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91歳、認知症の母を僕は撮り続ける。老いることは楽しいことだから

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Tony Luciani



トニー・ルチアーニは職業画家だ。木炭で絵を描く。それは、より抽象的な表現を可能にする。まるで記憶の織物のように軽やかに。

スタジオで仕事をしている間、ルチアーニが主に介護している彼の母親は、彼の後方に座っている。時々、ルチアーニは座っている彼女をスケッチする。

ある日、部屋の照明が、彼女の顔に美しく当たっているのを目にした。「私は絵筆を置き、カメラを手に取って、写真を撮りました」とルチアーニはハフポストUS版に語った。

「彼女は自然なモデルなんです。演じているのを楽しんでいる様子がわかりました。その地点から、コンセプトが決まりはじめ、写真が物語をつむぐようになりました。ちょうど母の日記のように」と語った。ふたりの共同作業によって産み出されたのは、遊び心に満ちた超現実的な一連の肖像写真だ。母親は縄跳びをする少女の影の近くでポーズをとり、あるいは、影の男とワインのボトルを分け合う。

TONY LUCIANI

「私はこういう考えかたを、押し広げようとしているのです。外見がどう見えても、内面では自分自身であり得るのです」とルチアーニは説明した。それを愚かだと感じ、フラストレーションの叫び声を上げることを意味するなら、絶対に行うべきです。このプロジェクトでは、そのことを浮かび上がらせることができたと思います。これは母の内的と外的の感情を把握することによってかたちになりました。ときに、同じ1枚の写真の中で」

ルチアーニの母親は認知症だ。彼は母親の性格を、その限られた世界にとどめることなく、病気の影響も包み込んでしまいたいと望んでいる。「母の老化と記憶消失の感覚は、このシリーズの方向性を決定する助けとなりました」と語った。

ルチアーニは、認知症と向き合っている。今の自己をよりもかつての自己を明瞭に思い出せる経験に対峙している。多くの写真によってそれは直接的なものになる。ある作品では、母親は鏡のなかに若い時分の、しわのない自分の姿を見ている。別の作品では、かつては黒かった髪の束がフレームの中に映る。

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ルチアーニが、母親の肖像写真をSNSでシェアしてすぐ、温かな思いと共感の大波を実感することになった。読者は、彼女のフラストレーションに触れただけでなく、ユーモアのセンスにも注目した。

母親はSNSの仕組みをちゃんと把握していないため、ルチアーニはシェアする前に、それぞれ写真の承諾を求める。母親が良いと確信できない作品は、自分だけのものとしてしまっておく。最終的には、多数の写真を収録してミニ冊子にする。母親はその冊子をめくって、自身の肖像写真を見て笑うのだ。

「母の認知症の進行するにつれて、冊子を手にしたときに毎回、母は心の中で『これは初めて見るものだわ』と思っています。これは確かに、ほろ苦い瞬間のシリーズです」とルチアーニは語った。そして、こう付け加えた。「遊び心に満ちたこのシリーズによって、見る人が、認知症や老化について、新たな光の下で眺められることを願っています」

「人々に思い出してほしいのです。『正常』とは相対的なものであることを」と語った。「私の母親にとって、現在の『正常』は、30年前の『正常』とずいぶん異なっています。この母親のプロジェクトが、他の人たちに、年長者を本当に見て、共感を抱くことにつながり、また、年長者を無視したり、見捨てたり、締め出したりしないことを願っています。年長者に真に耳を傾ける必要があります。その人たちが、かつての姿だけでなく、今どうなのかについて。年長者は、私たちみんなが将来辿り着く姿なのです」


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この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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