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「格好いいと思うのは三船敏郎」 映画『ティエリー・トグルドーの憂鬱』主演のヴァンサン・ランドン

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LA LOI DU MARCHE
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現代の闇を描き出したフランス映画『ティエリー・トグルドーの憂鬱』が、8月27日からヒューマントラストシネマ渋谷など全国で公開される。フランスで観客の共感を呼び大ヒットとなった社会派ドラマだ。圧巻の演技で観客を魅了した主演の名優、ヴァンサン・ランドン(57)がハフポスト日本版のインタビューに応じ「格好いいと思う男優は三船敏郎」などと答えた。

今作品でランドンは、2015年カンヌ国際映画祭と2016年フランス・セザール賞とで主演男優賞を受賞した。ランドンは、己の矜持と社会のしがらみの中で板挟みになり、そして、現実のために身を落としてゆく中年男を演じた。監督は、『愛されるために、ここにいる』『母の身終い』などで知られるステファヌ・ブリゼ。自己保身と矜持、組織と個人、誰もが日々体験しているであろう社会の矛盾をあますところなく描き出し、我々に回答を迫る社会派人間ドラマだ。

<あらすじ>51歳のティエリーは、エンジニア一筋だった会社から集団解雇された。当初はストライキを起こしてでも闘うと仲間に息巻いていたが、結局、会社を辞めて職安に通うことになる。頑固な彼は、就職面接を受けても上手く対応することができない。就職訓練の場では若者からその堅さを指摘され、面目をなくす。そんな彼の唯一の救いは、妻と障害を持つ息子の存在だった。失業から1年半が過ぎ、ティエリーはようやくスーパーの警備員となった。希望していたエンジニアの仕事ではないが、今はそんなことは言っていられない。彼はそこで、買い物客だけでなく自分の同僚たちまで不正をしていないかを監視し、発見した場合には告発しなければならなくなった。しかしある日、告発によって、従業員の1人が自殺した。彼は会社側の厳しい対応に内心疑問を覚えるが―。

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インタビューに答えるヴァンサン・ランドン=東京都千代田区

ヴァンサン・ランドン 1959年、フランス生まれ。ル・マタン紙の記者として働きながら俳優を志し、83年に映画デビュー。92年に『女と男の危機』でセザール賞主演男優賞に初ノミネートされる。他、主な出演作に『君を想って海をゆく』、『友よ、さらばと言おう』、『母の身終い』など。幅広い演技力によって、コメディからシリアスな役までこなす。1998年に女優サンドリーヌ・キベルランと結婚し、一女を儲けたが離婚した。

――今回演じた役のティエリーには、誰かモデルとする人がいたのでしょうか。

いません。シナリオを細かく正確に読めばどう演じるか分かるように書かれていました。ただ、実際にでも映像でも人を観察するのは好きで、それが役立っているかもしれません。

ティエリーはパリの繁華街で女性を引っかけているような、そういうプレーボーイではありません。しかし尊厳があり、家族を守るため闘い、勇気があります。彼はとても男性的で、土地に根ざし、女性に安心感を与えることや自己犠牲を払うことができる新たなヒーローです。職場の社長に口を挟むことができ、社会の奴隷にはならず、社会を変えようとするんです。

彼は、最後にまた失業してしまうのかもしれません。しかし、弱者イジメよりも、社会の言いなりになるよりも、自分なりの価値観を取ることを選んだんです。

――主演として声がかかったときはどう思いましたか。

役にすぐに惚れ込みました。私はシナリオが気に入った作品しか出ず、これまでもおカネや生活のために映画に出たことはありません。

――今回の作品は、2015年にフランスで100万人の観客動員を記録する大ヒットとなりました。その要因はなんだと思いますか。

なぜ成功したかは分かりません。それが分かれば映画コンサルタントになりますよ。多くの人たちに劇場で見てもらい、「この作品はいい」と口コミで広がったんでしょう。何か感じてもらえたんだと思います。

――次回作は彫刻家のオーギュスト・ロダンを描いた作品だと聞いています。

今回とは180度違う人物を演じました。8カ月の間、彫刻を学びました。もしカンヌ映画祭に『ロダン』が行って日本でも上映されるなら、また日本にキャンペーンに来たいですね。

――ところで「格好いい」と思う男優は誰ですか。

日本人だと三船敏郎です。あと、価値観が共有できそうなのが、(いずれも米俳優の)ブラッド・ピット、ジェフ・ブリッジスです。個人的なつながりがあるわけではないですけれども。


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映画『ティエリー・トグルドーの憂鬱』
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監督:ステファヌ・ブリゼ『母の身終い』『愛されるために、ここにいる』
主演: ヴァンサン・ランドン『母の身終い』『すべて彼女のために』
2015年/フランス作品/カラー/93分/シネスコ/5.1ch/DCP/原題:La Loi du Marche/配給:熱帯美術館

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