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スラムダンク終了20年 作者・井上雄彦さん「バスケとの距離、どんどん縮まっている」

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コートに立つ井上雄彦さん=沖縄県沖縄市の同市体育館、安冨良弘撮影 | 朝日新聞社
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スラムダンク20年 井上雄彦さん、バスケとの距離は今

日本のバスケットボール界が今年、生まれ変わる。国内に二つあったリーグが統合され、新たに「Bリーグ」が秋にスタートする。大きな節目を前に、漫画「スラムダンク」の作者、井上雄彦さん(49)がBリーグへの思いを語った。今回のイラストのテーマは“胎動するBリーグ”。「日本中にいるバスケ好きの人たちの熱を、1人の架空の選手の背中に込めました」

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スラムダンク20年 井上雄彦さん、バスケとの距離は今
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スラムダンクが終わって、もう20年になります。一つの満足を得て、そこからはバガボンドとか、全然違うものを描きたくなった。バスケットボールとの距離は、かつてよりも開きました。

それがここ1年くらい、どんどん縮まっているんです。バスケが寄ってきているのか、僕が近づいているのかは分からない。良くも悪くも、バスケ関係の話題が世間的に多いということもあるでしょう。古い友人が「また飲もうや」と誘ってくれているような感覚。そしてまた、頻繁に会うようになった。そういう感じがします。

バスケを始めたのは高校です。それまでは剣道を。何か球技をしようと思っていたら友人に誘われました。軽い気持ちだったから、ここまではまると思わなかった。自分は初心者。下手くそでも、一生懸命やれば、だんだんできるようになる過程にワクワクしました。全体練習の後に1人で残ってやる練習が好きで、ドリブルしたり、シュートしたり。ボールの重みを通して、自分の体と対話するのが楽しかった。

漫画家になろうと思ったのも高校生のときです。題材として描けるものはバスケだけ。10代の乏しい体験の中で、うそじゃなく、人に伝えられるものがそれしかなかった。幸い、当時はバスケがテーマの漫画は少なかった。俺が描くから誰も描かないでくれ、と思っていました。バスケをやっていなかったら、漫画家になれたかどうかが分からない。バスケとの出会いが人生を変えました。

2006年に集英社などと協力して、米国への留学を後押しするスラムダンク奨学金という制度を立ち上げました。僕のバスケに対する恩返しであり、感謝。どうやってかたちにすればいいのかと考えたときに、これからの選手たちのチャンスをつくろうと思ったんです。

好きなチームは米プロバスケットボール協会(NBA)のレイカーズです。いまのように情報がなかった時代、雑誌の表紙を飾るレイカーズの格好良さにあこがれた。初めて生で見たNBAは、1990~91年シーズンの王者を決めるレイカーズ対ブルズのファイナル。レイカーズにはマジック・ジョンソン、ブルズにはマイケル・ジョーダンがいました。うまい選手ばかりが集まっている中でも、マジックとジョーダンの2人だけが別次元。2人だけが浮いて見えるくらいの存在感があった。見ていて我を忘れるような、そんな雰囲気。あんなぜいたくな初観戦はないですね。

若いときよりも、いまはたくさんの目線でバスケを見ている気がします。昔はスター選手ばかりに目が行く傾向があった。それが、コーチに目が行くようになったり、裏方に目が行くようになったり。年を取るというのは、そういうことなのかもしれません。

一ファンとして見てきた日本のバスケ界では、なかなか光が見えないという思いがありました。日本の男子は40年近く五輪に出られずにきています。高校バスケは盛り上がっていたし、競技人口も多い。ポテンシャルはあるのに、それを発揮できずにいる日本バスケ界が歯がゆかった。国力や経済力はスポーツに少なからず影響すると思うんですけど、バスケは、全然釣り合っていないんじゃないかという気もしていました。

日本人にはバスケは向かない、という言い方を日本人の口から聞くこともありました。自らがそれを認めてしまっている限り、その意見は永遠にくつがえされることはないでしょう。バスケに関わる人たち自身がそんな見方を断固否定し、目指す未来像を描かなくてはいけません。かつて日本サッカーがそうしたように。僕は、日本のバスケが世界で存在感を示す日が必ず来ると思っています。

今年秋にはBリーグが開幕します。今度こそ、という気持ちは大きいです。いままでは、子どもたちがバスケで食べていく、生きていく、ということをイメージしづらかった。Bリーグというトップリーグができ、成長していけば、そこにいろいろな思いをのせることができるはずです。

バスケにかかわる当事者の数が増えてほしい。ファンというかたちでもいいし、知り合いがリーグで働いている、でもいいし。やろうと思えばすぐできる、見ようと思えばすぐ見られる。バスケが、そんな身近な存在になればうれしい。

そのためにも、選手を知ってもらうことがいま、すごく必要だと思います。どういう考えを持っているのか、どんな言葉を発するのか。彼らの姿に触れることが、バスケを見るきっかけになればいいなと思います。バスケといえば、と聞けば、何人もの名前が挙がるようになってほしい。

僕にとっても、Bリーグでプレーする選手たちはあこがれの存在。自分自身楽しみながら、彼らの言葉に耳を傾けていきたいです。そしていつか、このリーグから本物のスーパースターが生まれる。そんな歴史を紡いでいってくれたらすばらしいですね。(構成・清水寿之)

     ◇

いのうえ・たけひこ 1967年鹿児島県生まれ、49歳。90~96年に集英社の週刊少年ジャンプで連載した「スラムダンク」は国内発行1億冊を超える大ヒットに。吉川英治原作の「宮本武蔵」を原案とした時代劇漫画「バガボンド」を講談社の週刊モーニング、車いすバスケットを題材にした「リアル」を集英社の週刊ヤングジャンプで連載中。

■B1に18チーム 今秋開幕



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今秋、開幕する男子のBリーグは、日本リーグの流れをくむナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)と、完全プロ化を目指して2005年に始まったTKbjリーグが一つになったプロリーグ。1部にあたる「B1」は18チーム、2部の「B2」は18チーム、3部の「B3」は9チームの計45チームが1年目から参戦する。

1部は東地区、中地区、西地区に6チームずつが分かれ、レギュラーシーズン60試合を戦う。各地区の上位2チームと、それ以外のチームの中で成績上位2チームの計8チームでチャンピオンシップを行い、初代王者を決める。

(朝日新聞デジタル 2016年5月15日04時23分)

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(朝日新聞社提供)