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「進歩しない人は知事の資格はない」都知事選のポイント、青山佾・元副知事に聞く

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TOKYO ELECTION
東京都知事選挙に立候補している(写真左から)鳥越俊太郎、増田寛也、小池百合子の3氏=24日、東京都内(撮影日 2016年7月24日) | 時事通信社
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7月31日投開票の東京都知事選、首都の「顔」にふさわしい人を選ぶポイントはどこなのか。また、新知事は、国や都議会とどう向き合うべきなのか。石原慎太郎知事(当時)のもとで副知事を務めた青山佾(やすし)明治大大学院教授はハフポスト日本版とのインタビューに「選挙中に進歩する人なら、知事になってから都民の要望や意見を聞くことができる」と話した。

青山佾(あおやま・やすし) 1943年、東京都出身。67年、東京都庁に入庁。計画部長、政策報道室理事などを歴任し、99年から4年間、石原慎太郎知事のもとで副知事。2004年から明治大大学院教授。専門は自治体政策、都市政策など。著書に「10万人のホームレスに住まいを」「世界の街角から東京を考える」など多数。

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インタビューに答える元都副知事の青山佾・明治大大学院教授=東京都千代田区

■「都市計画について政策がないのは驚くべきこと」

――今回の知事選の争点と、選挙で候補者を見極めるためのポイントはなんですか。

今回の最大の争点が何かと言えば、鳥越俊太郎、増田寛也、小池百合子の各氏の主要3候補の間では「待機児童の解消」です。今、東京に国基準の「認可保育所」の定数が約23万人なのに対して、東京都が15年前に始めた都独自の制度である「認証保育所」の定数は約2万3000人あります。でも現在、8千数百人が待機している状態です。だけど、1300万人もの人口を抱える東京で、8千数百人という数ですよ。それが、どうして最大の争点になってしまっているのか。解決できないはずはないんです。他にも重要で待ったなしの課題はたくさんあるわけで、ここに都政の本質的な問題点があります。だからこそ、それぞれの候補者がどう語っているかが最大のポイントです。

あらゆる政策について言えることですが、国の基準はいろんな点で都には馴染まないんです。だから、中央政府のいいなりだと都知事は成立しません。舛添要一さんや猪瀬直樹さんが長続きしなかった理由の一つに、都政に馴染まなかったということがあるんです。「官邸と仲がいい」というようなことは、結局、全く都政が分かっていないということを意味するんです。都独自の政策を打ち出せるかどうかが重要です。ところが、石原さんの4期目途中での辞職以降の混乱の中、はっきり言って独自の「都政」が不在だったんです。

だから待機児童問題で、例えば「今までやっている国の政策と都の政策を充実させて一生懸命やっていきます」って言っても、それは政策じゃないんです。都独自の認証保育所から15年たったのだから、新たなメニューがないといけないんです。そのメニューを出さない都知事は、他の問題も解決できないということになります。最大課題に対してくらいは新しいアイデアを出してくれないと困ります。

そもそも全世界で施設保育だけの国はどこにあるか聞きたい。欧米でもアジアでも、普通はベビーシッターを利用しています。日本だって、戦後の施設保育がなかった時代はそうでした。でも今から保育園を作ると言ったら、普通、最低2年はかかります。

「認証保育園」制度ほど国の政策で失敗したものはないですよ。国と都では事情が違うから、国に追随する政策ではだめです。国はすぐ、「都は財源が豊だ」というんですがそれは違っていて、都がやるべきことをやる財源がないだけなんです。生活実感からすると、都民は地方の人の方がよほど豊かな生活をしていると思っています。ただ、経済統計からすると東京都は高い指標になりますが、都民は生活が苦しいんです。そのギャップに気がつかないようなら政治家の資格はありません。候補者がどれだけ都民の生活を実感しているのか問いたいです。

――選挙期間も残り短くなってきました。ほかに何を争点にしてほしいと考えていますか。

都市計画について論じてほしいですね。東京はロンドンやニューヨークと競争しているんです。東京は、1都3県を東京大都市圏と捉えると大きな生産機能があり、GDP(国内総生産)ではニューヨーク大都市圏より圧倒的に勝っています。なぜ東京の治安がよくかつ稼いでいるかと言えば、経済が機能しているからです。その基盤をどう進めるかという都市計画についてほとんど政策がないのは驚くべきことです。

例えば鉄道について、豊洲と押上とを結ぶ地下鉄8号線が以前から重要課題になっています。またTX(つくばエキスプレス)の秋葉原から先の東京駅や臨界副都心への延伸はどうするのか。これまで何度も答申されてきたことですが、進めることができるのか。東京東部には今でも交通過疎地域があるのです。

tokyo election
東京都知事選挙のポスター掲示場。投開票は31日=19日午前、東京都新宿区(2016年7月19日)

■「石原さん、強引だったというのは間違い」

――議会との関係についてですが、小池さんは公約として、当選したら都議会を冒頭解散すると言いました。その小池さんを始めとして、3人は議会とどう向き合うべきでしょうか。

それは当選した後の話であって、別に今の時点で心配する話じゃないです。議会と知事というのは、うまくやればいいってもんじゃなくて、都民からしたらむしろ緊張状態にあってほしいんです。誰が当選しても議会とは一定の緊張関係があるのは当然です。都政は二元代表制であり、国のような議院内閣制とは違うんですから。

意見の対立は当然出てくるでしょう。それをオープンに、議論して折り合えばいい。だから、議会との関係については誰だって同じです。

――前2代の知事が、おカネをめぐる問題で辞職しました。

確かに猪瀬・舛添都政はカネの流れの問題で混乱しました。知事はお金にクリーンな人でなければなりません。

もう一つ大事なことは、都知事の「強大な権力」なんてないということです。よく誤解されますが、それは制度に対する無知です。知事と議会は互いにチェック機能が効いています。都の予算は13兆円あって巨大ですが、知事の独断ではなく、議会の1カ月の審議の末で決定します。また、都の職員は16万数千人いますが、その多くは警察や消防、教員、上下水道であり、知事部局の職員ではありません。試験で採用され、昇進もすべて試験に通る必要があり、政治介入はできません。副知事人事にしても議会の同意が必要で、石原さんがあれほど強力でも同意されなかったこともあります。都知事には強力な権力があり、恣意的なことができ、公約をなんでも実現できるということは大間違いです。誤解されています。

知事に求められることは、剛腕さではなく、粘り強く関係者を説得して課題を解決することです。恣意的に旗を振る役ではありません。

石原さんは立候補会見で、ディーゼル車削減の公約を掲げました。3年以内に実現するということでしたが、実際には4年半かかったんです。当時、ディーゼル車を手がけるメーカーは7社もありましたが、みな国の基準で作っていました。それに対して都の基準で作らないと都内を走らせないという条例で、それができないならフィルターをつけることを求めています。そのフィルターも1台100万円します。だから、自動車メーカーの説得から始めました。7社を呼んで説得し、実現できたのは石原都政の2期目でした。

石原さんは重要な条例案については粘り強くやりました。強引だったというのは間違い。そして、知事は都民の支持がないとダメです。石原さんは世論を読む天才でした。ただ、時代は変わっているんです。都民の感覚は変わる。それについていけないのは政治家ではないです。

選挙戦が進むと、支持者から具体的な意見や案が寄せられてくると思うんです。それでだんだんと進歩し、熟度を高める候補者もいます。選挙中に進歩する人なら、知事になってから都民の要望や意見を聞くことができ、政策として高めることができるのではないと受け止められるのではないでしょうか。ここが候補者を見分けるポイントです。何ら進歩しない人は知事の資格はありません。


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2016年・東京都知事選の立候補者
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■都知事選の候補者

高橋尚吾 (たかはししょうご)   32 無新 〈元〉派遣社員
谷山雄二朗(たにやまゆうじろう)  43 無新 映像配信会社長
桜井誠  (さくらいまこと)    44 無新 〈元〉市民団体会長
鳥越俊太郎(とりごえしゅんたろう) 76 無新 ジャーナリスト〈民〉〈共〉〈社〉〈生〉〈緑グ〉〈ね〉
増田寛也 (ますだひろや)     64 無新 〈元〉総務相〈自〉〈公〉〈こ〉
マック赤坂(まっくあかさか)    67 無新 スマイル党総裁
山口敏夫 (やまぐちとしお)    75 諸新 〈元〉労相
山中雅明 (やまなかまさあき)   52 諸新 政治団体代表
後藤輝樹 (ごとうてるき)     33 無新 便利屋業
岸本雅吉 (きしもとまさよし)   63 無新 歯科医師
小池百合子(こいけゆりこ)     64 無新 〈元〉防衛相
上杉隆  (うえすぎたかし)    48 無新 ジャーナリスト
七海ひろこ(ななみひろこ)     32 諸新 幸福実現党役員
中川暢三 (なかがわちょうぞう)  60 無新 〈元〉大阪市北区長
関口安弘 (せきくちやすひろ)   64 無新 政治団体代表
立花孝志 (たちばなたかし)    48 諸新 政治団体代表
宮崎正弘 (みやざきまさひろ)   61 無新 日大教授
今尾貞夫 (いまおさだお)     76 無新 医師
望月義彦 (もちづきよしひこ)   51 無新 ソフト開発社長
武井直子 (たけいなおこ)     51 無新 〈元〉学習塾講師
内藤久遠 (ないとうひさお)    59 無新 〈元〉陸上自衛官
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届け出順、年齢は投票日現在。〈 〉内政党は推薦で、〈緑グ〉は「緑の党グリーンズジャパン」、〈ね〉は「市民の声ねりま」