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「本来は母子支援から考えなければ」特別養子縁組を理解するために大切なこと #家族のかたち

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児童福祉法改正案が2016年5月、可決・成立した。新設された第三条には、「すべての子どもを養子縁組、里親を含む“家庭”で育てると謳われている。欧米と比べて施設偏重と批判されてきた日本の社会的養護行政はどうなるのか。これからの多様な「家族のかたち」を考えるシリーズ、今回は特別養子縁組の現状や課題についてジャーナリストのなかのかおりさんがレポートする。

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『おかあさんになりたい』をつなぐ特別養子縁組」では、血のつながりはない赤ちゃんと夫婦が家族になる物語を紹介した。生みの親が育てられない子どものうち約85%の3万人以上が、乳児院や児童養護施設で暮らしている。子どものためには大人数の施設より、家庭的な養育がいいとされているが、里親や養子縁組家庭はまだ少ない。

法的にも親子となる「特別養子縁組」の現状や課題は何か。厚生労働省研究班で養子縁組の調査にも取り組んだ日本女子大の林浩康教授(社会福祉学)に聞いた。

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■生みの親が育てられる環境づくりを

——「特別養子縁組」も重要な仕組みですが、本来は、思いがけない妊娠をした場合のサポートが大事なのですね。

家庭的な養育の充実も大切ですが、まず「実家に頼れない、経済的に苦しいなど事情のある妊婦さん」を支える仕組みが必要です。本来は母子の支援から考えなければなりません。妊娠して悩みがあるとき、自治体の窓口で相談できたらいい。でも、妊娠を届けていないケースも多く、情報がない。そうなると母子手帳をもらわないし、健診にも行きません。行政の窓口というのは、心理的にも遠く相談しにくいようです。

産んで育てようとしても、行政の経済的支援としては、生活保護と児童扶養手当の制度があるぐらい。住居政策も弱く、妊娠中から入所できる施設などが、ほとんどありません。家庭で母子を一緒に預かり、地域で包み込むような事業があればいいですね。現状は母子だけで生きていくには厳しい環境のため、子どもを手放し、施設や里親など「社会的な養護」に頼らざるを得ません。

■特定の大人と家庭で過ごすほうがいい

——あらためて、里親や養子縁組とはどんな仕組みでしょうか。

欧米では家庭養育の割合が高く、日本でも増やすと掲げていますが、まだ少ない。特定の大人と愛着関係を持ち、安定して過ごすことが子どもの成長にかかせません。生みの親が育てられない場合、提供される家庭養育には、里親と養子縁組があります。

法律上、里親は18歳まで家庭で一緒に暮らすことが可能です。特別養子縁組は、生みの親との法的な関係はなくなり、戸籍上も養親と親子になる。縁組の年齢は6歳までで、半年間の試験養育期間を経て、家庭裁判所が審判します。普通養子縁組は、戸籍上は生みの親と親子関係があります。

■専任職員がいる児童相談所は3割

——特別養子縁組を希望する場合は、どんなところに行けばいいのですか。

特別養子縁組は、全国に200カ所余りある児童相談所(児相)と、都道府県に届けた23の民間団体が扱っています。児相の働きが、十分でないのが課題です。私たちの厚労省研究班の調査によると、2014年度に養子縁組を前提とした家庭への委託は、児相1か所あたりわずか1.5件。約4割の児相では、ゼロでした。年に500件をこえる特別養子縁組が成立しているうち児相は270件ほどで、多くを民間団体の働きに頼っています。

子どもがいったん養護施設に入ってしまうと、施設や児童相談所は子どもを出すのに慎重になります。児相から生みの親の同意を得るためのアプローチがうまくできないまま、特別養子縁組ができる6歳をこえてしまう場合もあります。児相でアプローチがうまくいかない原因として、専任の職員の不足があります。里親や養子縁組に取り組む専任職員がいる児相は、3割もありません。多くが、増える虐待の対応など、ほかの業務と掛け持ちしています。養子縁組に熱意を持ち、継続して取り組める状況が必要です。

■民間団体は熟練したスタッフが強み・財政支援には課題

——児童相談所に対し、民間団体のメリット・デメリットは。

その点、民間団体には、長年の経験や人脈があるスタッフがいます。でも、財政支援がないため、縁組を希望する家庭の負担金や寄付で運営しています。面接の交通費や子どもの保育料、団体の運営費などがかかります。こうした実費を取ることは厚労省の通知で認められているものの、縁組家庭の負担金に格差が出ます。

民間団体に、安定した財政支援が必要です。児相と民間団体が連携するのもいいと思います。相談は自治体か児相が受け、縁組は民間団体に委託するという方法も考えられます。民間団体があっせん料を取ることを禁止しようという意見もあります。代わりに、民間団体に一括して年間にいくらという形で助成があれば、活動が透明になりますし、人材が確保できるでしょう。

■養子縁組ありきの妊娠相談はNG

——生みの親への対応やアプローチも大切ですね。特に気を付けることはありますか。

また、民間団体の多くは妊娠相談と養子縁組の両方を扱いますが、養子縁組ありきで妊娠相談を受けるのは疑問を感じます。生みの親は自分で育てるか、社会的な養護にゆだねるか、気持ちは常に揺れ動きます。赤ちゃんを抱いたら愛情を感じる場合もあるでしょう。

私は、国会に提出されようとしている養子縁組あっせん法案について、すぐに縁組に持っていくのではなく、生みの親の同意については3段階にすべきと提言しています。まず養子縁組を希望する家庭とマッチング。試験養育期間を設け、最終的に縁組に同意するか確認するというプロセスです。

■医療現場で周知を・養親の質も高めて

——これからの課題を教えて下さい。

医療の現場でも、もっと特別養子縁組について知ってもらう必要があります。「新生児を託して」と生みの親に頼まれても、そんなに簡単に民間団体を信頼できないという産院や小児科もあります。国は、児相や民間団体を対象に、特別養子縁組のガイドラインが必要だとしています。

養親の質を保つのも大事です。少なくとも事前に3回は面接し、養父母だけでなくすべての家族に会うべきです。生い立ちの真実を告げる際、いつどうやって伝えればいいか悩む養親も少なくありません。児相や民間団体で、養親の研修を義務化したほうがいいと思います。どんな養親候補がいるか、児相や民間団体の間で情報を共有する仕組みも必要です。

林浩康
1961年生まれ。専門は社会福祉学。学生のころ、生みの親と暮らせない子どもたちと触れ合うボランティアに参加したのをきっかけに、子ども・家族支援の研究に進んだ。

(ジャーナリスト、なかのかおり

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