小池百合子知事は都議会の妨害・抵抗を排除できるか 宇都宮健児氏に聞く都政の課題

「東京大改革」を訴えて圧勝した小池百合子氏が直面する課題は何か。

東京都知事選で「東京大改革」を訴えて圧勝した小池百合子氏が直面する課題は何か。前回に続き、都政ウォッチを続け、2回の都知事選に立候補した宇都宮健児氏に聞いた。

――小池百合子・新知事の課題は何でしょうか。都議会自民党は対決姿勢を崩しておらず、都政運営は難航も予想されます。

小池さんが初登庁した時に述べた「都民ファースト」と言ったのは、非常に今までの弱点をついているし、都民の心をとらえたと思うんですね。一部は社民、共産、民進党の支持者もとらえていた。東京は1361万人が暮らしていて、スウェーデンの国家予算並みの予算を持つ、非常に大きな都市には違いないが、それでも一つの地方自治体なんです。地方自治体の使命は住民福祉なんですね。都民の生活や暮らしを守り、豊かにしていくのが重要で、そのうえにオリンピックがあり、首都外交がある。それなのに猪瀬さんや舛添さんは都民の暮らしが抜け落ちていた。それを着実にやるかどうか。

7月31日、当選確実の報を受けて万歳する小池百合子氏ら

道路予算やオリンピック予算で都議会と対決できるか。本当にやるとすると大変なエネルギーを要するので、きちんと態勢をつくらないといけない。最初のパフォーマンスのままじゃなくて、自分の政策を実現するため、妨害や抵抗を排除することができるかどうかは、しっかり見ておかないといけないですね。都議会自民党が妨害してもやるためには、都議会と緊張感をもって説得もしないといけないし、対立もしながら、都議会の中で自分の政策を支持する都議グループを形成しないといけないですね。

――当面、どの課題が試金石となるでしょうか。

築地市場の移転問題です。豊洲移転は11月7日と決まっています。これまで都は既に6000億円、土壌汚染対策や土地の購入費や建物の建設費などで使っています。汚染対策は不十分だし、2011年の東日本大震災のときには液状化現象が起きた。築地で働いている仲卸業者の多くが、汚染対策は不十分で、できれば築地で仕事を継続したいと言われているので、いったん中断するというのが私の公約でした。

東京都知事選挙で築地市場を視察した小池百合子候補(左)=7月22日、東京都中央区

小池さんは築地市場にも足を運んでいるし「立ち止まって考える」と言っています。既に6000億も使っているので、相当な決断が要求されますね。それからオリンピック全体を透明化させないといけない。どれだけ費用負担がかかるのか。追加負担はどんどんふくれあがっていますが、都の負担すべきところを最低限で抑えられるのか。まずそこが試金石になってくるんじゃないでしょうか。

――小池新知事は選挙中に「都議会の闇」を強調しましたが、実際に思い当たる部分はありますか。

傍聴だけではわかりませんが、都議会は自民・公明の議員が6割を占めていますし、どうしても都議会の与党に配慮した政策を提言をせざるを得ないですよね。

ただ、舛添さんの政治とカネがあれだけ問題になって、自民も公明も含めて公用車や高額出張の問題を厳しく批判した。ところがそれをチェックする都議会自体が、リオ・オリンピックの視察に莫大な出張費を使って行くことを計画して、批判を受けて撤回しました。非常に豊かな財政があるから、職員も「それくらいは」と甘い考え方で慣らされている面がありますよね。しかしそういう費用を回せば、福祉、待機児童の問題を解決できる予算が出てくるわけです。

東京都議会総務委員会の集中審議で、頭を下げる舛添要一知事=6月13日、東京都新宿区の都庁

そもそも舛添さんの出張を了承しているのは都議会なんです。海外出張時の基準をオーバーする場合は人事委員会の確認を得なければいけないのに、そこは与党が関与できる立場なんですね。それを見逃してて、マスコミが大騒ぎしたら、とたんにそれに乗って知事を追及する。本来ならそういうチェックをいちばんやるべき議会がチェック機能を果たしていない。議会の問題は非常に大きいと私も思ったんですね。しかもこの高額出張費の問題は舛添さんだけじゃなくて、猪瀬さんもそうだったし、石原さんの時代から繰り返されている。本来は二元制で相互にチェックできないといけない知事と議会が石原さん以降、ずぶずぶになってきているんじゃないかなあ。

議会がチェック機能を果たしきれないので、私たちは第三者機関の行政監視オンブズマンのような、行政から独立した機関をつくって、住民の意見を聞いて透明化をはかるという提案をしています。アメリカのニューヨークには公益擁護官という、行政から独立した組織があるんですね。いろんな市民の意見を聞いて調査権限を持って提案もできるような。議会と市長から独立した機関です。小池さんは都政改革本部をつくって透明化を図るようですが、どういうメンバーでつくるのか。徹底的にやるかどうか。

いずれにせよ、小池さんが選挙戦で主張された政策や公約は整理して、ちゃんと実現するかどうか監視していこうと思っています。

――次の知事選、立候補するおつもりは?

多くの市民、都民から支持されれば、気持ちはありますけど、私も高齢になってきてますから、体力、気力の問題がありますよね。やはり激務ですから、やりきれる体力が残っていて、かつ多くの都民の支援があれば、挑戦することもあると思います。ただ、私たちは今回は一歩撤退したけれど、引き続き都政を監視し変えていく運動は、選対のメンバーを中心にやっていこうと思っています。

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