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EU離脱の国民投票に影響は? ジョー・コックス議員殺害の容疑者、次々浮かぶ極右組織との接点

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イギリス中部のウエストヨークシャー州バーストールで、23日に行われるEU離脱の賛否を問う国民投票(プレクジット)に残留派として活動していた労働党のジョー・コックス議員(41)が殺害された事件について、地元警察は6月17日、実行犯のトーマス"トミー"メイア容疑者(52)が極右思想に影響を受けて犯行に及んだ可能性に言及した。BBCによると、ナチスを象徴するものが彼の自宅から発見されたとしている。

メイア容疑者はウェストヨークシャー州バーストール、ローウッドレーンにある小さなセミデタッチドハウス(イギリスの賃貸住宅)に住んでおり、かつては30〜40年ほど、リードにもいたという。は警察による家宅捜索を受けている。

地元の人は彼のことを「物静かで、他人と交わらない」人だったと話すが、反EUの運動を展開している極右グループとの関連も指摘されている。

メイア容疑者は以前、マーフィールドを拠点とし、メンタルヘルスに問題を抱える人が通う医療施設「パスウェイズ・デイセンター」の患者でもあった。

彼が現在もこのセンターに通っているかどうかは定かではない。

同センターのホームページの記述より:

自分に必要なもの、ほしいものを取り戻すにはサポートが必要ですから、当センターではアクティビティを主体とする治療を採用しています。目的意識を持ち、習慣づけて気分が良くなるようなことを止めてしまうかもしれません。

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トーマス・メイア容疑者(2011年撮影時)は地元の人から「孤独な人」と言われていた。

メイア容疑者はパスウェイズ・デイセンターにいた頃、地元の公園「オークウェル・パーク」でボランティア活動をしていた。当時46歳だったメイア容疑者は2010年、地元紙「ハダーズフィールド・デイリー・エグザミナー」の取材に、次のように述べている。

「正直な話、(ボランティア活動は)これまでのどの理学療法や医学的な治療よりも私にとって効果がありました。メンタルの病気を患っている人の多くは社会的に孤立していて、社会から隔離されています。自分は無価値だという思いは、おおむね共通して、長期の失業状態によるものです。こうした問題のすべてが、ボランティア活動をすることで軽減されます

外に出て見知らぬ人と出会うのはよいことですが、もっと大事なのは身体を使うこと、意味のある仕事をすることだと思います。何かをやり終えると達成感が得られます。これは精神的に報われるものですし、心理学的にも充足がもたらされます。

フルタイムで働いている会社員の人だとさまざまな理由で得られないものですが、ボランティアの仕事には、社会的に有意義で健康にもよい選択肢なのです」

2011年、メイア容疑者はバーストール・パークでのボランティア活動中に、 地元紙「バトレー&ブリストルニュース」で取材され、写真も撮られている。

メイア容疑者の親族デュアン・セントルイスさんは17日、「今までトラブルを起こしたことはないし、彼はそんな人間じゃありません、虫も殺せない性格です」と語っていた。

メイア容疑者が民族差別主義者であったか尋ねられると、セントルイスさんは「有り得ない」と答えた。

メイア容疑者は、極右組織「スプリングボック・クラブ」の支持者であったと確認されている。この組織は、雑誌「南アフリカ愛国運動」と「スプリングボック・サイバー・ニュースレター」を発行しており、かつてアパルトヘイト時代の南アフリカの白人至上主義体制を擁護したことがあった。

2006年に同組織からのニュースレターは、「バトリーのトーマス・メイア氏」の住所を探していた。

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今、どこにいますか?

トーマス・メイア氏はヨークシャのバトリー出身で、「南アフリカ愛国運動」の最も早い時期からの購読者であり支持者の一人でした。しかし、この街のフィールドヘッド・エステート地区にある、メイア氏の最後の住所と思われる場所からは明らかに引っ越していたので、メイア氏に送られた最近のニュースレターは送り返されてきました。もしメイア氏の新しい住所を誰かご存知であればとても助かります。

「スプリングボック・クラブ」のニュースレター最新号は、EUの国民投票(プレクジット)の概要を伝えている。

「2016年6月23日木曜日に、全てのイギリス人の有権者が、イギリスの将来に対して、一票を投じる機会を得られるのです」と同ニュースレターは述べている。

「人々はうわべだけの時代に逆行した欧州連合の罠に掛かったままでいるのか、自分たちの主権を有する独立を取り戻すのか、どちらかに投票して選択することが出来るのです」

「スプリングボック・クラブ」が6月16日に出した声明では、メイア容疑者と距離を置こうという姿勢が目立っていた。

5)アパルトヘイトに賛同する「南アフリカ愛国運動」が発表したトーマス・メイア氏に関する声明全文

声明によると、「ブラットリーとスペン選出の労働党ジョー・コックス下院議員が本日殺害されたとの知らせを受け、私たちは愕然とし、慙愧に堪えない」

「トーマス・メイアなる人物が、この犯行に関して逮捕されたということは知っているが、それでも、審理中の件に関しては慎重に言葉を選ばないといけない。

ヨークシャーのバトリーから来たトーマス・メイア氏が、まだ南アフリカ本国で、弊社の雑誌「南アフリカ愛国運動」を出版していた時期から定期購読をしていたのは事実だ。

メイア氏と私たちが一度も実際に会ってないのは間違いないし、1980年代半ばの短い期間に彼が弊社の雑誌を短期間定期購読していたということ以外接点は全くない。

従って、その後も、彼と我々の雑誌に接点があるかのような印象を与えようという報道があるが、完全に事実無根である。

アメリカでヘイトクライムやレイシストの行動を監視する活動をしている南部貧困法律センター(SPLC)によると、メイア容疑者は、かつてアメリカの有名なネオナチ団体であった、ナショナル・アライアンス(NA) の支持者でもあったという。

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SLPC が公表したレシートによると、メイア容疑者は自作の武器を作るためのマニュアルを持っていたことが明らかになっている。

極右団体「ブリテン・ファースト」は6月14日に声明を出し、コックス議員を襲撃しているあいだ、「ブリテン・ファースト!」と叫んでいたとの報道を受けて、自分たちとメイア容疑者は無関係だと述べた

「ブリテン・ファースト」のある古参会員によると、彼らはかねてから白人の左翼政治家に対する嫌悪を表明していたが、「他の人と同じようにショックを受けた」。そしてこの団体に容疑者は「絶対に所属していなかった」と語った。

コックス議員の死亡が発表される前にFacebookに投稿された動画で、 ブリテン・ファーストのリーダー、ポール・ゴールディング氏は事件との関連を強く否定した。

paul golding britain first
「ブリテン・ファースト」のポール・ゴールディング氏

「我々は今回の件では何もしなかったし、こんな暴力的な行動を許しはしない。我々は抗議行動を展開し、選挙に出馬する。私は最近ロンドンの市長選挙に出馬して10万票以上を集めた。我々が行うのはこういう政治活動だ」とゴールディング氏は動画で語っている。

「時には直接行動をとることもある。以前ハラールの屠畜場(イスラム法に則った屠畜)に押し入ったが、それは我々がハラールの屠畜に反対しているからだ。だが殺人のような行為は最低だ。それは暴力だ」

「この凶悪な犯罪を実行した人間がしかるべき罰を受けることを望む」と、ゴールディング氏は付け加えた。

ハフポストUK版より翻訳・加筆しました。

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コックス議員殺害事件(2016年6月16日)
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