【LGBT】子どものいじめ、差別禁止法はどうなる? 国会議員が討論 女子大生の思いは...

「セクシュアル・マイノリティの生徒の約8割が、学校でLGBTについて否定的な言葉を聞いたことがある」

東京レインボープライド開催中の5月6日、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は「LGBTの子どもに対するいじめと、差別禁止法整備の必要性」と題したイベントを東京・新宿で開催した。当日の様子をレポートする。

イベントでは、HRW日本代表の土井香苗さんが、2015年に14都道府県で100人以上のLGBTの生徒や教員などを対象に実施した調査結果を発表。「セクシュアル・マイノリティの生徒の約8割が、学校でLGBTについて否定的な言葉を聞いたことがある」「3人に1人の先生が、LGBTを病気だと思っている」などの現状をふまえ、差別禁止法の制定や、国の「いじめ防止対策」に、LGBTの子どもなど弱い立場が明記されるべきとの認識を示した。

また、HRWでLGBTの権利プログラムを推進するボリス・ディトリッヒ氏は、日本におけるトランスジェンダーの子どもが抱える課題について「日本独特の制服システムは悪影響。制服を変えたいときは、性同一性障害の診断書が必要になる。自分が適切に感じるトイレを使えない」などと説明。文科省への提言として「トランスジェンダーが配慮を受けるのに、診断書はいらない。個人の希望であればいい」などと述べた。

HRWのボリス・ディトリッヒ氏

■LGBTの法整備、各党の考えは

パネルディスカッションでは、超党派のLGBT議連メンバーである公明党の新妻秀規・参院議員、民進党の西村智奈美・衆院議員、共産党の池内沙織・衆院議員、社民党の吉田忠智・参院議員らが参加し、「職場や学校でのいじめや法整備を含む対応」について議論を交わした。

自民党の牧島かれん・衆院議員は熊本訪問のため欠席。「被災した方にもLGBTがいる。その方にも耳を傾けていきたい」などとビデオメッセージを寄せた。

超党派の議連の幹事長を務める西村議員は、「立法チームも作り、通常国会で骨子案を提出できたらと思っていた。(与野党が)協調できると思っていたが、雲行きが怪しくなっている」と現状を報告。トランスジェンダーの子どもが抱える問題については「戸籍の変更がメインで、学校のことはあまり議論になっていなかった。教職員の研修を義務化するのが一歩なのではないか」などと語った。

新妻議員は、アメリカに駐在時に現地の友人が「(自分が)セクシュアル・マイノリティを揶揄した発言をしたときに、本気で叱ってくれた」ことが今の取り組みにつながっていると発言。「超党派の議連ができ、時が来たなと感じているが、立法には粘り強い合意形成が必要。積極的に働きかけていかないといけない」とコメントした。

(左から)共産党の池内沙織・衆院議員、民進党の西村智奈美・衆院議員、公明党の新妻秀規・参院議員

池内議員は、「私はボーイッシュな格好が好きだが、地元の愛媛・松山は女性らしいことが良しとされた」として「社会は多様であるべき。LGBT当事者というが、すべての人が尊重されるべきという意味では、すべての人が当事者」などと語った。厚労省の調査をふまえ「学校の先生が、同性愛は病気ではないと答えられたのは5%。教員だけではなく日本社会全体の問題」と訴えた。

吉田議員は、LGBTの子どものいじめ問題については「学校の先生には、研修ではなくて訓練が必要」と語った。法整備は「自民党が、LGBT法連合会の案を骨抜きにした法案を出そうとしている。『カムアウトする必要のない社会』は『LGBT黙ってろ法案』ではないかという声もある。できるだけ実効性のある法律を作っていきたい。いじめ防止法案の見直しに、LGBTも入れるべき」などと述べた。

(右から)LGBT法連合会の下平武氏、(独)労働政策研修・研究機構の内藤忍氏、社民党の吉田忠智・参院議員

■有識者の声「グローバル化は多様化」

その他、有識者からは「グローバル化には多様性が必要」との視点で、LGBT推進を訴える声が上がった。

出井伸之クオンタムリープ株式会社ファウンダー・CEOは「子どものいじめの問題だけではなく、日本の競争力の問題。今のままだと、日本は本当に遅れた国になってしまう。これから重要なのは、テクノロジー、才能、寛容性。先生方はスピードを上げて取り組んでいただきたい」とコメントした。

藤沢久美シンクタンク・ソフィアバンク代表は、「グローバル化は多様化。一人一人の多様な価値観を持った人が活躍することが大事。人権の問題だけではなく、経済の話として捉えたらいい。金融、経済も幅広い政策をやっている人を巻き込んで欲しい」などと話した。

質疑応答では「子どもが議論の中心になっているが、先生にも(当事者は)当然いる」などの声も上がった。会場には、地方から訪れたオープンな教員やカミングアウトしていない教員などの姿も見られた。

(左から)藤沢久美シンクタンク・ソフィアバンク代表、出井伸之クオンタムリープ株式会社ファウンダー・CEO、HRW日本代表、土井香苗氏

■参加した若者の声「目の前にいる当事者のことを考えて」

上京してイベントに参加した東海地方出身の女子大生は、「自民党の方がいなくて残念でした。各党から、選挙のためになりそうという空気が見られたのが悲しかった。ちゃんと人権問題として、党を超えて活動して欲しい。経済や国際関係も大事だと思うけど、第一には今目の前にいるのに見えていない当事者のことを考えて欲しいです」などと感想を語った。

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よく晴れた日。ステージにも多くの人が集まりました

東京レインボープライド 2016

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