YouTuberが小学生の「将来の夢」に登場 コース開設の専門学校も

なぜ、子どもたちはYouTuberに憧れるのか?
SINGAPORE - MAY 23: Japanese 'human beatboxer' Hikakin gives a thumb up on the red carpet during the Social Star Awards 2013 at Marina Bay Sands on May 23, 2013 in Singapore. (Photo by Suhaimi Abdullah/Getty Images)
SINGAPORE - MAY 23: Japanese 'human beatboxer' Hikakin gives a thumb up on the red carpet during the Social Star Awards 2013 at Marina Bay Sands on May 23, 2013 in Singapore. (Photo by Suhaimi Abdullah/Getty Images)
Suhaimi Abdullah via Getty Images

“YouTuber”は何故子ども達の“将来の夢”になったのか?

大阪府内のある小学校が「4年生男子の将来の夢」を調査した結果、第1位には不動の“サッカー選手”、2位に定番の“医者”、そして3位に“YouTuber(ユーチューバー)”がランクインしたことで大きな話題になっている。数年前、女子高生の「なりたい職業ランキング」で“キャバクラ嬢”が1位になったときも世間を驚かせたが、今やYouTuber……時の移り変わりを感じざるを得ない。なぜ、子どもたちはYouTuberに憧れるのか? ある専門学校では「YouTuberコース」まで開設されているのだ。

YouTuberとは、動画SNSのYouTubeに「○○をやってみた」系や「ゲーム実況中継」その他、何でもアリで動画をアップし、そこに広告を入れ込むことでGoogleからビュー数に応じて広告収入が振り込まれる、というシステムで収入を得ている人たちのこと。数年前から流れる「好きなことで、生きていく」をキャッチフレーズにしたYouTubeのCMで、一躍YouTuberの名は一般にも知られるようになり、HIKAKINやはじめしゃちょー、女性YouTuberの木下ゆうかなどのスターを生み出した。今では、波多陽区や東京エレキテル連合といった芸人たちも、YouTuber 界に“逆進出”しているような状況だ。

実際、彼らの動画を見たことのない人は「よっぽどすごいことをやってるんだろう」と思うだろうが、今「○○をやってみた」系の第一人者であるはじめしゃちょーの場合、ジェンガで階段を作って登ってみたり、ニベアクリームを100個分入れた風呂に入ってみたり…といった“ノリ”。ゲームの実況中継では、ゲームをしながら「ワーッ!キャーッ!」とやってるだけだし、女性YouTuberの場合は、メイクの解説やその他、歌を歌ったり、ダンスをしたり、料理を作ったり、大食いしたり……といった感じなのである。

彼らの“芸”についてYouTuberに詳しいエンタメ雑誌の編集者は次のように語る。

「正直言って、40代以上の一般人にとっては、ほとんどが学芸会ノリの“内輪ウケ”にしか見えないでしょう。テレビに出たとしてもまったく通用しません。でもYouTuber自身は、YouTubeとその他の活動で十分やっていけるので、マスメディアの必要性をあまり感じてないし、テレビに出たいという欲も薄いでしょう。それでも、けっこうイケメンのYouTuberであれば、ファン参加型のイベントなどで数千人規模のお客さんが集まる。若い人たちにとって彼らはアイドル的な存在なんです」

今、日本には数万人レベルのYouTuberがいるとも言われ、有名YouTuberにもなれば10万人以上のファンがつき、動画の視聴回数も数百万回を超えるのはザラ。その影響力もバカにできない。収入も、HIKAKINにいたっては年収1億円を超えるという説もあるが、実際にそれだけで生活できるYouTuberはごくわずか。かつて『クローズアップ現代』(NHK総合)でも、YouTubeに動画をアップしたら月にけっこうな収入があったので、「これだけで生活できる」と脱サラしたら収入が激減したという実例をあげていた。

再生回数増加の手法を研究 YouTuberがビジネス化

ただ最近では、若いYouTuberたちが事務所に所属するなど、今までの“ノリで動画をアップしたら、いつの間にかお金が稼げた”的なものから脱却し、YouTuberたちを組織化、ビジネス化する動きもあるようだ。税金対策とも言われるが、それだけYouTuberたちが稼いでいることもまた事実なのである。

そうした流れは教育分野にも及んでいる。インターナショナル・メディア学院は2016年3月、日本初の本格的な「YouTuberコース」の開設を発表。自分自身は顔出しせずに活動することを目指し、ITの基礎知識を学んで、どのようなジャンルの動画にするか、動画チャンネルの動画再生回数をどうやって増やすかなど、具体的な手法を研究して、YouTuberとしての技能を身につけるという。

ちなみに同学院のHPでは、「ご自分のお子様をターゲットの動画として、ご両親がこのコースを受講できます」と付記され、若者だけではなく、その親の世代への訴求も行なわれている。「実際、今YouTubeでは、“子ども(小学校低学年以下)”がオモチャやゲームで遊びながら解説するという動画が、若者のYouTuberにまさるとも劣らない人気なんです。もちろん親たちがその背後にはいるのでしょうが、テレビなどのコンテンツと同じで、子どもネタはハズシがない。5歳のがっちゃんというスターがいたり、“YouTuberキッズ”なんて言葉があるくらいですから」(前出・スタッフ)

将来の夢がサッカー選手でもYouTuberでも“好きなこと”という意味では同線上?

つまり、今やYouTuberは、子どもから親・大人へと十分に浸透しているというだけではなく、“職業”としても立派に認知されているということだ。そうした中、冒頭の“将来の夢ランキング”でもサッカー選手や医者に続いて、いきなりYouTuberがランクインしてきたわけである。先のYouTubeのCMのキャッチではないが、“好きなことで生きていく”ことは、いつの時代であっても、子ども・若者たちの憧れの生き方だろう。

つまり、サッカーも元々は“好きなこと”からスタートしているという点では、サッカー選手を夢とする子どもも、YouTuberとする子どもも実は同線上にあると言えなくもない。今やYouTuberは、子どもたちにとってはサッカー選手や医者と同じように、スター性、アイドル性、地位や名誉、そして高収入を期待できる憧れの職業なのである。

今後、このままYouTuberの裾野が広がっていくことになれば、日本文化の新たな創造と発信につながる可能性も十分にあるだろう。ただ、最後に前出の編集者が、「悪ふざけの延長としての“ネタ合戦”が過熱しすぎて事故にならなければいいのですが…」と、警鐘を鳴らしていたことも付け加えておきたい。

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