「私たちの魂は、勇気はどこへ行った?」銃規制を求め、民主党議員が下院議会で座り込みの抗議

「私たちの魂はどこにあるのか? 私たちの勇気はどこに行ったのか?」

アメリカの上院議会が6月20日、銃規制強化案の採決の動議が否決したことを受けて、民主党の議員グループは22日、下院本会議場で座り込みの抗議を行い、議事進行を一時的に中断させた。これは、共和党首脳に対し銃規制強化案の採決を行うよう求めるためだ。

ジョージア州選出の民主党下院議員ジョン・ルイス氏 が座り込みを先導した。76歳のルイス議員は公民権運動の象徴でもあり、1960年代、座り込みによる抗議運動を主導した。ルイス議員は、宣教師が説教するかのように、銃乱射事件後、下院が何も対処していないことを熱を込めて糾弾した。

ジョン・ルイス下院議員

「何カ月も、何年にもわたって、そして7回の会期を通じて、下院に行動を起こさせるためには何が必要なのか、ずっと疑問に思ってきた」と、ルイス氏は、他の民主党議員がマイクの周りでゆっくりと彼を囲む中、質疑で発言した。「何十万もの罪のない人々が銃の暴力によって命を落とした。本当に小さな子供たち。赤ん坊。学生。教師。母親たちや父親たち。兄弟、姉妹。息子たち、娘たち。友人たちや近くに住んでいる人たち。それなのに、この下院は何かしただろうか? 議長、この集団は何ひとつたりとも成し遂げていません」

10分もの間にわたり、質疑はさらに加熱し、叫び声も混じった。「私たちの魂はどこにあるのか? 私たちの勇気はどこに行ったのか?」

ルイス氏は、共和党のポール・ライアン下院議長が保留となっている銃規制強化案の議論を再開させるべき時だと述べた。それが実現するまでの間、彼は「ただ座るだけだ」と言い、数秒して彼は床に座り込んだ。そして、他の民主党議員も彼と一緒に座り込んだ。

「時には、常軌を逸した行動をとる必要があります。時には、道が存在しない場所に道を作る必要があります。沈黙は長すぎました。今こそ、出て行くべき時なのです。もう黙ってはいません。沈黙は終わりました」と、ルイス氏は発言した。

もう1人の民主党議員が話し始めようとすると、席に座っていた共和党のライアン議員は小槌を叩いて、正午まで議事を中断させた。また、下院は議会内を放映するケーブルテレビ局「C-SPAN」のカメラ撮影を中断させた。

議会が再招集された際にも、民主党の議員たちは態度を変えることを拒み、吹き抜けの場所に円を作って、歌い始めた。共和党員たちは再度、議会を中断することになった。

共和党の首脳たちが、どのような対処をするのかは不明だ。

「議員が下院の規則に従うことなく、下院の運営を行うことはできません。従って、下院は議長の要請により、議事を中断しました」と、ライアン議長の広報担当アシュリー・ストロング氏は述べた。

ポール・ライアン下院議長

何人もの民主党員が抗議の間、画像をTwitterに投稿した。彼らは新しく考案した#NoBillNoBreak( 法案なくして、休憩なし)というハッシュタグを使っている。

下院を占拠。行動を起こすよう求めている。

ジョン・ルイスと何十人もの議員と一緒に下院で座り込み。銃暴力を防ぐ法案の投票を。

下院の床の上で座り込み抗議を行っていることを誇りに思う。銃暴力に対して行動を起こすよう求める #gunviolence

カメラがない中、スコット・ピーターズ議員がTwitter上で映像を流し、議員たちが話している姿を伝えた。C-SPANは PeriscopeやFacebook Liveを使って放送した。

民主党の上院議員たちも、下院議員たちと一緒に立ったり座ったりするために登場した。参加した議員の中には、次の人々がいる。エリザベス・ウォーレン 、クリス・クーンズ、チャック・シューマー、エイミー・クロブシャー 、アル・フランケン、ティム・ケイン、ビル・ネルソン、コーリー・ブッカー、クレア・マカスキル、デビー・スタベナウ 、ディック・ダービン 、クリス・マーフィー、リチャード・ブルーメンソール、ジェフ・マークリー、メイジー・ヒロノ。

大統領候補のヒラリー・クリントン上院議員とバーニー・サンダース上院議員 (無所属・バーモント州) の姿はなかった。

ルイス氏の取り組みは、議会が今週末の間休会する前に、共和党員に採決を促そうとする刺激的な試みだった。しかし、民主党下院議員が計画しているのは、この議事の中断だけではない。複数の側近と議員によると、民主党議員たちは、下院を実質的に占拠して、銃規制強化法案が審議されるように試みるようだ。

「ノー・ビル、ノー・ブレイク (法案なくして、休憩なし)」キャンペーンの目的は、議事進行規則を賢く繰り返し使用することである。下院民主党首脳のジェームズ・クライバーン氏は、搭乗拒否リストに掲載された人々から銃購入の権利を剥奪する法案を提起しようと2度試み、2度とも失敗した。

しかし、党の計画のほとんどは、共和党が阻止する動きを見せるのではないかという恐れから、秘密裏に勧められた。何人もの側近が、この民主党の取り組みを「ディスラプション (中断)」キャンペーンと表現してきている。ある民主党議員の1人は、「党がさまざまな議事進行上の戦術を活用し、ワシントンDCで、共和党にプレッシャーをかける。議会休会中の来週には、ここの選挙区でプレッシャーをかける」と話した。

この議員は「今週は、議場に注目してほしい」とも付け加えた。

少数党である民主党は、どの法案が議会で審議されるのか、されないのかに関して、実質、影響力を持っていない。民主党にとって、議論を脱線させる唯一の方法は、抗議のために叫ぶことだけである。マナーとしては決して良くはないが、実際、それは行われている。もしくは、議事進行上のテクニックを使って、操作することだけだ。民主党議員はその両方を来週、使う予定でいる。

最終的なゴールは、超党派の銃規制強化法案に対して、議員たちの態度をはっきりさせるよう求めることである。この法案はFBIと司法長官に対し、搭乗拒否リストに掲載された人々による火器の購入を禁止する権力を与えるものだ。加えて、銃販売の際の身元調査を拡大する法案もある。しかし、民主党が採決に持ち込む力は限定的である。そのため、民主党議員は今後の対策を協議した。民主党首脳のナンシー・ペロシ元下院議長は、スティーブ・イスラエルとマイク・トンプソン両議員とともに「ノー・ビル、ノー・ブレイク」のコンセプトを考え出した。マイク・トンプソン氏は法案の共同提出者である。

ナンシー・ペロシ元下院議長

22日朝の民主党議員総会で、ペロシ氏は議員たちに対し、今後数日間のために「大きな計画を詰めているところだ」と発言した。そして、採決を行えるよう、一致団結に取り組むよう奨励した。その場にいた側近の1人によると、議員たちが有権者に、行動しないことに決して満足していない、ということを示したいと思っていることについて、ぺロシ元議長は賛同したという。

「みなさんの多くが行動し続けることなく、黙祷だけしてはならないと発言しました。黙祷だけでは、否定につながるからです。私たちがしなければいけないことを否定しているのです」と、ペロシ元議長は議員に向かって発言しました。「今、真実と行動の時としなければなりません。ここから始めるのです」

民主党首脳の側近たちによると、ジョン・ルイス氏が先導する座り込みに加えて、議員たちが休会の動議を繰り返し提出することや、投票を求める喚問を行われる予定だ。また、ペロシ元議長は22日にメディア向けに会見し、ライアン議長に対し、銃規制関連2法案の投票を行うまで、下院の会期を継続するよう呼びかける予定だ。

「これは反響なのです。私たちは互いに反響しあっています。私たちが実行したいのは、アメリカ中に「ノー・ビル、ノー・ブレイク」のメッセージが反復される反響室を作ることなのです」と、ペロシ氏は、国会議事堂の外でカメラに向かって発言した。カメラは議会内に入ることを許されていなかった。

「犠牲者を尊ぶために黙祷するというのはもちろん大切です。しかし、行動の代わりにはなりませんし、代わりになると考えてもいけません。黙祷の時間ではなく、真実の時間が欲しいのです。そして、それに続けて、行動の時間も欲しいのです」

ペロシ元議長は、民主党が歩みを止めないことを約束した。

「1日中、必要な限り、そこに留まるでしょう。毎日でも。もし、彼ら [共和党] が休会を決めるなら、民主党議員は休会中の間、プロ・フォーマ (下院休会中の会期外のセッション) のために留まります。そして、選挙区にも行きます」

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