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「なぜ東京都はデタラメ見逃した」認可外保育所で6カ月の娘亡くした夫妻の願い【都知事選】

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死亡当時に心菜ちゃんが着ていた服装 | 両親提供
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「元気だった娘がたった5時間後、病院でチューブに繋がれていて...」

東京都大田区に住む吉田さん夫妻(仮名)は、2016年3月、生後6カ月になる長女の心菜(ここな)ちゃんを、預けていた認可外保育園で亡くした。元々横浜市に住んでいたが、近隣で入れる保育園が見つからず、ようやく見つけた受け入れ可能な園で発生した事故だった。ハフポスト日本版の取材に、妻の愛さん(仮名)は、「何もかもあり得ないことばかり。早く安全な保育園にみんなが通えるようにしてほしい」と訴えた。

31日に投開票される都知事選では、有力3候補者が揃って深刻な待機児童問題の解消を訴えている。しかし、この夫妻が願うのは、単に数を増やすだけでなく、安全に預けられる保育所を作って欲しいということだった。

■認可保育所には入れなかった

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亡くなる3日前、元気だった心菜ちゃん

心菜ちゃんが通っていたのは、認可外保育所「蒲田子供の家」。妻の愛さん(仮名)は、心菜ちゃんが生まれる前、パートタイムで仕事をしていた。産後に仕事復帰しようと、当時住んでいた横浜市で保育園を探したが、認可保育園はもとより、認可外保育園でも入れるところが見つからなかった。

保育所の入所選考は、それぞれの家庭の就業形態などによって優先度合いの評点がつけられ、点数(指数)が高い順に入園確率が高まる。吉田さんの場合、「夫婦共にフルタイムの仕事」など、優先度が高くなる条件に当てはまらなかったため、横浜市内では入園できるところがなかった。

そこで、仕方なく探す範囲を都内に広げ、ようやくインターネットで見つけたのが、大田区の「蒲田子供の家」だった。園庭はなく、マンションの1室にある園だったが、夫妻は生後3カ月になった心菜ちゃんを、この園に2015年12月から預けることができた。「その時は、やっと見つかってありがたかった。『やったー』と思っていました。まさかこんなことになるとは...」と愛さんは振り返る。

しかし、この園は認可外保育園。保育料は、認可保育園の倍以上となり、月約6万円ほどかかった。昼のパートの仕事で稼げるのは15万円程度で、預けることでの家計への負担が大きくなることが懸念された。一方で、園は24時間運営されていた。この特徴を有効活用し、「子供のためにお金も貯めたい」と、給与が比較的高い夜勤の仕事を見つけ、不本意ではあったが心菜ちゃんを夜遅くまで預けることにした。入園当初は横浜市から通っていたが、家族は保育園の近く、大田区内へと転居した。

この園は30年以上の運営実績があり、園長も「ベテラン保育士」に見えた。「初めての子育てで何もわからず、園長のいうことを信用していました」と愛さん。しかし、この園長は保育士資格を持っていなかったことが事故後に発覚する。

■保育士資格者がいなかった

事故があったのは、3月16日の午後11時50分ごろ。翌17日の午前1時前ごろ、夫妻で園に迎えに行くと、大勢の警察官が保育園に詰め掛けていたことで、異変に気づいた。両親に連絡もなしに、心菜さんは病院に救急搬送されていた。慌てて病院に駆けつけると、心菜ちゃんは病院のベッドで小さな体を横たえ、多くのチューブが付けられていた。直後、午前2時に死亡が確認された。後で園長に尋ねると、「保護者の連絡先を紛失したため連絡できなかった」と話したという。

東京都保育支援課や両親に対して、この園長がした説明によると、園長は心菜ちゃんがぐずって泣いたため、ミルクを作るために十数分間その場を離れ、戻ったところで異変に気づいたという。「仰向けで寝かせていた」と説明しているという。

病院に搬送された時、心菜ちゃんは、朝送り届ける時に着せた厚着のダウン姿のままだった。「部屋の中は暖房が入っていたのに。まさか脱がせていないとは思わず、毎日着せて通園していました」と愛さんは話す。

東京都は6月20日にこの園に改善勧告をした。事故の原因や死因はまだわかっておらず、夫妻は警視庁の捜査の行方を見守っている。

ただ、当時園に職員は2人いたが、両者共に保育士の資格は持っていなかったことが都の調査でわかっている。さらに1人は別室で仮眠中で、園に住み込みで勤務している園長が、実質1人で0〜3歳児の5人を見ており、ミルクを作っている間は目を離していた。

■「救済措置」の認可外保育所で多い事故
   
認可外保育所とは、園庭の広さなどの設置基準に満たない点などがあり、国の認可を受けていない保育施設のこと。ただし、設置は都道府県に申請して一定の基準を満たす必要があり、民間事業者の他に、自治体が運営するものもある。都道府県の指導監督(報告徴収、立入調査など)の対象となっている。

保育料は各施設が決める。公的な補助金などが少ないため、保育料が認可保育園よりも高くなることが多い。この家族のように、認可保育所に入れなかった場合の「滑り止め」として、実質的に救済措置としての役割も果たしている。

東京都のサイトでは「運営方針が特徴的な教育プログラムを実践したいという施設もあります。(中略)認可保育所等だから良い、認可外保育施設だから悪いということではない」などと説明されている。

一方で、死亡事故の発生割合は認可外が圧倒的に多いという実態もある。4月に発表された内閣府の保育事故の調査では、2015年度の1年間に認可保育所で発生した死亡事故は2人に対し、認可外での死亡事故は9人となっている。認可保育所に通う子は約215万人、認可外保育所に通う子供は約27万人。

東京都は、2015年度の立ち入り調査で、この園では職員が1人で勤務をしている時間があることや、保育士の資格者がいない時間帯があると指摘していた。しかし、心菜ちゃんに異変が生じた時にも、結局、園には保育士の有資格者は誰もいなかった。

夫の聡さん(仮名)は「急に娘がいなくなって、光を失った。まだ立ち直れない。東京都は定期的にチェックしていたはずなのになぜ、こんなデタラメな運営を見逃したのか。二度とこういうことがないように、安全な保育所を作って、そこに皆が入れるようにして欲しい」と話している。

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