トランスジェンダーのトイレ使用をめぐり、11州がオバマ政権を提訴 なぜ対立が深まったのか【トイレ法案】

「今となっては、保護する責任を負うトランスジェンダーの若者を攻撃するところまで行ってしまった」
DURHAM, NC - MAY 10: Unisex signs hang outside bathrooms at Toast Paninoteca on May 10, 2016 in Durham, North Carolina. Debate over transgender bathroom access spreads nationwide as the U.S. Department of Justice countersues North Carolina Governor Pat McCrory from enforcing the provisions of House Bill 2 (HB2) that dictate what bathrooms transgender individuals can use. (Photo by Sara D. Davis/Getty Images)
Sara D. Davis via Getty Images
DURHAM, NC - MAY 10: Unisex signs hang outside bathrooms at Toast Paninoteca on May 10, 2016 in Durham, North Carolina. Debate over transgender bathroom access spreads nationwide as the U.S. Department of Justice countersues North Carolina Governor Pat McCrory from enforcing the provisions of House Bill 2 (HB2) that dictate what bathrooms transgender individuals can use. (Photo by Sara D. Davis/Getty Images)

「公立学校でトランスジェンダー(心と体の性の不一致)の生徒が自認する性に応じたトイレを使用できる」という指針を示したアメリカ連邦政府に対し、テキサス州のケン・パクストン司法長官(共和党)など11州は5月25日、指針の無効を求める訴訟を起こした

この問題は、ノースカロライナ州シャーロット市が制定した「心の性に合わせたトイレを使うべき」という条例に、パット・マクローリー州知事(共和党)が反発し、「生まれた時の体の性に合わせたトイレや更衣室を使うべき」という州法を3月に成立させたことに始まる。

ノースカロライナ州のパット・マクローリー知事

ノースカロライナ州の混乱を受け、オバマ政権は公立の学校や大学に、「既存の公民権法を遵守し、トランスジェンダーの生徒が自らが認識する性別のトイレを使用できるようにしなければならない」という指針を発表した。連邦政府と同州は5月9日、互いを提訴している。連邦政府は州法を「差別的だ」と主張して無効確認を求めたのに対し、同州は「常識的なプライバシー保護に基づいた政策」と主張して、州法の有効確認を求めている。

11州の訴訟は5月18日午後に発表された。テキサス州に続き、アラバマ州、ウィスコンシン州、ウエストバージニア州、テネシー州、アリゾナ州、メーン州、オクラホマ州、ルイジアナ州、ユタ州、ジョージア州が訴訟に加わった。

5月初めに公表された連邦政府の指針は、公立学校にトランスジェンダーの生徒が、嫌がらせを受けることなく、出生証明書の記載にかかわらず自らが認識する性別のトイレやロッカーを使用できるように、保護することを義務づけるものであった。オバマ政権は性による差別を禁じた教育改正法第9編(タイトルⅨ)を引用した。

「いかなる生徒も学校や大学の構内で、自分は歓迎されていないと感じる経験をもつべきではない」と、ジョン・キング・ジュニア教育長官は述べた。

バラク・オバマ大統領も同月、「あらゆる人が公平に取り扱われることを保証するための、社会としての私たちの義務の一部である」と述べた。

この動きはミシシッピ州のフィル・ブライアント、アーカンソー州のアサ・ハッチンソン氏、ケンタッキー州のマット・ベビン氏ら共和党派の知事から強い非難を浴びた。テキサス州のダン・パトリック副知事(共和党)は、連邦政府の指針と争うためには、数十億ドルが拠出される連邦政府からの教育資金を断念することも躊躇しないと述べた。オクラホマ州の共和党議員はさらに、オバマ大統領を告発するための措置を講じている。

訴訟の申立書には、「[オバマ政権は]全国の職場と教育現場の設定を大規模な社会実験のための実験室にしようと陰謀を企てており、民主的プロセスを愚弄し、子供と基本的なプライバシーの権利を保護する常識的な政策を完全に無視している」と記載されている。「議会、連邦、地域社会での決定が認められないなか、被告は国家にこのような過激な変更を押しつけることはできない」

トイレ論争をめぐっては、トランスジェンダーの人に、自認する性に基いて設備を使用することを認めると、学校は生徒を性犯罪者に狙われやすい状況に置くことになる、という主張が反対派から起きている。これはトランスジェンダーを嫌悪する「トランスフォビア」的発想だ。こうした事態が実際に起こっている証拠はなく、ハフポストUS版のノア・マイケルソン記者が指摘するように、性犯罪行為はすでに法で禁じられている

ヒューマン・ライツ・キャンペーンのコミュニケーション・ディレクターのジェイ・ブラウン氏は、2015年夏に連邦最高裁が出した同性婚を合憲とする判決への挑戦だと、訴訟を起こしたテキサス州のパクストン司法長官を強く非難した

テキサス州のケン・パクストン司法長官

「パクストン長官は、法の支配を損ない、恥ずべきことに州の公務員に対して昨年6月の連邦最高裁の婚姻の平等の判決を無視するように促している。この時点ですでに長官自身と州の名誉を汚している。今となっては、彼は司法長官として保護する責任を負うトランスジェンダーの若者を攻撃するところまで行ってしまった」と、ブラウン氏は声明で述べている。「パクストン長官が納税者の税金をこのような保護政策を破棄するために使用するのは、無謀で、高い代償を支払うことになる責任放棄だ。彼は説明責任を果たすべきである」

ハフポストUS版の記事を翻訳しました

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東京レインボープライド2016 参加者の声