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「はじめての選挙」は大人への第一歩。 親子×親子の3世代で家族会議してみた

「18歳選挙権どう思う?」とある家族の会話から、各世代がもつ選挙への思いが見えてきた。
The Huffington Post

18歳選挙権時代の幕開け——。選挙権年齢をこれまでの「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が施行された。18〜19歳に該当する約240万人が新たに投票できるようになる。これにより、親子だけではなく“孫世代”も含む3世代で投票権をもつ家庭が増えたかもしれない。

ハフポスト日本版では、今年、投票に行くことができるようになった松山恭助さん(19歳)とその両親、そして祖母が暮らす松山一家にお邪魔して、家族会議の様子を取材した。

議題は「18歳選挙権についてどう思う?」。家族の会話の中から、それぞれの世代がもつ選挙に対する思いが見えてきた。

自分たちが選挙権を持ったことを知らない人もいる

父親:18歳選挙権が話題になっているけど、恭助は実際にどうなの?

息子:急に選挙権って言われても自覚ないな。それだったら18歳から認めるっていうのを全部合わせたほうがよくない?

祖母:どういうこと?

息子:飲酒とか、他のものも許されるなら、もう少し認知も広まるかもしれない。

母親:恭助は選挙にどんなイメージを持っている?

息子:投票日が近くなるとさ、学校行く途中で「◯◯党の誰々です」って政治家が一生懸命にしゃべってるっていうイメージ。中学の時かな? たまたま頭をこうやって掻いただけで、「手を振っての応援、ありがとうございます!」って言われたんだよ(笑)。手振ってないのに。すごい必死だなって。

母親:そういうことがあったわね(笑)。最近の子は新聞もあんまり読まないよね。インターネットで上位に入っているニュースしか知らないでしょ。それで世の中のこと判断できるのかしら。

息子:毎日スマホばっか見てるから、たしかに情報量は多いんだけど、その中でわざわざ興味のない「政治」に行くかって言ったら難しいと思う。だいたい俺らの世代で“自分たちが選挙権を持った”って知らない人だっているよ。

18歳はまだまだ子ども?

父親:政策とか、もう少し噛み砕いた形で伝えていかないと。若者には伝わらないでしょ。

息子:そうだね。難しい言葉で説明されても、それだけ見てもう諦めちゃう。

父親:今の18歳じゃちょっと早いんじゃないかな。子どもなんだから。急に選挙権とか言わずに、中学校くらいから義務教育の中でちゃんと教えていかないと。

母親:どこかの高校が、授業で選挙を教えているのをテレビで見たよ。先生が候補者になって、生徒たちに投票させるっていう「模擬選挙」。その高校では投票率が25%で、当選者が決まったんだけど、あとの75%の人が投票していたら、結果はもっと違っていたのかもしれない。結局、選挙に興味のある25%しか投票しないから、やっぱり投票率が低いってことは、そういう怖いことにつながるんだっていう。最近の高校では授業でもやっているみたい。

父親:政治の中身を考えるっていうのは、その次の段階なのかもな。まずは危機感を持たなきゃいけないっていう話だね。

早めに選挙権を持つと「自覚」が芽生える

父親:でも物事の判断がつかない10代が選挙にってのは、なかなかね。

祖母:私は18歳で選挙権を持てるってのは、いいことだと思う。今の小学生、中学生って若くてもすごい子たちがいるでしょ。まだ若いけど、世の中に関心を持って、将来のことも考えるようになるし、少し早めに自覚を持っていくためにはいいじゃない。恭ちゃんもしっかりするし。

息子:まぁ、そうだよ。俺らに関わってくる問題。これからお年寄りが増えて、俺らの世代が支えなきゃならないんだから。

父親:そういう意味では、将来のこと、自分たちで決めろって、突きつけられているのかもしれないな。

昔は「国民の義務」という意識が強かった

息子:そういうけど、みんな若い頃、ちゃんと選挙行ってたの?

両親・祖母:もちろん行ってた。

父親:僕らの世代の感覚でいくと、やっぱり義務感があったから。

母親:私は親に「行きなさい」って言われて嫌々投票に行っていたから。自分のことを考えると強く言えないな。お母さんが18歳の頃って、世の中はもっと真面目でしたか。

祖母:そうね、真面目。ラジオとかで情報を聞いて。戦後の日本は、みんながもっと国をよくしようという気持ちがあったのよ。

母親:今は、国をよくしようと思う人って少ないものね。私たちの世代はバブルだったから。こういう世の中がずっと続くと思っていたのね。

父親:政治は同じ政権のままだし、経済もそのまま右肩上がりでいくって。そういうもんだと思ってたところはあるね。まさか政権変わると思わなかったし。今は一貫したものが見えてこないから、よくわからなくなっている。

母親:東京オリンピックがあるから、もう一度景気も上向くかという時に、震災が起きたりして。そういう場合じゃないっていう雰囲気になっちゃってるのかな。

日本の選挙にもイベント性が必要

父親:最近だとアメリカの事情のほうが注目されているよね。トランプとか、なんとなく動向気になるでしょ。

息子:Twitterとかで見かけることも多いし、若い人たちはそっちのほうが関心持っている人が多いね。

父親:日本も、もうちょっと無関心な人たちを引き付けるようなイベント性があるといいよね。投票所で風船配るくらいじゃなかなかね。

祖母:私たち戦後の時代には、こんなに選挙で騒いだりすることは全然なかったから、あんまり覚えていないの。みんな生活で精一杯。そういう時代でしたから。統制というのがあって、買えるものと買えないものがあって、戦後はずっとそういう生活をしていましたから。

母親:それでも、政治家がよくしてくれるって気持ちを持っていたでしょ。田中角栄さんとかいた頃。

祖母:まあね。

父親:全然わかんないだろ、田中角栄。

息子:名前聞いたことある。

父親:昔は日本にも、カリスマ性のある政治家がいたってことだな。

政治が「自分事」になれば実感が湧く

母親:はじめは政治に関心なくても、子育てするようになってからは、徐々に自分事に感じるようになってきた。

祖母:20代の頃なんかは、選挙のことより自分の生活のことで精一杯。23歳で結婚して、そのあとは子育てで精一杯だし。

父親:どっちにしてもさ、20代くらいのときはまだ、他人事。自分たちでなんとかするという意識ってそんなになかったかもしれない。だけど、だんだん政治が、体で実感できる年代がやってくる。学生の頃は、政治、世の中の仕組み、税金って、体で感じることが少ないけど、働き出したらある程度実感できる。政治にも多少なりとも興味を持つし、政党のこともわかってくるし。

祖母:昔は今みたいに、テレビも普及していなかったものね。それでも今は情報があるだけ恵まれているんじゃないかしら。

母親:私は、政治家の不正とかをテレビで繰り返し報道するの、ほんとやめてほしいと思う。もっと真剣に取り組んでいる人たちもいっぱいいるんだから。そういうの教えてくれればいいのに。

息子:俺は実家暮らしだから、新聞もナナメ読みだけどちゃんと見るし、テレビでニュースが流れていると自然と耳に入ってくる。だから恵まれていると思う。

選挙は、大人への第一歩。行かないと始まらない

父親:それで、恭助は今年から投票できることになったわけだけど、結局投票には行くの?

息子:いろいろ考えたけど行くと思う。大学生になって、これから大人になるために、いろいろ段階を踏まないとって考えるようになった。

母親:あら、知らない間に大人になってる……!うれしいな。そういえばお兄ちゃんも初めて選挙に行ったとき「ちょっと大人になった」とか言ってたもんね。

息子:自分はスポーツばっかりやってるから、「アイツ知的だな」って思われたい。

母親:コンプレックスね(笑)

息子:スポーツもできるし、知的だって。かっこいいって思われたい。くだらない理由(笑)。不純かもしれないけど、行くだけいいでしょ。

母親:そうね。投票って、社会の一員だっていうことを感じる儀式みたいなもので、はじめてそれを感じるものだと思う。今まで味わったことないと思うから、これを機に味わってみて欲しい。

父親:選挙の演説で言ってることって、聞くだけではよく分からないこともあるからね。とにかく参加してみれば、少しは実感できるようになるかもしれない。とりあえず行動を起こしてみるって気持ちは大事だね。それが第一歩。

息子:自分たちを取り巻く環境作りも大事だよね。土壌を作ってからその先をどうやっていくか。そうすれば関心も出てくると思う。友達同士でも「アイツが行くなら、俺も行かなくちゃ」って気持ちになる。結局、まずは自分が行ってみないと、何も始まらないのは確かだから。

父親:だいぶ意識が高まってきたみたいだから、友達5人くらいには言いなよ(笑)。

松山家では、今年投票デビューする恭助さんが抱く、前向きな気持ちが語られたところで家族会議は終了した。

世代の異なる家族同士だからこそ飛び出したリアルな声。家族の会話の中から、それぞれの世代がもつ選挙に対する率直な思いが見えてきた。7月10日の投開票に向けて、そしてその先の未来に向けて、家族同士で政治について話し合うきっかけになったかもしれない。1945年以降、はじめてとなる選挙権年齢の変更を迎える今年の参院選。各世代の投票率に注目が集まる。

(監修:NPO法人YouthCreate代表・原田謙介/撮影:西田香織)

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