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2000人殺害でもドゥテルテ大統領を支持する"出稼ぎ国民"の声「本当はフィリピンで暮らしたい」

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ドゥテルテ大統領 (AP Photo/Bullit Marquez) | ASSOCIATED PRESS
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ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の就任以来、フィリピンでは警官や自警団らによる超法規的取り締まりで、殺害された麻薬犯罪容疑者が2000人を超えたと報じられている。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が非難声明を発表するなど、「重大な人権侵害」との国際世論も高まっている。

2016年5月に行われた大統領選挙で、元ダバオ市長のドゥテルテは圧勝したが、特に地盤である南部やマニラ首都圏などで高い得票率を誇った。加えてもう一つ、彼が72%を超えるダントツの得票率を誇った地域があった。それが、海外だ。

フィリピンは国内経済の発展が途上であることから、世界各国で多くの人々が働いて外貨を稼いでいる。英語に堪能な人々が多い事情も有利に働き、国民の1割近い1000万人以上が海外で暮らし、外貨送金が国内の経済を支える「出稼ぎ大国」との異名もある。

フィリピンでは未だ高い支持率を維持しているとされるドゥテルテ。海外でドゥテルテを支持していた人々は今、彼の政策や振る舞いをどう考えているのだろうか?ハフポスト日本版では、シンガポールで働くフィリピン出身の人々に話を聞いた。

■「本当はフィリピンで暮らしたい」

ドゥテルテ氏を支持する理由を「本当はフィリピンで暮らしたいから」と話す、セブ島出身のジェシュリーン・セヴィーレスは、システムエンジニアの夫、ライアンとともに7年前からシンガポールで働いている。大統領選挙前には、ドゥテルテへの支持を表明する「自撮り」をFacebookに何度もポストし、SNSで支持拡大を訴える草の根運動にも積極的に加わった。

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記念撮影するジェシュリーン(右)と夫のライアン

世界有数の治安の良さで知られるシンガポールは、海外から多くの投資を呼び込み経済発展を成功させた。今では大勢の外国人とともに、フィリピン人も働いている。ジェシュリーンはごく小さな企業の事務員で、今は出産のために退職し、地元に一時帰国中だ。2人の収入は、地元で稼ぐよりも十数倍になるという。ほとんどのフィリピン人がそうであるように、給料日後には実家に仕送りをし、両親らの生活を支えている。

経済成長めざましいと言われるフィリピンだが、「まだまだ全然だ」とジェシュリーンは考えている。「フィリピンが一刻も早く安全な場所にならない限り、外国企業の投資は頭打ちになると思う」。「もしフィリピンの治安が改善し経済が良くなったら、もちろんフィリピンで暮らすのがいいに決まっている。私の家族はそこにいるのだし、故郷よりいい場所なんかない」。

■「植民地マインド」

フィリピンは、16世紀から始まったスペインの植民地支配、アメリカによる統治、第二次世界大戦中には日本の統治を受けた苦難の歴史をたどった。

日本同様、フィリピン国内に置かれていたアメリカ軍基地は、1992年に一度撤退した。しかし、2014年に結ばれた「米比防衛協力強化協定」に基づいて、2016年3月にはフィリピン国内の5基地を共同使用する合意が結ばれた。中国の台頭に対抗するアメリカ側の意向が反映されたとみられており、フィリピン側はその見返りに、アメリカに防衛のための資金援助を求めた。こうした動きから、ベニグノ・アキノ前大統領は「アメリカの操り人形」と度々批判されてきた。9月12日の演説でドゥテルテ氏は「アメリカ軍は出て行け」と発言した。

ジェシュリーンはフィリピンはそうした「植民地マインド」から抜け出すべきだとも訴える。ドゥテルテ氏は「国連を脱退する」などの暴言で話題を振りまいた。そうした話しぶりも、「外国の操り人形ではないぞというアピール」に映るという。「フィリピン人には長年染み付いた「植民地マインド」があり、外国の言いなりになっている。そこからの脱却が必要だと、彼はハッパをかけていると思う。ただ、お願いだからもっと言葉遣いには気をつけて、とは言いたい。誤解されるのは良くない」

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1945年のマニラ。日本占領軍と米軍の激しい戦闘により火の手が上がる街では多くの市民が犠牲になった。

一方、ライアンはドゥテルテを「無私の人」と評価する。

2013年10月のボホール島・セブ島の震災で私財を寄付したことや、2013年11月に台風30号「ハイヤン」で被災したレイテ島にも真っ先に駆けつけて、続いて迅速に医師や看護師を多数派遣したなどの例を挙げた。

「しかも、そうした時、他の多くの政治家がテレビカメラの前で自らをアピールするのに対し、彼は自分の名前を過剰にアピールすることなく、『送り主はダバオの人々だ』と言うのです。彼は何がフィリピン人にとってベストかを常に考えている」。

■「メディアは誇張しすぎ」

シンガポールの建設会社でエンジニアとして働くテリーは、「世界中のメディアは誇張しすぎ」と憤る。

「ドラッグや汚職との戦いで彼は次々と敵を作っています。しかし、これまで甘い汁を吸ってきた大企業や著名人が、色んな手段を利用して彼の評判を貶めている可能性は否定できない。不正確なニュースが流れ続けるからこそ、私は彼らの情報操作が及ばないSNSで情報収集できる時代に感謝しているんです」。

彼女もドラッグ取り締まりについての手腕を評価している。「彼のアグレッシブな取り締まりだけが話題になっている。でもその裏で、60万人もの犯罪者が自首した事実はあまり知られていない」。ドゥテルテ氏は就任前に、薬物犯罪者を厳しく取り締まると宣言。刑務所には自首する人々の行列ができた。こうした厳しい取り締まりが治安改善に役立つと考えている。

一方で、ドゥテルテは就任前に「自首した者は療養プログラムを与える」とも宣言していたが、実際には自首した人数が多すぎて全員が収監しきれず、囚人は床で順番に寝る有様だとも報告されている

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2016年7月21日に撮影された写真。マニラにあるケソン市刑務所の野外バスケットボール場で眠る受刑者たち

■「子供の頃のフィリピンは夜まで遊べた」

シンガポールでは住み込みの家政婦としても約8万人のフィリピン人女性が働いていると言われている。エンジニアなど技術者よりは比較的貧しい層の出身者が大半だ。その一人、ミニー・サントスは、レイテ島北部出身で、家族全員で彼を応援していると話す。「彼は常に貧しい人の味方だから」という。

やはり、特に評価しているのはドラッグ依存症患者らへの厳しい取り締まりだ。

「フィリピンでドラッグは純粋な若者たちを蝕んでいて、夜に一人で出歩くことなんてとてもできないのがフィリピンのイメージでしょう?でも、私が子供だった頃は夜8時、暗くなるまで遊べた。今みたいなことはなかった。今ではドラッグ依存症患者が国を支配して、殺人やレイプが多発している。そうした犯罪を野放しにすることの方が、依存症患者を殺害することより、よっぽど多くの人の人権を侵害する行為だと思う」

■「迷っている。いいところも悪いところもあるから」

一方、同じくドゥテルテに投票した家政婦のジェニーは、就任後の評価を「迷っている。いいところも悪いところもあるから」と語る。

彼女はマニラ近郊の出身で、子供たちを置いて家政婦としてシンガポールやドバイでもう20年もの間、働いている。投票前にはミニーと同じく「実行力」を評価していたが、「諸外国との関係をあえて悪くするような振る舞いが本当にいいのか。混乱している...」とも話している。

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