【ヘイトスピーチ】法施行後、初のヘイトデモ 数百人に抗議され中止(動画・画像)

「ヘイトスピーチ解消法」施行後初の、民族差別を煽るヘイトデモは、差別に反対する人々の抗議に屈する形で中止された。

「ヘイトスピーチ解消法」施行後初の、民族差別を煽るヘイトデモは、差別に反対する人々の抗議に屈する形で中止された。

6月5日、川崎市中原区の武蔵小杉駅に近い公園を起点に、同市在住の男性が「川崎発!日本浄化デモ」と予告していたヘイトデモは、デモに抗議し、中止を求める人々が数百人集まり、デモ参加者と激しく言い争ったり、進路をふさいだりした。このため、デモは約10m進んだ時点で正午前に中止になった。NHKニュースによると、警察が主催者側に「デモを実施すると危険な状態になる」と説明し、主催者側がデモの中止を決めたという。

「不当な差別的言動は許されない」とした「ヘイトスピーチ解消法」施行後初のヘイトデモとして、川崎市が「不当な差別的言動から市民の安全と尊厳を守る」ことを理由に公園の使用を不許可にするなど、行政などの対応が注目されていた。警察はデモ直前の3日に道路の使用を許可したが、当日の対応には目立った変化が見られた。

5日は朝から、ヘイトデモに抗議し、中止を求める「カウンター」の人々が、起点とされた川崎市中原区の中原平和公園に続々と集まった。デモ参加者が姿を見せると、カウンターから「帰れ、帰れ」のコールが起き、カウンターと小競り合いが起きる。神奈川県警は参加者を武蔵小杉駅に戻して混乱を回避した。

開始予定時刻とされていた午前11時を前に、日の丸やプラカードを掲げたヘイトデモの参加者が集まり始めた。

カウンターの人々が道路に座り込んでヘイトデモの進路を妨げる「シットイン」を始めた。欧米などでもよく見られる抗議手法だが、これまでは通常、シットインする人々を警察が排除していた。しかし、今回はそうした光景は見られなかった。

現場で見守っていた神原元・弁護士は「これまではシットインは引きはがされて、放り投げられ、けがもさせられていたが、今日はご覧のような対応。法律ができて、警察もヘイトスピーチは違法であるとう前提で対処したのだと思う。日本の歴史にない、民衆の正義が悪に勝った瞬間だ。現場で戦ってきた人たちが社会を変えた」。

やがてカウンターの人数がふくれあがり、道路を埋め尽くした。

11時30分すぎ「デモは中止になりました。速やかに歩道に上がって下さい」と機動隊の車両からアナウンスが流れた。カウンターから拍手がわき起こる。

一部のヘイトデモ参加者たちは、解散後もしばらく現場近くでプラカードなどを掲げ、カウンターとにらみ合っていたが、やがて姿を消した。

デモ中止を受けて、カウンターの参加者たちは公園に再び集まり、中止を喜び合った。

在日コリアンが多く住む川崎市桜本地区でヘイトデモに抗議してきた在日コリアン3世の崔江以子(チェ・カンイジャ)さん(42)は「絶望が今日、希望で上書きされました。もう子供たちやハルモニをヘイトスピーチに触れさせない。根絶すると約束して戦ってきました。桜本の思いが国会に届き、法整備がされ、私たちは法で守られるべき存在だと示されました。私たちの尊厳が初めて大切にされました。今日の道路使用許可は本当に残念でしたが、神奈川県警は私たちの抗議活動の場を保障してくれ、監視してくれました」。崔さんの長男、寧生(ねお)君(14)は「主催者側からデモを中止と言ってくれた。すごいことだな、と思う」と喜んだ。

趙良葉さん(左)

「デモが進んだら、体を張って止めようと思っていた」という在日一世の趙良葉(チョ・ヤンヨプ)さん(79)は「いくら表現の自由と言いましても、人を虫けらのように言ったり、死ねの殺せのと、絶対そういう言葉は許してはいけない。表現の自由とは意見の表明の自由であって、生き物はみな一生懸命生きている。心の中にはしっかり傷があって、なかなか直らないものです。どうか私たちに傷を与えないように、どうぞよろしくお願いします」と訴えた。

一方、デモ主催者の男性は、NHKに対し「道路使用の許可を取ったのにデモができないのは言論弾圧だ」と述べた。

【UPDATE】2016/06/06 11:55 動画を追加しました。

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