「ニホニウム」新元素の名称案が決定 提案書に込めた福島への思いとは

元素番号「113」の名前が、正式に「ニホニウム」に決まった。

元素番号「113」の名前の案が、「ニホニウム」に決まった。

国際学会「国際純正・応用化学連合」(IUPAC)は6月8日深夜(日本時間)、公式サイトで、4つの新元素の名前を発表。日本の理化学研究所のグループが2004年に初めて発見した元素の名称案が、日本からの提案通り「ニホニウム」(Nh)となることになった。

今後、5カ月にわたる一般からの意見公募を経て、正式に決定する。

■元素の命名権はアジア初の快挙

森田浩介・九州大教授ら理化学研究所のグループは2004年7月、埼玉県和光市の理研仁科加速器研究センターで、人工的に元素を作り出すことに成功していた。毎日新聞によると、以下のような手法だった。

光速の10分の1(秒速約3万キロ)まで加速させた亜鉛の原子核(陽子30個)を重金属のビスマスの原子核(同83個)に衝突させ、核融合反応によりニホニウム(同113個)を初めて合成した。

12年まで360兆回の衝突実験でできたのは計3個。寿命は平均0・002秒しかなく、崩壊をくり返して別の元素のドブニウム(同105個)やメンデレビウム(同101個)に次々と姿を変えていく。詳しい性質は分かっていない。ロシアと米国の合同チームも04年2月、別の方法で合成したと発表したが、IUPACはデータの確実さから理研チームを初合成者と認定し、命名権を与えた。

新元素:113番「ニホニウム」 日本初の命名へ 理研合成 - 毎日新聞より 2016/06/09)

NHKによると、日本が元素の命名権を与えられたのは初めてで、アジアでも初。決定すると、世界中の元素周期表に「ニホニウム」が書き加えられる。

時事通信によると、理研の森田浩介グループディレクターは9日、「周期表を見て、そこに日本のグループが作った元素があるんだと気づいてくれて、少しでも理科が好きな子が増えれば望外の喜びだ」と話した。

また、論文や命名提案書などに「原発事故で傷ついた福島の人々にささげる」と書いていることについて、こう述べた。

「原子力発電も原子核を扱っている。(基礎科学が専門で)工業的応用は分からないが、非専門家といって逃げてはいけない。われわれができるのは科学の信頼を回復することだ」

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