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「ずっと家に閉じこもっていた」写真家・ヨシダナギが、裸でアフリカをゆく理由

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スリ族 Nagi Yoshida


ヒンバ族とヨシダナギ Nagi Yoshida

世界でもっともファッショナブルな民族「スリ族」の日本初の写真集『SURI COLLECTION』を発売して一躍有名になったフォトグラファー、ヨシダナギ。自らも服を脱ぎ捨て、全裸になってアフリカ少数民族のなかへ飛び込んでいくその撮影スタイルも注目を集めた。

アフリカでの体験を綴った新刊『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』も発売され、展覧会やトークショーも随時開催している。ヨシダナギとはいったいどんな人物なのか? 10代は「ずっと家に閉じこもっていた」と語るヨシダさんに、アフリカに行く前と後、それぞれの時代について話を聞いた。


Nagi Yoshida

■インターネットと出会い、グラビアアイドルに

——23歳でアフリカに行く前の、10代の頃のヨシダさんについて教えてください。

小さい頃は好奇心旺盛なタイプだったんですが、10歳で両親が千葉に家を買って引っ越してから陰湿ないじめに遭って、それが中学まで続いたのですごく暗い性格になっていきました。

nagi


もともと勉強も集団行動も人とのコミュニケーションも苦手で、それでも頑張って登校していたのに、学校に行けば悪口ばっかり言われるし、先生がかばってくれたらくれたで妬まれるだけなので、「あ、もう学校に行くの止めよう」と思って中2で不登校になりました。ちょうどその頃に両親が離婚して、私を無理矢理学校に行かせようとしていた母が家を出て行ったので、ずっと家に閉じこもっていましたね。

——家では何をして過ごしていたのでしょうか?

父がパソコンを買ってくれてインターネットにつないでくれたので、掲示板に書き込みをしていたら出版社の方とメールのやりとりをするようになったんです。その方が私のホームページを作ってくれたので、創作した物語を書きはじめてプロフィール用の写真を送ったらトップページに大きく載せてくれたんですね。

その写真がネットアイドルランキングの1位、2位になって芸能事務所から声がかかって、アイドル大好きな父が「お前は勉強できないし、興味があるならやってみれば」というのでグラビアアイドルとして活動をはじめました。あのときもし厳しい母がいたら絶対許さなかったから、両親が離婚したことは結果的には自分にとってよかったのかなと思っています。

■人生を変えた、ひとり暮らし

——アフリカのマサイ族をはじめてテレビで見て憧れたのは幼稚園の頃だったそうですが、そのことはずっと覚えていましたか?

ふとしたときに思い出してはいました。でも英語もしゃべれないし、すぐ行ける距離でもないし、お金もかかるし、非現実的だなと思ってましたね。


マサイ族 Nagi Yoshida

——それを現実的なこととして意識するようになったきっかけは?

ひとり暮らしです。両親の離婚後、「この家を出ないとしんどいな」と思ってお金を貯めて21歳のときに勝手に引っ越しました。でも料理も掃除も洗濯もできないしすぐにホームシックになるだろうと思っていたら、すべてが楽しくなっちゃって。

性格も180度変わって、ささいなことでも面白く感じるようになりました。それまでは口を開けば「死にたい」と言って自傷行為をしたり、ベランダから飛び降りようとして父に止められたこともあった。両親も私は20歳まで生きられなくて自殺するんじゃないかと思っていたそうです。

nagi


それがひとり暮らしをはじめてから自分を追い詰めなくなったんですね。ただグラビアアイドルは向いてなかったので辞めて、イラストを描いたり写真を撮ったりするようになりました。母からフィリピンに留学する子どもたちのサポートをするから手伝ってと誘われて、一緒にフィリピンに行ったのもその頃です。

■「世界観が変わるような体験」は、どこに行ってもなかった

——フィリピンが海外初体験だったんですね。

フィリピンで撮った子どもたちの写真をブログに載せたら褒められて、「私、写真うまいのかもしれない」と思ってカメラ片手に東南アジアをまわりはじめました。

でも、アジアを旅行した人がよく言う「世界観が変わるような体験」というほどの驚きは、どこに行ってもなかったんですね。インドのガンジス川も、死体とか浮かんでいるのかと思ったら全然違って想定内の汚さでした。そのうち「私が驚くような体験ができるのはアフリカしかないのかも」と思ってお金を貯めて23歳でアフリカに行ったんです。


エチオピアのスリ族

——世界観が変わるほどの体験をしたいと思ったのはなぜですか。

小学校の頃から感情の起伏が少なくて、周りの女の子たちのようにキャーキャー言ってみたかったんです。声をあげて笑ったり泣いたり、思いっきり感情表現をしてみたかった。そのきっかけを探してアフリカに行き着きました。

■最初のアフリカ、おせっかいなガイドに出会う

——最初行ったエチオピアとエジプトで、期待していた驚きはありましたか?

最初はイメージしていた通りのアフリカで驚きはなかったですね。しかもトラブルの連続で普通だったらそこでやめたと思うけど、最初のガイドのベイユーという男性がおせっかいな幼馴染みのようにいい人だったんです。そのとき私は英語もろくに話せなかったのに、なぜかすごく波長が合う人だった。日本人でもそんな人にはめったに会わないので、この人と一緒ならもっとアフリカ古来の生活をしている民族に会いに行けるかもしれないと思いました。

——それを機に、マリ、ジブチ、スーダン、ナミビアなどさまざまな国を訪れています。人づきあいが苦手なヨシダさんが言葉も通じない民族のなかに飛び込んでいく、そのギャップが面白いです。

アフリカの人ってびっくりするほどオープンなんですよ。勝手に人の家に入ってくるし、勝手に人の家の物を食べるし。助け合いが当たり前なので困ったときはお金の貸し借りもする。良くも悪くも人のことを放っておけない愛情深い人たちなんですね。

私が黙っていると「なんでそんなにつまらなそうにしてるの? 毎日楽しく過ごしたほうがハッピーじゃん!」って。すごく当たり前のことなんですけど、思ったまま感じたままをむき出しにする彼らのパワーにどんどん引き込まれていきました。

》後編:「駆け引きがないから、ぶつかっていける」写真家・ヨシダナギ、アフリカで全裸になった瞬間を語る

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ヨシダナギ、アフリカ写真
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KANZAN GALLERY 特別展示 ヨシダ ナギ ‟HEROES”
開催日:2016年8月6日~8月28日 11:00-20:00 ※月曜休館日
開催場所:Kanzan gallery 東京都千代田区東神田1-3-4 KTビル2F

■トーク&サイン会 「ヨシダ、文禄堂にゆく」
開催日:2016年8月7日(日)14:00-15:30
開催場所:文禄堂書店(高円寺店) 東京都杉並区高円寺北 2-6-1高円寺千歳ビル1F
参加条件などはこちら

(取材・文 樺山美夏