米軍、トランスジェンダーの入隊禁止規則を撤廃

国防総省はこの方針転換のために、何年も準備をしてきた。
ARLINGTON, VA - JUNE 30: Secretary of Defense Ash Carter speaks during a press conference on June 30, 2016 at the Pentagon in Arlington, Virginia. Carter announced an expanded policy of acceptance regarding transgender U.S. military service members. (Photo by Allison Shelley/Getty Images)
ARLINGTON, VA - JUNE 30: Secretary of Defense Ash Carter speaks during a press conference on June 30, 2016 at the Pentagon in Arlington, Virginia. Carter announced an expanded policy of acceptance regarding transgender U.S. military service members. (Photo by Allison Shelley/Getty Images)
Allison Shelley via Getty Images

アメリカ国防総省は6月30日、トランジェンダー(心と体の性の不一致)の人々の米軍入隊規則を撤廃することを発表した。アシュトン・カーター国防長官は、即時発効する形で廃止されると述べた。

この新しい方針によって、トランスジェンダーの軍人がジェンダー・アイデンティティ(性自認)を理由に、意に反して軍から解雇されたり、再入隊を拒否されたりすることがなくなる。現在、ジェンダー・アイデンティティを隠して軍人として勤務しているトランスジェンダーの人々は、自分のジェンダー・アイデンティティを明らかにして勤務することができるようになる。

「これはトランスジェンダーの人々にとっても、軍にとっても正しい判断だ」と、カーター国防長官は記者会見で述べた。「才能あるアメリカの人々の話をしている。彼らは優れた功績を残したい、貢献できる機会を持ちたいと思って軍で働いている。人々の能力とは無関係の障壁を作ることは許されない。任務を果たすのに最適な人間を採用し、雇い続けることができなくなるからだ」

バラク・オバマ大統領は2011年、本人が自身のセクシュアリティを公言しないかぎり軍の勤務を容認する政策「聞くな、言うな(Don't ask, Don't tell)」規定を撤回した。今回の歴史的な撤廃を、多くの人々はこの方針転換の最終ステップと受け止めている。今回の撤廃措置は来年中に段階的に導入されていく。軍人が軍に勤務している間にジェンダーを転換する手順を設定できるよう、軍は作業を進めている。また、この新しい方針によって、医療基準を課すほか、司令官が今後はガイダンスやトレーニング、さらには具体的な施策を取りまとめる責任を負う。

アメリカのシンクタンク「ランド研究所」によると、現在米軍には2500〜7000人ほどのトランスジェンダーの人々が勤務しているとみられる。また、トランスジェンダーの予備役軍人は1500〜4000人いると想定されている (2014年のウィリアムズ・レポートは、合計数を1万5500人とした)。100万人以上が軍隊に従事していることを考えるとこの数字は小さく見えるが、カーター国防長官は、軍全員に運用されると述べた。

米軍で働くトランスジェンダーの軍人、SPARTAのスー・フルトン氏 (左) と国防長官のアシュトン・カーター氏(右から2人目)とポーズを取っている。カーター氏は30日、トランスジェンダー禁止の規則を撤廃することは「世界史上最も優れた軍事力」をさらに強化するだと語った

国防総省はこの方針転換のために、何年も準備をしてきた。陸軍は2015年3月にトランスジェンダーの人々が入隊できるための検討を始めた。他の機関も方針を緩めてきた。

退役した陸軍歩兵隊大佐のシェリ・スウォコウスキさんは、この日を待ち望んでいた1人だ。彼女はトランスジェンダーの退役米軍人の中で最も地位が高い。2015年に国防総省がゲイプライド月間のイベントを開いた際に、彼女は女性として登場することで公にメッセージを発した。そのイベントで彼女は新しい制服ドレスを着ており、男性の時に来ていた制服に付いていた歩兵隊の階級章と編み紐をつけていた。

その時に発言することはなかったが、彼女は部屋にいた軍の指導者に、トランスジェンダーの軍人が実際に存在し、ジェンダーアイデンティティを明らかにして勤務できるようにすべきというメッセージを伝えた。

「私は、国や愛する人々に奉仕するために自分に正直でいることができない人々にとって目に見えるシンボルとなりたいのです。嘘はつきません」とスウォコウスキさんはハフポストUS版に自身の思いを語っている。「彼らはとても勇気がある人たちです。彼らは出来る限りのことをやろうとしていて、遅かれ早かれ、国防総省が動き出して、トランスジェンダーの人々を受け入れるようになるだろうと、願っているのだと思います」

30日の発表の後、スウォコウスキさんはMSNBCの取材に、実施プロセスが特に複雑になることはないと思っていると話した。

「軍は私たちに『変化を予測せよ』と教えます。変化があった際にはそれを受け入れ、全力を傾け、任務を遂行するのです」と彼女は語った。「『聞くな、言うな』規定が撤回された時にも大したことは起きませんでした。私はその時と変わらないだろうと思っています」

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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