NEWS

「ちゃんと順序立ててやれば、世の中の矛盾はなくなる」 Zeebraが語る社会の変えかた

2016年06月24日 20時11分 JST

2016年6月23日、改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律)が施行され、深夜のクラブ営業が条件付きで合法となった。

前編に続いて、この法改正に大きな役割を果たした「クラブとクラブカルチャーを守る会(CCCC)」の会長でラッパー・DJのZeebraさんに、活動を成功させた方法論と活動の中で起きた変化、そして風営法改正後の展望について聞く。

zeebra

■活動の認知度向上に大きかった、TVとSNS

――風営法を改正する活動の認知度を上げるために、意識されたことはありますか。

一番大きかったのは、テレビかなと思います。「ビートたけしのTVタックル」に出させていただいて、われわれの活動の話もたくさんさせてもらって。一番反響が大きかったんじゃないかなと思います。

あとはFacebook。いま、SNSじゃないですか。自分は一般の方や知人でない方は(Facebook上での友人申請を)受け付けていなくて、投稿が表示されるのは友達や関係者ばっかりなんですが、みてると周りのみんなもそうなんですよ。われわれがバンバン書き込みをしてるんで、いろんなジャンルのDJの人たちがそういう話をしてると、どんどん「いまそういうことになってんだな」と盛り上がってくるというか。

それで、活動が全国的にも広がっていって。大阪にもわれわれメンバー何人かで行って、「事業者とアーティストが一丸となって、様々なエリアで盛り上げていかないと、いい方向に話が進んでいかない」という話をしました。向こうのDJの方々に集まっていただいて、みなさんと意見を交換して。

そうしたら大阪にも、アーティストの会ができました。で、大阪は大阪で、その会でパネルディスカッションをするようなイベントをやったり、われわれをそこに招いてくれたりとかして。そして、同じような会が福岡にもできて。いろいろなエリアに、そういうものができるようになっていきました。

――テレビ出演は、戦略的にされた部分はあったんですか。

モロですね。われわれができることは表に立ってしゃべること、こちらに注目してもらうようにすること。それの最たるところが民放テレビ番組だったなと思うんで、はじめからかなり意識して。いまでも、出られるメディアに関してはできるだけ対応するように、という感じですね。

2016-06-24-1466761902-1882372-CCCC_ams_3.JPG

海外メディアの取材を受けるZeebraさん。撮影:日浦一郎

■1人の人間として、活動に向き合う

――メディア活動だけでなく、草の根的な活動を同時に行われてきたと思うのですが、どんな理由がありましたか。

われわれ自体が、完全にボランティアで、手弁当の会なわけですよ。最近やっと資金集めを手伝っていただけるところが出てきたり、スポンサーさんも手を上げてくださったりということになってきていますが、この3年間ぐらい、みんな手弁当で、地方に行くにしても自腹切って行っていた。

基本的には、資金を使って好き放題をするのではなくて、1人の人として活動する。クラブの隣にある八百屋さん、クラブの裏に住んでる学校の先生とかと同じように、僕はDJだったりアーティストだったり、そういう仕事なだけですし。1人の人間として参加することに意味があるんじゃないかなっていうのは、早い段階からみんなの意識としてありました。

そもそも、集まっている人たちは、何か大きな資本に動かされるような連中ではないので。だから余計に、派手なことをそぎ落として始めたことがよかったんじゃないかなという気もしますね。はじめから大きなものがあって、そこに甘えてやっていたら、たぶん成功しなかったんじゃないかな、っていう。

――それは会に参加されている方々の姿勢と関係があったんでしょうか。

そうですね。うちの会にいらっしゃる諸先輩方は、皆さんリーダーで、本当に自分たちでカルチャーをつくってきた人たちなんで、その「つくってきた」ことに対する責任感がものすごくあるんですよね。

僕も20代ぐらいの頃からクラブだったり、ヒップホップだったりに対する責任感を持ってたつもりですけれども、まぁもう20年、25年、30年とやらせていただいていると、やはりこれがなかったら自分のいまはなにもないわけだし、それだけお世話になったものに対して、なにか恩返しができることはないかなという意識もものすごく強いと思います。

zeebra

■効率の悪い、でもものすごく民主的なやりかた

――会のメンバーそれぞれに、社会的な活動における方法論のようなものがありましたか。あるいは、活動において参考にされた他の活動や海外の動きなどはありましたか。

みんなネットワークは広いんで、たとえば「ベルリンではこんなことが起きてるよ」とかっていう話はみんな持ってくるんですけれども、基本は「みんなで話し合う」という、ものすごく…言い方を悪く言うと効率が悪い、でもものすごく民主的というか、すごく慎重に1つ1つ進めてきたなという気がしますね。

クラブって、ジャンルも様々あって、みんなのコンセンサスを1つにするっていうのが基本的には不可能なんですよ。

今回、風営法を改正しようということになったら、われわれも主張するぶん、どこかで譲歩しなきゃいけない部分もあると思うんですが、それを誰が決めていいのか、っていうことになるわけじゃないですか。われわれが立ち上がったからって、勝手に決めていいわけでもないし。会の中で、それ以外の人たちも文句がないような答えってなんだろうというのを、とにかく話し合って話し合って、つくってきたっていう感じです。

もう本当に、面白いぐらい「極右」「極左」みたいな人たちがいるわけですよ、グループの中に(笑)。だから、ちょっとした小さな業界みたいになっていて、クラブ業界の縮図がCCCCの中にある、みたいなところがあるんで。その中である程度コンセンサスが取れれば、たぶん会の外側にいる方にも理解してもらえるんじゃないか、という意識でした。

2016-06-24-1466761441-1283409-CCCC.jpg

CCCC定例会の様子。撮影:日浦一郎

■いいことして、みんなに喜ばれて、法律まで変わっちゃう

――社会にメッセージを伝える、という活動を本格的に始める前と後で考えが変わった部分はありましたか。

いや、ないですね。こういうことになるべきだと思ってたし。

たとえばU2のボノは、ずーっとやっているじゃないですか、社会的なメッセージを伝えることを。そういうアーティストが日本にもいっぱいいるべきだし。

最近は日本も様々な窮地に立たされたことで、いろいろな言論だったり表現だったりが結構出てきてると思います。アーティストがいろんなことに対して、声を大にして主張することが普通になってきている。このままそういう形がどんどん広がっていったらいいなと。

われわれは多分いちばん、市民一般の人たちに近いところにいる、何かが言える存在だということを常に意識して。常に、ピープル側にいるわれわれっていう形でやれることが、一番いいんじゃないかなと思うんで。

――Zeebraさんの周囲にいるアーティストや事業者の方に、今回の活動で変化はありましたか。

まず、なかなかゴミなんか拾わないじゃないですか(笑)。人が捨てたゴミなんかを拾うような人たちじゃなかったと思うんですよね。ただ、それは結局、ゴミを拾いたくて拾ってるとかいうことではなくて、自分たちの気持ちを、ゴミを拾うことで表現しているっていうことなんで。表現したいと思わせられるぐらいにまでなったのかなという気はしますよね。

やってるほうは気持ちいいんですよ。だっていいことしてるんだから。気持ちいいし、みんなに喜ばれるし、一石二鳥あるいは一石三鳥っていう感じじゃないですかね。それで法律まで変わっちゃうんだから。

だからみんな、そういうポジティブな気持ちをもって、時間に余裕がある人たちはなにかポジティブな活動をすれば、絶対それは世の中にポジティブな力をつくっていくと思うんで。みんながそうなったら、すごくいい世の中になりますよね。

2016-06-24-1466762036-3404533-CCCC3.jpg

CCCCメンバーと、清掃活動の参加者。撮影:日浦一郎

■人として当たり前の意識を持つこと

――活動の中で、テーマに関心がない人、考えがない人へのアプローチについてなにか工夫はされましたか。

あまりそこは意識することではないのかな、という気もしているんですよ。

たとえばマナーの問題は、はっきりいって、マナーを破っている人たちっていうのはほんの一握りの人たちで。クラブが1軒あったら、200人・300人から1000人のお客さんがいるわけじゃないですか。それが何十軒もある中で、毎晩どこかしらで揉め事が起きているかっていったら起きていないわけで。たまたま何ヶ月に1回か事件がありました、っていうのは、全ユーザーから言えば何千分・何万分・何十万分の1ぐらいの確率の話なんです。

だから、その人達を変えようっていうよりも、わかっている人たちがもうひとつ背筋を伸ばすというか、意識を変えて。

「もし家が、揉め事が起きた場所の裏にあったら、結構迷惑だよね」というような意識。普通にあるじゃないですか、僕も「昼間は家でちょっと音大きくするけど、夜は隣の人に迷惑だから小さくしよう」とか。日曜の朝8時からとなりがうるさいと「この野郎」って思うじゃないですか。そういう「確かにね」という共感を持つこと。

それは当たり前のことで、クラブもそういう風になり得るよ、と。せっかくクラブに防音設備が整っていても、クラブの外でたむろして騒いでいたら、近所の迷惑になるし。そういう当たり前の、人としての視点をもう一度みんなに投げかける。それに反応する人たちがほとんどなんで。それがまた、いい空気を作っていくんだと思うんですよね。

だから、一人ひとりの行動に対して、「お前それは違うよ」なんて否定していたらキリがないと思うし。そういうことよりも、否定ではなくて肯定というか、ポジティブなエネルギーを。と、いうことなんじゃないですかね。

――クラブカルチャーに関心ある人/ない人、という部分でのアプローチの違いはありましたか。

たとえば風営法の改正に関してだと、まずはクラブに興味が無い人は「どんな話なの?」っていうところからスタートして、説明をすると「え、なんでいけないの?」ってみんななるわけですよ。そこは単純明快だったんであまり難しくはなかったんですけれど。

クラブやクラブカルチャーを知らない人の中には、外側から見たときのイメージの悪さだけを意識している人たちっていうのが、いっぱいいたと思うんで。

なんかね、インターネットで、漫画みたいな面白いのが出回ってて。クラブに行ったことがない人が「クラブっていうのはこんなトコだと思う」っていうのを漫画で描いているのがあるんですけど。もう凄いんですよ、酒池肉林というか、クラブを知っている側からすると「なんだそりゃ」みたいな。ただもう、それだけ妄想が広がっている、そういうイメージで思われちゃっているんだなっていうのは、正していかなければならないところだな、と。

クラブって、側面が2つあると思うんです。1つは「大音量で音楽を楽しむ場所、踊る場所」。もう1つは「社交場」。

後者に関して言えば、知り合い同士が交流したり、新しく知り合ったり。われわれの仕事なんかほぼそこでできてると思うんですけれども。その中にはたとえば、軽い話で言ったらナンパとかもあるかもしれないし、そこから恋愛に発展して。僕も自分の奥さんには、クラブで出会いましたし。そういう側面もあると思うんですね。

そんな風に、クラブの持ってる可能性っていうのはもっともっと大きいんで、その辺はみんなに話せば話すほど理解してもらえるもんだな、という気はします。

2016-06-24-1466761592-8155084-CCCC1.jpg

CCCCが主催したクラブイベント。撮影:日浦一郎

■「ちゃんとやったら、聞いてくれる」

――「政治」に対する捉え方は変わりましたか?

いや、「大体こんなことなんだろうな」と思っていたとおりだったですね。別に特別びっくりしたということもないですし。

一つあるとすれば、「ちゃんとやったら聞いてくれる」っていうところ。そこは本当に、違ったかな。

活動を始めるときに「法律なんて変わるわけないじゃん」ってほとんどの人が言ってたと思うんです。でもそれが「いやだけど、こんなわけのわかんない法律なんだから、変えようと思ったら変えられるはずなんだよね」ってわれわれがとにかく思い込んで、とにかくそれを疑わずにやってきたってことで実際変わって。で、「あ、変わったわ」みたいな。

そういう意味ではすごく希望が持てた。社会