」。ボランティアセンターを運営する熊本市社会福祉協議会の中川菜穂子さんに事前の問い合わせで聞いた言葉が、躊躇していた私の背中を押してくれました。

今回の体験でわかったのは、一口に「災害ボランティア」と言っても、建物が倒壊した場所で瓦礫を片付けたり、半壊した家屋の片付けといった大掛かりな作業だけではないということです。避難所のトイレ掃除や、支援物資の仕分け、ポスティング、小学校で子どもと遊んであげることなど、体力や経験がなくても参加できるものがあります。経験者・未経験者を問わず様々な世代の人が、自分に与えられた仕事を誠実に果たしていました。

年齢や性別に関係なく、しっかりと準備を整え、無理せずできる範囲で、やれることをやる。被災者の方のために、まずは自分ができることから始める。当たり前ですが、それが大事なことだと思います。

熊本地震の本震発生から一週間になります。「経験はないけど、何か手伝いたい」と、5月の大型連休中に被災地でのボランティアを希望する人も多いかと思います。少しでも、そういった方の参考になれば幸いです。

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地震から1週間の熊本(2016年4月22日)
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