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「自粛ムード」で笑いも消えた。昭和天皇の健康が悪化した1988年

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日没近くになってもとぎれない記帳者の人波(東京・千代田区皇居前広場) 撮影日:1989年01月07日 | 時事通信社
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天皇陛下は8月8日、生前退位への考えを強く示唆するお気持ちをビデオメッセージで表明した。ビデオメッセージの中で、お気持ち表明に至った理由として、天皇陛下が挙げたのが「社会の停滞」などへの懸念だった。2020年に東京オリンピック・パラリンピックも控えた日本で、天皇陛下の健康不安から日本が「自粛ムード」に包まれることを懸念した可能性もある。

ここで、昭和天皇の体調悪化が報じられた1988年秋以降の日本の「自粛ムード」がどんな状況だったのか、振り返ってみたい。

天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き、その後喪儀に関連する行事が、1年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。

天皇陛下ビデオメッセージより)

昭和天皇が亡くなったのは1989年の1月7日。しかし、昭和天皇の容体悪化が伝えられた1988年9月19日から、すでに社会の「自粛ムード」が街を暗く覆うようになっていった。

9月20日のフジテレビ系列のお昼の人気番組「笑っていいとも!」では、軽快なテーマソングにお笑い芸人、タモリさんの歌が加わる冒頭のパターンがなくなった。NHKは毎夜のニュースで昭和天皇の下血量などをそのまま伝えた。

1988年10~12月、朝日新聞は世の中の自粛ムードに疑問を投げかける「自粛の街を歩く」を連載した。その中で取り上げられた「自粛」エピソードは、以下のようなものだ。

・各地で秋祭りが中止に
・東京・神保町の伝統の「古本まつり」が中止に
・東京六大学野球の早慶戦で、大太鼓による応援が禁止とされる
・大手洋菓子会社のクリスマスケーキの生産量が平年の2割減、街のクリスマスソングも控えめに
・創立記念などの祝賀会や個人の結婚披露宴も中止や延期に
・プロ野球日本シリーズで西武ライオンズが優勝するも、西武百貨店の系列店で恒例のセールが行われず
・「賀正」や「寿」を使わない年賀状が登場

一方で、過剰な自粛に疑問を投げかける声もあり、中止された祭りの主催者などには抗議が殺到する事態にもなった。

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銀座のショーウィンドーに掲げられた昭和天皇の遺影

また、朝日新聞はこの時の報道を振り返る1993年06月18日の朝刊の記事でも以下のように報じている。

読者・視聴者の周辺では「自粛ブーム」が表面化し始めた。

振り返ると、最初に強い反応を見せたのは、メディアだった。大半のテレビ局は、特別ニュース番組を組む一方で、娯楽番組を中止、変更した。

放送専門誌「放送レポート」によれば、九月二十四、二十五両日の中止・打ちきり番組は、二十八に上る。「今夜は最高!」「コラーッ!とんねるず」「あっ・アッケラカン!」「ついでにとんちんかん」などだ。

問題になったのは「笑い」だった。「オールナイトフジ」や「笑っていいとも増刊号」を中止したフジテレビ番組広報室は「当時の編成担当によると、陛下が危篤の場合、はではでしい笑いを伴う娯楽番組は自粛する、との社内マニュアルに沿った」と言う。

自粛は、テレビCMにも及んだ。十月に入って「皆さん、お元気ですか」と呼びかける乗用車のCMから、音声が消えた。新商品の「誕生」が「新発売」に、「おめでとう」が「よろしく」になった。


■自粛ムード、東日本大震災後にも

近年の大規模な「自粛」で思い出されるのは、2011年3月の東日本大震災後の日本で起こった自粛ムードだ。

この時も、各地で祭りやコンサートなどが相次いで中止された一方で、「過剰な自粛は経済の停滞を招く」との批判もあった。内閣府は2011年度の年次経済財政報告の中で実際に消費活動の抑制が起こり、景気を押し下げる要因になったと指摘している。

消費者マインドの悪化は、いわゆる「自粛ムード」と相俟って、消費活動の抑制につながり得る。後述するが、今回の震災後、外食や旅行等のレジャー支出、高級品の買い控えが実際に見られた。供給制約に加え、マインドの悪化という需要面においても震災の影響が顕在化したと考えられる。

産経ニュースによると、各地で花見などの行事が中止された一方で、東北の酒造メーカーなどは「東北の酒を飲んで応援して」とYouTubeの映像などを通じて訴えた。

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昭和天皇の生涯
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