中国当局に拘束された「民主化の村」リーダーに実刑判決 猛反発の村民が抗議デモ

当局が「民主化運動を抑え込むために拘束した」との見方も。

広東省・烏坎村の前村長・林祖恋氏

中国で「民主化の村」として注目を集めた広東省・烏坎(ウーカン)村の前村長、林祖恋氏が汚職などの罪に問われた裁判で、佛山市人民法院(裁判所)は9月8日、林氏に懲役3年1カ月と罰金20万元(約300万円)の実刑判決を言い渡した。香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポストなどが伝えた。

林氏は6月、村の土地問題の解決を市政府に陳情する直前、当局に拘束・逮捕されたのち、裁判にかけられていた。

中国国営の中国新聞によると、林氏は建築業者に便宜を図った見返りに44万元(約675万円)の賄賂を受け取ったという。この日の初公判で林氏は罪を認め、上訴しない方針を示し、即日判決が言い渡された。不正入札の罪にも問われたが、裁判所は「証拠不十分」として無罪を言い渡した。林氏は「村の人たちに懺悔したい」などと述べたという。

ただ、林氏の拘束と裁判をめぐっては、民主化運動の拡大を防ぐために当局が仕組んだものではないかという見方もあり、村人らが釈放を求めて抗議活動を展開している。

■村の民主化リーダーだった林氏

烏坎村では2011年9月、40年近く君臨した共産党の書記が村の土地使用権を開発業者などに売り渡したことなどで住民が反発。書記を追放し、直接選挙で自治組織を作った。そのリーダーが林祖恋氏だった。

当局は書記の不正を認めて免職にする一方、自治組織を「不法組織」として取り締まりを決定。これと前後して、自治組織のメンバー数人が当局に拘束され、そのうち1人の死亡が市政府から通知された。「心因性の突然死」とされたが、村民たちは「殺されたのでは」と疑い、騒動はさらに混迷化した。

村民らは村を封鎖するなどして抗議活動を拡大。各地に出稼ぎに出ていた村の若者らは、当局の動きを撮影しネットに投稿。抗議活動は、BBCをはじめ海外メディアからも注目を浴びた。

腐敗政治に抗議する烏坎村の村民ら

これを受けて広東省政府は2011年12月21日、自治組織を「合法」として存続を保証。村長選挙のやり直しなど住民側の要求をほぼ受け入れ、争議は収束し、林氏が新村長に選出された。

ところが、騒動の発端となった土地問題は未解決のままで、業者に売り渡された村の土地は返還されなかった。そこで林氏は2016年6月、村民とともに、土地問題の解決を陸豊市政府に陳情しようとしたが、その直前に当局が林氏は拘束。林氏は汚職や不正入札の容疑で逮捕された

林氏を拘束するため自宅に入る警察

■民主化運動を抑え込むため? 村民は猛反発しデモ活動

烏坎村は「民主化の先進例」として国内外の注目を集めており、2013年には烏坎村に続こうと広東省の別の村が「憲法にのっとった民主選挙を」というスローガンを掲げ、村長の直接選挙を求める事例も発生。当局は、民主化運動の広がりを抑え込むために林氏を拘束したのではないかという見方もある。

市政府側は、拘束された林氏が汚職容疑を自供した際の映像を公開したが、住民らは冤罪だと主張し、反発を強めた。


サウス・チャイナ・モーニング・ポストなどによると、林氏が拘束された後、村民たちは抗議デモを連日実施しており、これまで1日1回だったデモを2回に増やすことを表明するなど反発を強めている。

抗議する村民の様子

これに対し警察は8日、村民が人民法院に近付けないよう、村の道路を封鎖。人民法院の周囲1キロをパトロールし、付近への立ち入りも制限した。また、デモ行為自体が違法として、10日までに中止するよう警告するなど、村民と当局の対立が激化している。

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