ヒラリー・クリントン氏、副大統領候補に穏健派のティム・ケイン氏を指名した理由は?

「副大統領の役割は、何よりも仲裁だ。この点でケイン氏より優れた人物は見つからない」
ANNANDALE, VA - Democratic Presumptive Nominee for President former Secretary of State Hillary Clinton, accompanied by Senator Tim Kaine (D-VA), rallies at the Ernst Community Cultural Center in Annandale, Virginia on Thursday, July 14, 2016. (Photo by Melina Mara/The Washington Post via Getty Images)
ANNANDALE, VA - Democratic Presumptive Nominee for President former Secretary of State Hillary Clinton, accompanied by Senator Tim Kaine (D-VA), rallies at the Ernst Community Cultural Center in Annandale, Virginia on Thursday, July 14, 2016. (Photo by Melina Mara/The Washington Post via Getty Images)
The Washington Post via Getty Images

アメリカ大統領選で民主党の候補指名を確実にしているヒラリー・クリントン前国務長官は7月22日、ティム・ケイン上院議員(バージニア州選出)を副大統領候補に選んだ。絞り込まれたリベラルな副大統領候補のリストから、激戦州であるバージニア州元知事の人望を利用する作戦だ。

人々のための闘いに命を賭けた人物、ティム・ケイン( @TimKaine)を副大統領候補として発表でき喜んでいます。-H

クリントン氏とケイン氏は、23日にフロリダ州の集会にともに出席する予定だ。

評価の高い穏健派のケイン上院議員を選んだことで、クリントン氏は、バーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)を支持している熱狂的なリベラル派の支持を得られていないことがそれほど影響を及ぼさないだろうと受け止められることになる。

民主党は1964年にリンドン・ジョンソン大統領が勝利して以降、大統領選ではバージニア州で敗北していた。バラク・オバマ大統領は、バージニア州を大統領選を闘う上で重要な州として位置づけ、2度とも過半数の票を獲得している。ケイン氏は、オバマ大統領の最初の民主党全国委員会議長であったが、クリントン氏を同じように支えるとみられる。

ケイン氏はクリントン氏の票獲得の手助けとなるかもしれないが、この選択により、有力な副大統領候補の1人と見られていたエリザベス・ウォーレン上院議員を支持する勢力との関係を悪化させる可能性もある。ウォーレン上院議員の支持派は、バージニア州を財政金融改革のために戦いそうにない、ビジネスを優遇する中道派の州と見ているからだ。彼らは同意を得るために、ウォーレン氏、サンダース氏、またはトーマス・ペレス労働長官を支持してきていた。

実際、リベラル派が2013年に「ブッシュ減税」(2001年、03年にブッシュ元大統領が実施した超大型減税策)を終了させようとした時、ケイン氏は、所得が40万ドルまでは、低い税率を維持する最終的な折衷案を仲介する手助けをしている。

それでも、副大統領候補としてのケイン氏は、市民権の擁護者、戦争反対論者、銃規制派、そして移民改革支持者たちにとっては心強い存在になる可能性がある。ケイン氏は、ホワイトハウスの一方的な武力の行使に抗議してきた。そして、バージニア州で初めて死刑に反対した知事でもある。ケイン氏は、同州に本部がある全米ライフル協会(NRA)と繰り返し争っている。最近では、NRAの組織票があっても自身が落選したことがないことから、NRAは「ハリボテだ」と批判した。また、上院で史上初めてスペイン語で演説し、移民改革法案の通過を求めた。

ケイン氏とクリントン氏の両氏を知る人々は、ケイン氏をクリントン氏を全面的にサポートするいい選択だと見ている。

ジョージタウン公共政策研究所を運営し、かつてケイン氏の上院議員選挙と2008年にクリントン氏の大統領選でアドバイザーを務めたモー・エリーシー氏は、「ケイン氏は、クリントン大統領実現へのとてつもない財産となる」と語った。

「副大統領の役割は、何よりも仲裁だ。この点でケイン氏より優れた人物は見つからない」と、エリーシー氏は述べた。

党内左派の中には、南部州の州知事だったケイン氏のことを名ばかりの民主党員であると不信の目で見る人間もいる。その一方でケイン氏を「骨の髄まで革新派だ」と称賛する人間もいる。

元MSNBCのコメンテーター、クリスタル・ボール氏は7月上旬、「これまで20年間見てきた中で、(ケイン氏がリベラルでないという)批判は全く当てはまらない。バージニア州出身者として保証する」と述べた。

最近、ケイン氏は民主党の重要な政策である「リプロダクティブ・ライツ」(性と生殖に関する権利)などのいくつかの問題について意見を述べている。

エリーシー氏によると、ホンジュラスで団体活動を行い、人権弁護士として働くためにハーバード大学ロースクールの学位を取得したケイン氏はバージニア州では最もリベラルな知事と呼ばれていたという。

「ケイン氏は、まさに進歩的です」と、エリーシー氏は語った。

また、全米の選挙活動で大切なこととして、ケイン氏は投票者との関係を築く手法に長けているだけでなく、有権者を失望させず、都市、郊外、地方の多様なグループの支持を得ながらライバルを攻撃することができる。

2001年の9・11同時多発テロ事件後、ケイン氏はバージニア州副知事の候補者となった。エリーシー氏は、ライバルを痛烈に攻撃しながら聴衆には好かれるケイン氏の手法を見て驚いたことを覚えている。

エリーシー氏は「聴衆が、ケイン氏の言うままになった演説をまだ覚えています」と述べた。「後になって初めて気が付いたのですが、ケイン氏はライバルを攻撃していただけだったのです」

「ケイン氏はタフにもなれるが、それを人を引き込む方法でやれるのです」と、エリーシー氏は付け加えた。

クリントン氏は、相手を攻撃しながら味方を引き入れるスキルが、トランプ氏のような相手と戦うためには必要だと、ケイン氏を評価したように思える。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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