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「トルコの女性は、性と同一に捉えられる」美しい5人姉妹の映画『裸足の季節』で監督が伝えたかったこと

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世界各国で33の賞を受賞した映画「裸足の季節」が6月11日から、シネスイッチ銀座ほかで公開されている。

トルコ出身の新人、デニズ・ガムゼ・エルギュベン監督が、5人姉妹の暮らしを通じて、母国トルコの伝統的な社会を描いた同作。初監督作品ながら、アカデミー外国語映画賞にノミネートされるなど、世界で話題を呼んでいる。

トルコの女性たちはどんな暮らしをしているのか。映画で伝えたかったことは? 「トルコの女性は、すべてが性と同一のものとして捉えられる」と語るエルギュベン監督に聞いた。


デニズ・ガムゼ・エルギュベン監督と来日した姉妹役の3人

「裸足の季節」あらすじ
舞台はトルコのイスタンブールから約1000キロ離れた黒海沿岸の小さな村。10年前に両親を事故で失った5人姉妹は、学校生活を楽しく謳歌していたが、海辺で男子生徒たちと遊んだ日を境に、生活が一変する。一切の外出を禁じられ、祖母のもとで保守的な慣習や暮らしを強いられることになる。お見合い結婚をする者、愛する人と結ばれる者、人生を諦めた者……。姉妹、そして5女ラーレは運命はーー。


(c)2015 CG CINEMA - VISTAMAR Filmproduktion - UHLANDFILM- Bam Film - KINOLOGY KINOLOGY

■映画で「トルコにおける女性とは何であるか」を描きたかった

——この脚本を書くことになったきっかけは?

まずトルコにおける女性とは何であるか、ということから始まりました。もともと自分自身の家族に、2世代に渡って女性が多かったものですから、女の子についての様々なストーリーが元々あったんです。そのことがいろんなシーンに影響しています。

ところが女性というのは、すべてが性と同一に捉えられるという現状があります。それが様々な人々の圧迫につながっています。映画でも、海で男の子の方にまたがってはしゃぐシーンの後、スキャンダルな出来事がありますが、ああいったことは、小さな年齢の頃から始まります。でも、ある年齢になると、「それは遊びじゃない、子供じゃないんだ、性なんだ」という話になってくるのです。

——学校に通っていたときの姉妹は、明るくて楽しくそうでキラキラしていました。そんな普通の少女が家に閉じ込められる展開に驚きましたが、トルコでは、実際にあることなのでしょうか?

真実の部分が反映されている部分と、物語のメルヘンの部分と両方あります。女の子たちの話しかたや神秘性、ビジュアル、装飾、コスチュームの部分は、メルヘン性を表現しているものです。一方で、現実の部分と同じものがあるんです。

家を壁を覆ったりするといった極端なことも、現実にあること。私たちの家族のなかでもありました。いろんな人たちの話でも「あそこの家の女の子が殺された」と聞くことは実際にあるんです。次女のセルマが処女検査をするといったエピソードがありましたが、あれも私がアンカラで聞いたことです。


(c)2015 CG CINEMA - VISTAMAR Filmproduktion - UHLANDFILM- Bam Film - KINOLOGY KINOLOGY

■モダンな生活と保守的な価値観 大都市はトルコの縮図

——トルコの保守的な価値観は、首都イスタンブールと地方で異なるものでしょうか? それとも世代によって異なる部分が大きいのでしょうか?

イスタンブールの街は、実際にはトルコ全土の縮図です。というのも、過疎化で、地方に人はあまりいないんです。いろんな街を調査しましたけど、撮影したのは黒海沿岸のイネボルという街ですが、ずいぶん人が減っていて、過疎化していました。広場に少し老人がいて、古いお店があっても人がいなくて、あるいはお店は閉まっている状況でした。

ですので、イスタンブールやアンカラといった大都市は、各地の人々が集まっていてトルコの縮図のような状態です。ものすごく文明的でモダンな生活がある一方で、極端な保守的な人々がいる。それだけ多様性、多面性があるといえます。

撮影したイネボルの村でも、とても自由な女の子たちを見たんです。でも3キロ離れた村に行くと、古い家の中に、お嫁さんや子供たちがいて一歩も出ない、映画と同じような現実がありました。男の人が昼にお茶を飲んで、女の人が畑で働いている、といったような状況もあります。

■実際に自分で見聞きした経験を、映画に反映

——実際に、ご自身が体験されたエピソードが映画に反映されていますか?

私がトルコで生きている以上、自分が見聞きしたことは反映されています。冒頭で、少女たちが少年たちの肩に乗ったことで、暴力的なほど叱責されるシーンがありますが、あれはティーンだった頃に私が経験したことです。

お母さんの時代にあったことですが、未婚者がいる農家に入ってはいけない、という暗黙の掟もありました。極端な例ではないかもしれませんが、これも社会的な圧迫のひとつです。


(c)2015 CG CINEMA - VISTAMAR Filmproduktion - UHLANDFILM- Bam Film - KINOLOGY KINOLOGY

——姉妹たちの5人がとても印象的でした。どうやってキャスティングされたんでしょうか?

シナリオができて、次にロケーション探しで、黒海沿いの街を巡りました。美しい海、恐ろしい自然……すべてを兼ね揃えた場所は、イネボル以外にはありませんでした。

キャスティングは、ずいぶん長い事かかりましたね。最終的に一人迷いましたが、あとは組合せと相性で、この5人に決まりました。映画の姉妹は、体が5つ、頭は1つという感じになりましたね。

■女性の行動に理解を示す人たちも

——拘束から逃れようと行動を起こす姉妹を阻止しようとする祖母たちに「行かせてやれよ」と声をかける男性もいました。

実際に年が若くて結婚させられる人がいるのは事実です。その反対に、こういった状況を警察に通報する人たちだっています。現実的に見れば、女の子たちが結婚させられていることを反対しない人もいます。

長女の結婚相手が次女に変わったり、次々とプロポーズする人々がやってきたりするシーンなど、演出もあります。ああいう手続きは、本来はもっと長い時間がかかるものです。


(c)2015 CG CINEMA - VISTAMAR Filmproduktion - UHLANDFILM- Bam Film - KINOLOGY KINOLOGY

——トルコのエルドアン大統領が先日「女性は子供を3人産むべき」と発言し、日本でも報じられました。日本も、まだまだ男女平等な社会とはいえません。女性たちは行動を起こしていくべきでしょうか。

現実的には、同じことがくり返されています。私は、5女のラーレのように行動できないかもしれません。多くの人は、おかしいと思っても、それを行動に移すことはできません。いまの家父長制度のシステムに慣れきってしまっている。だからこそくり返してしまいます。

小さい頃、農家のご主人が亡くなって、旦那さんの棺を触ろうとした奥さんがモスクから追い出されたことがありました。これは宗教的な価値観もありますが、遺体に女性が触ると汚れるという考えがあったのです。その後、私も(別の人の)お葬式にいって、棺に近づいたときに、躊躇の気持ちが脳裏にかすめたことがありました。私でも、そのようにくり返してしまうんです。

打開策を見つけることも大切ですが、それもできていません。映画の中で、女の子たちと暮らす祖母は、昔ながら女性の社会的な役割を大切にしている。でも、女の子たちは追い詰められた、崖っぷちのところにいる。彼女たちの「自由が欲しい」という気持ちは自然なことで、それをもとに動いています。

【訂正】「トルコの首都イスタンブールから約100キロ離れた」と書かれていた部分を「トルコのイスタンブールから約1000キロ離れた」と訂正しました。(2016/06/29 09:50)

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