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マレーシアの写真家「福島の立入禁止区域を撮影」→地域の外国人たちが激怒「コスプレで風評流すのやめて」

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マレーシアの写真家キュー・ウィー・ロン氏(27)が7月10日、福島第1原発事故の避難指示解除準備区域などを撮影した画像をFacebookに投稿し、議論を呼んでいる。ロン氏は撮影場所を「福島の立ち入り禁止区域」などと紹介。CNNガーディアンなども取り上げ、19日午前10時現在で、投稿は7万回以上シェアされている。

cnn
CNN「Photographer sneaks into Fukushima 'Red Zone'」より

しかし、ロン氏の行為について、福島県内に住む外国人たちから非難の声が出ている。その内容をおおまかにまとめると、
  • 民家や商店に無断で侵入し、撮影している
  • 立入禁止区域で撮影したと書いているが、写真の多くが立ち入り禁止区域で撮られたものではない
  • 実際は人がいるのに、人がいないように誇張して撮影している
  • ガスマスクをつけているのに短パンにサンダル履きで撮影するなど、格好がおかしい

の4点だ。

なぜロン氏はこのような写真を撮影したのか、なぜ福島に住む外国人は怒っているのか、双方に話を聞いた。

ロン氏はどんな写真を撮影した?

まず、ロン氏がどのような写真を撮影したか、整理しておこう。

ロン氏は6月、同僚の日本人らと福島県の浪江町・大熊町・双葉町などで撮影。ロン氏は商品が散乱したままになっているスーパーマーケットビデオレンタル店、洗濯物が散らばるコインランドリーの内部、人が住んでいたと思われる民家の部屋など27枚の画像を7月10日に発表。しかしその写真の全てに人影がなく、ただガスマスクにサンダル、短パン姿のロン氏、そして、白いマスクに長ズボン姿のロン氏の同僚の2人だけが写っていた。

ロン氏はFacebookに「撮影のためには許可が必要で、3〜4週間かかると言われた。あまりにも官僚主義だ。そこで、警察官を避けながら、こっそり森の中を抜けた」などと紹介し、撮影の困難さを強調。無許可で撮影を行ったことを記した。

さらに、ロン氏は帰還困難区域などを「レッドゾーン」と表現。「レッドゾーンに入ると、強烈に目が染みて、薬品の匂いがした」「完全なゴーストタウンであった」「車はないのに信号機は動いていた」「誰もいないスーパーでお菓子を食べるのが、子供の頃からの夢だった」などと、写真を説明した。

ロン氏はなぜ短パンだったのか?

ロン氏はハフポスト日本版に対し、今回の撮影の目的は福島第一原発の影響を撮ることだったと述べた。

民家や商店にも「押し入ったわけではない」と反論。「すでに、ドアが開いていたのです。閉まっていたら、入りません」と話した。

撮影した場所で人や車を見かけなかったのかと聞くと、「国道6号線沿いでは見かけた」と答えたが、「しかし、私はそこを避けました」と説明し、それ以上については語らなかった。

ガスマスクに短パン、サンダル姿での撮影だったことについては、「お金がなくて、防護服が買えなかったから」と弁解した。 このガスマスクはインドネシアの火山でスノーボードをした時に身につけていたものと同じものだという。

「東京に来て、30万円を紛失しました。 お金がなくて、防護服も買えませんでしたし、滞在時間も限られてしまった。許可を待つこともできなかったのです。

また、普段、私はロングパンツをはきません。東京に持ってきたのは、短パンとジャケットだけです。お金がなくて新しいズボンを買うこともできませんでした。ガスマスクは軍事用で、手袋とともにいつも持ち歩いています。

撮影許可の情報や、防護服について、日本のグリーンピースに助けを求めましたが、助けてはくれませんでした。全く、協力的でなかった。それで、フリーランスの写真家として、私にできる精一杯のことをやったのです」

ガスマスクをつけた理由については、「レッドゾーンに入った時、目が痛かったのです。それに、肺に直接、空気を吸わないほうがいいと思いました」と答えた。同僚らの格好については、回答がなかった。

ロン氏は旅行情報サイト「Zafigo」のインタビューに、「福島の人を傷つけたとすれば申し訳ありませんでした」と謝罪したが、「写真が売れなければ、写真家は生き残れない。私がやったことは妨害ではありません。私はただ写真家としての仕事をしただけなのです――写真を撮り、旅の記録をまとめ、そして、世界中にシェアしただけ」などと述べた。「私はただ、多くの人ができないことをやっただけです。もし、多くの人が日本に来て福島を訪問できるなら、私は必要ないのです」と、ロン氏は訴えた。

「世界中の人々が見たいものを、私は撮影します」と、ロン氏はハフポスト日本版に話した。「これらの写真は、福島を代表する写真でしょうか、それとも、福島を誤解させる写真でしょうか。そうではないでしょう」

福島に住む外国人がロン氏を非難

ロン氏の写真が拡散しはじめると、福島に住む外国人たちが非難を始めた。ニュージーランド出身でいわき市在住の英語教師、ザン・ウェザオール氏(30)は12日、福島の英語教師でつくるFacebookグループに、「無断で商店や民家に押し入るなどして撮影された画像が出回っています。彼の行為は違法であるばかりではなく、家を残して避難せざるを得なかった被災者に失礼です」などと投稿。これに福島に住む外国人らが共感し、「なぜこのように一部だけが切り取られるのか」「住民の話を聞いてほしかったなど、19日午前10時現在で、70件以上のコメントが投稿された。なかには、「売名行為で写真を撮らないで」などと、ロン氏へ英語の公開書簡を送る人もあらわれた。

ウェザオール氏はハフポスト日本版の電話取材に対し、「いわき市には、福島第一原発の事故で避難してきた人がたくさんいます。ロン氏が撮影したのは、知り合いの家かもしれない。無断で上がり込んで撮影されたのかと思うと悲しい」と話した。「福島にはもちろん課題があるが、人々は乗り越えようと懸命なんです。それを、持ち主に許可なく上がり込み、どのような事情があるのかを聞かずに誇張した写真だけを投稿するのは、フェアではないと思います」。

ウェザオール氏は、ロン氏の行為が福島に住む外国人にとって、悪影響になるのではないかと心配する。「日本に住んでいれば、例え鍵が開いていても、他人の部屋に入ったりはしません。ロン氏の行為によって、他の外国人も同じようなことをするのではないかと日本の人は思わないでしょうか。一人の愚かな行為によって、そう思われたら悲しいです」

ロン氏の写真は「人がいないことを意図的に誇張している」

william mcmichael
ウィリアム・マクマイケル氏(2015年2月26日撮影)

福島大経済経営学類のウィリアム・マクマイケル助教(33)はハフポスト日本版に、「一部分のみを意図的に切り取った写真が拡散することで、誤った福島のイメージが独り歩きする」と懸念を述べた。あたかも廃墟になってしまったような福島のイメージが強調されているという。

「“レッドゾーン”、”ゴーストタウン”、“立ち入り禁止”、”5年間放置されたまま”…など、ロン氏の投稿にはセンセーショナルな言葉が多く使われています。まるで、福島は人が住めない場所になってしまったと言わんばかりですが、実際には写真が撮られた場所も復興が進められており、人が働いています。

英語での“レッドゾーン”という言葉は、『一切の立ち入り禁止』『非常事態』を連想させる表現なのですが、ロン氏の写真は、避難指示解除準備区域などの立ち入り制限がされていない区域や、地図上は帰宅困難区域であっても誰でもいつでも通行できる道路などで撮影されたものが多く含まれています。これらは”レッドゾーン”とはいえない場所ですが、ロン氏は明確に区別して表示しているわけではありません。言葉を巧みに使って、また、自分や仲間以外の人物は写さず、意図的に誰もいないゴーストタウンのように仕立てていると考えられます。

fukushima map
キュー・ウィー・ロン氏が撮影したと思われる場所が7月19日正午時点で27枚の写真中23枚判明(4枚は不明)。それらを避難区域観念図に重ねると…(経産省地図を元にハフポスト日本版作成。同じ場所で撮影されたものは1つの印とした)

ロン氏の27枚の写真の大半は浪江町で撮影されたものです。浪江駅付近で撮影されたと思われる場所に私も行って、実際に写真を撮ってみました。これらは避難指示解除準備区域であり、特に立入に許可が必要な場所でもなく、すぐに誰でも行くことができます。

例えば、ロン氏の写真のように、壁が崩れた商店の前で撮影した画像がこちらです。


2016年7月15日、浪江町駅付近の商店前で撮影(ウィリアム・マクマイケル氏提供)

これを、ちょっと引いた場所から撮影すると工事用の三角コーンが置かれているのがわかります。


2016年7月15日、浪江町駅付近の商店前で撮影(ウィリアム・マクマイケル氏提供)

ロン氏のいう『5年間誰も立ち入りできず、放置されたまま』の状態ではなく、人の手が加わっているということがわかります。これだけで印象が違いますよね。

また、駅の構内を撮影したロン氏の写真もありますが、駅前では解体工事が行われているなど、人が働いている現場がすぐ近くにありました。決して誰もいない場所でもなければ、レッドゾーンでもないのです。


2016年7月15日、浪江町駅前で撮影(ウィリアム・マクマイケル氏提供)

政府が『避難指示区域の概念図』でピンク色で示している福島第一原発入り口の交差点は、誰でも通行を認められている国道6号線の通りで、車の往来も多い場所です。ロン氏は『原発から100メートル』と書いていますが、実際には2キロ離れており、間違っています」


福島第1原発近くを通る車両(2015年2月26日撮影。時事通信社)

ロン氏は「コスプレで恐怖を煽っている」

さらに、ウェザオール氏やマクマイケル氏は、ロン氏の撮影姿についても指摘する。ウェザオール氏は「放射線は気体ではないので、ガスマスクをつけるというのも、知識として間違っています」と述べ、マクマイケル氏も「ガスマスクなど必要ない」として、次のように語った。

「例えば浪江駅構内の放射線量は、15日現在で0.5マイクロシーベルト以下でした。これは、もちろんガスマスクなど必要のない値です。怖いのなら、なぜ短パンに、サンダル履きなのでしょう。彼のいつものトレードマークなのでしょうか。はっきり言って、コスプレですよね。地域の人々のことも考えずに、ガスマスクで、恐怖をあおっています。風評被害につながるのでやめてほしいです」。


2016年7月15日、浪江町駅で撮影(ウィリアム・マクマイケル氏提供)

マクマイケル氏「ロン氏を罰したいわけではない」

マクマイケル氏は、「今回は特に、英語を中心に世界中に広まりました。日本語ならすぐに反論する人は多いかもしれませんが、現在は外国語ですぐに対応できていないのが、課題です」と分析した。

一方で、ロン氏に対し、「そこに住む人たちだって情報を隠すつもりなどないので、ぜひ彼らから話を聞いてほしかった」と呼びかけた。「福島のことを外国に向けて発信していただくことは、ありがたいことです。ですが、意図的に誇張した事実と違う内容を発信するのは許せません。福島の人々は、誤った情報が広がることで苦労し続けてきたのです。かといって、ロン氏を罰したいというわけでもないのです。彼がまた福島に来たら、ぜひ彼を案内し、本当の福島を撮影してもらいたいです」


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