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監獄の中で声を出せない、レイプされる女性受刑者たち

2016年10月05日 18時46分 JST | 更新 2016年10月05日 21時17分 JST

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レティシア・ヴィジャレアルさんは、アーカンソー州のマクファーソン女性刑務所に服役中、刑務所内礼拝堂の牧師から性的暴行を受けた。彼女は今でもそのトラウマと戦っている。

アメリカ・アーカンソー州マクファーソン女性刑務所での服役が始まったとき、レティシア・ヴィジャレアルさん(42)は怒りと苦しみで激しく動悸した。彼女はメキシコからの不法入国者だった。英語は話せなかった。面会に来る人も、電話をくれる人もいなかった。子供たちが恋しくて仕方なかった。生まれて初めて、本当に孤独であった。

そして、神を見つけた。

ヴィジャレアルさんは、刑務所内礼拝堂のケネス・デウィット牧師の歓迎を受けた。デウィット牧師は、福音主義的聖書原理主義者ビル・ゴサード牧師の教えに基づき、不祥事を起こした受刑者のための宗教活動「人生の原理と適用(PAL)」に従事していた。

PALプログラムの女性は別の宿舎で生活し、日々の大半を勉強と祈りに費やした。ヴィジャレアルさんは、そこは一般宿舎よりも静かで清潔だったから、おおむね生活の質は良かったと語った。また、受刑者の間では、特に仮釈放が可能な場合、このプログラムに参加していると有利になると噂されていた。

元PALプログラム参加者からの話によると、デウィット牧師は、人の責務、不純な考えの浄化、権威(妻は夫に従うべきという家族内での権威や、彼らが収監されている刑務所内の権威)に屈することの重要性などについて、日々講義していた。

ヴィジャレアルさんは、違法薬物の製造、受け渡しおよび所持で禁錮40年の刑が下されていたが、人生に希望を見出した。

「私は勉強に打ち込み始めました。自分が変わらなければならないことは分かっていましたが、その方法がわからなかったのです」

ヴィジャレアルさんがプログラムに参加してから数年後、デウィット牧師は個別指導を受けるように彼女を誘い、ある月曜日の午前6時に自分の事務所に報告に来るように伝えた。彼女は選ばれたことに感激し、特別講義に熱心に取り組んだという。

ヴィジャレアルさんがハフポストUS版に語った内容によると、デウィット牧師の事務所に入ると、彼女はデウィット牧師から「何が必要かは分かっている、それは親密な方法で触れられることだ」と言われた。デウィット牧師の事務所では、毎朝数分間、受刑者の人数を数えるため、看守が事務所からいなくなる時間があった。牧師はこの瞬間を利用し、彼女の胸やお尻を触ったという。

その朝は、彼女にとって悪夢の始まりに過ぎなかった。

ヴィジャレアルさんによると、デウィット牧師は毎週月曜日に彼女を事務所に呼び出し、彼女にオーラルセックスと性行為を強要するなどの性的暴行を行った。しかも、犠牲者は彼女だけではなかった。PALプログラムの他の2人の女性受刑者も、デウィット牧師から毎週性的虐待を受けていたと州警察に語った。1人の女性は、その暴行は3年半もの間、秘密裏に続いたと報告した。彼女の場合、暴行は1年半ほど続いた。

デウィット牧師は、ヴィジャレアルさんを含むPALプログラムに参加していた女性受刑者3人に対する性的暴行罪で有罪を認めた。当初は第3級性的暴行罪(500年の実刑が下される可能性がある)である50件の性的暴行事件で告発されたが、最終的に認めた罪は3件、つまり被害者1人に1回ずつだけだ。

アーカンソー州犯罪者矯正局で13年務めたデウィット牧師には、同州刑務所で5年間の実刑が下されることが見込まれている。しかし、刑期を6分の1ほど務めた程度で仮釈放が認められる可能性がある。つまり、1年も経たずに釈放されるかもしれない。

ケネス・デウィット牧師には、自身が務めた州刑務所で3人の女性受刑者性的暴行を働いた罪で5年間の実刑が言い渡される見込みである。

「デウィットは67歳です。現代男性の平均寿命は77歳ですから、5年は寿命の半分ということになります」ヘンリー・ボイス検察官は短かい説明を求められたとき、このように述べた。

元スタンフォード大学の水泳選手であるブロック・ターナーが意識のない女性に性的暴行を働いた罪で言い渡された実刑がたった6カ月であったことに対し、国民が怒りを爆発させてから、たった1カ月後のことだった。

デウィット事件は、ブロック・ターナー事件と同じような国民的な怒りを誘発していない。それは特別驚くことではない。

そもそも、犠牲者の2人は今も刑務所で終身刑に服している(ハフポストUS版は、本人からの明確な許可がなければ名前を公表しない)。彼女たちは事実上、自らが受けた苦痛について声を上げる力がない。信頼されている権威者から暴行を受けていることへの恐怖、そこでの生活を余儀なくされていること、そして犯罪現場から逃げることができない事実を一般人にも伝えられる「被害者影響陳述書」(犯罪被害者への身体的、精神的影響を裁判所に報告する文書)はない。

しかし、アメリカ大学ワシントンローカレッジのブレンダV.スミス教授は、被害者がどんな人物かという点も関係するかもしれないと述べた。一般人は、刑務所に収容されている女性は「完璧な被害者」ではないため、彼女たちに対する同情が薄いのかもしれない。

「この事件に人々が憤りを感じる理由に関心があります。これは、魂の導き役であるべき牧師の話です。彼は、矯正施設で権威が与えられた人物というだけでなく、刑務所牧師として道徳的権威もあります」

過去4年間、アメリカ合衆国の女性受刑者の割合は急増している。刑務所にいる多くの女性は、収容される前に肉体的または性的に虐待されているため、職員による虐待に敏感に反応する。

収容中に性的暴行を受ける女性の数を把握することは難しい。2011〜12年にアメリカ司法統計局が行ったアンケート調査では、前年度に職員から性的な暴行を1回以上受けていると報告した女性受刑者は2.3%と予測されている。

刑務所ではレイプが報告されることは極めて少なく、女性が声を上げられない理由も数多くあるため、この数字は実際よりも低い可能性が高いと、スミス教授は説明する。女性受刑者は、報告しても信じてもらえないという恐怖や、虚偽の報告をすれば、受刑者は罰を受けるか、「善行している時間」、つまり模範行動で刑期が短縮される機会を失うことになりかねないという不安があるのかもしれない。

スミス教授は言う。「実際には誰も調査しない、あるいは誰も信用しない報告がされます。性的暴行する側の方が、圧倒的に権力があり、合法的な立場なのです」

ヴィジャレアルさんは、デウィット牧師が2014年、元受刑者であった別の牧師と性的関係があったことを認めて辞職するまで、権威ある人物を訴えたくなかったと述べた。

誰も信用できなかったから、誰にも何も言えなかったのです。

――投獄中に性的暴行を受けたレティシア・ヴィジャレアルさん

アーカンソー州矯正局のスポークスマンによると、マクファーソン刑務所は、性的虐待の被害者になった場合、その報告方法も含め、何をするべきかについて受刑者たちに情報提供している。その方法は、職員に伝える、特定のホットラインに電話する、また受刑者苦情フォームに記載するといったことだ。

アーカンソー州矯正局ディレクター、ウェンディ・ケリー氏は、地元紙「アーカンソー・デモクラット・ガゼット」に対し、デウィットの逮捕後、事務所の壁を取り壊して可視化するなど、いくつかの改善を行っていると述べた。

「矯正局は、保護管理下にある受刑者が性的虐待の被害者とならないように、その権威の下でできる限りのことをします」。ケリー氏は、ハフポストUS版に送った声明の中でこのように述べた。「矯正局はケネス・デウィットの行動について全面的に捜査に協力します。また、アーカンソー州警察兼検察官ヘンリー・ボイス氏やその職員の協力に感謝します」

ヴィジャレアルさんは、看守の1人と仲良くなり、デウィット牧師の行為を食い止めるため、彼の事務所の外にカメラを設置することを望んでいた。しかし、問題を起こすのは怖すぎたという。また、誰かに言えば一生刑務所から出れないというデウィット牧師の脅迫が頭にあった。

「100%信用できる人はいなかったので、誰にも何も言えませんでした。恐怖だけでなく、恥ずかしさや、色々な理由がありました」

2015年、ヴィジャレアルさんは10年の刑期を終えて刑務所から釈放され、直ちにメキシコへと送還された。現在は、メキシコの北メキシコ州にある小さな村で暮らしている。孤児院で働き、余暇は絵を描いて過ごしている。油、アクリル、チョークなど、あれば何でも使う。

「人々の生活に触れたいのです」と、ヴィジャレアルさんは言った。

彼女は、今でも性的暴行を受けたトラウマと戦っていると述べた。刑務所で子宮摘出手術を受けたが、術後もデウィット牧師から性行為を強要されたと述べた。それは彼女にとって最悪の経験で、真剣に自殺を考えた。

彼女は今でも宗教心を捨てていない。デウィット牧師への怒りと共に信仰心を取り戻す努力をしなければならなかった。

「以前は彼に対して、そのような恐ろしい考えを持っていましたが、同時にそれは罪だと分かっていたので自分を抑えていました。牧師が悪事を働くなんて、考えるはずがありません」と、ヴィジャレアルさんは言った。

デウィット牧師が受けた刑は軽いが、苦しい体験が終わってうれしいと述べた。

「デウィットはもっと長く刑に服するべきだと思いますが、やはり、私はその場にいませんから声を上げることはできません」と、ヴィジャレアルさんは語る。「あるいは、私が違法な存在だから声を上げられないのかもしれません。私のような人間はそんな風に扱われているのです」

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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