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厚労省は、電通を「働きやすい企業」と過去3回も認定していた なぜ見逃したのか?

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電通本社ビル(中央)(東京都港区)  撮影日:2002年11月28日 | 時事通信社
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厚生労働省が過去3回にわたって、大手広告代理店の電通を、労働時間の短縮や子育てする社員へのサポートに取り組んだ働きやすい企業に認定していたと、10月26日にしんぶん赤旗が報じた。

電通をめぐっては、2015年12月に亡くなった新入社員の女性が過重労働による自殺だと労災認定されている。また、違法な長時間労働をさせたとして2014年6月には関西支社が、女性社員が自殺する約4カ月前の2015年8月には東京本社がそれぞれ是正勧告を受けていたことも発覚している。厚労省に責任はないのだろうか。

■高水準の労働条件、子育てサポート企業の証「くるみん認定」とは

この認定は「くるみん認定」と呼ばれ、厚生労働大臣が次世代育成支援対策推進法に基づき、一定の基準を満たした企業を「子育てサポート企業」として認定する。申請の結果「くるみん認定」を受けた企業は、広告などに「くるみんマーク」を表示でき、高水準の労働条件の実現に取り組んでいる企業であるとアピールできる。2016年6月末現在で2570社が認定を受けている。

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くるみんマーク

また、「くるみん認定」を取得した事業主には税制優遇制度があり、認定を受けた事業年度の新築・増改築をした建物などを割増償却できる。

「くるみん認定」の認定基準は9項目あり、「男性労働者のうち育児休業等をしたものが 1人以上いる」「女性労働者の育児休業等取得率が 70%以上」「所定外労働の削減のための措置、年次有給休暇の取得の促進のための措置の実施」にほか、「法及び法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと」も条件となっている。

電通は2010年のCSRレポートで「電通の基本思想は『人が最大の財産』であることです」とした上で、「くるみん」マークの認定に触れつつ「社員一人一人が心身の健康を保ち、仕事と生活のバランスをとって、能力を十分に発揮できる『働きやすい環境』を実現するための活動を行っています」と明記していた

なぜ電通が「くるみんマーク」に認定されたのか、ハフポスト日本版は厚労省・職業家庭両立課の担当者に話を聞いた。

――電通はこれまでにくるみん認定を受けていますが、具体的にはいつごろ認定されましたか。

2007年、2013年、2015年にの3回にわたって「くるみんマーク」に認定しています。「くるみんマーク」は企業が労働局に申請し、これを厚労省のほうで認定基準に照らし合わせ認定します。

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くるみんマーク認定までの流れ

――電通は2013年に男性社員が病死した件について、長時間労働が原因の過労死と認め、労災認定しています。また、2014~15年にかけても長時間労働の是正勧告が出ています。となると、なぜ2015年に「くるみんマーク」に認定したのでしょうか。

認定にあたっては、労働局の雇用環境均等の担当部局が、所管法の担当部局に違法状態の有無を問い合わせます。そこで違法状態が確認されなかったものと思われます。過去に是正勧告が出されていても認定の審査をクリアしているということは、「くるみん認定」審査の時点で改善状況が報告されていたため、法令に違反していないという判断になったものだと思います。

――ただ、実際には新入社員の過労自殺が認定され、違法な長時間労働が全社的に常態化していた疑いが出ています。「くるみんマーク」の基準を満たしていなかったのでは。認定の取り消しなどは考えていますか。

労働実態については、労働基準監督署が定期的に確認をしています。今回の過労自殺の問題を受けて、電通に対しては東京労働局と三田労働基準監督署が立ち入り調査に入っています。取り消しなどは、今後の調査を踏まえて考えることになります。

――そもそも「くるみんマーク」の基準自体に問題があったのでは。認定基準は見直しますか。

これについては今後の検討課題と考えます。

■電通の過労自殺、1991年にも

電通をめぐっては、1991年にも入社2年目の男性社員が過労で自殺し、遺族が電通に損害賠償を求める訴訟を起こした。この「電通事件」では2000年6月に電通側が責任を全面的に認めて陳謝、1億6800万円余を損害金として支払った。

大手広告代理店「電通」(東京都中央区)の社員で自殺した大嶋一郎さん(当時二四)の両親が「自殺は会社が長時間労働をさせたことによる過労が原因だ」として電通に約一億六千三百万円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し後の東京高裁(奥山興悦裁判長)での控訴審で二十三日、和解が成立した。電通側が陳謝し、一億六千八百万円余を損害金として支払う。過労自殺をめぐる訴訟で、企業側が責任を全面的に認める形で和解が成立したのは初めてで、遺族側は「全面勝利の内容」と評価している。今後も労災認定や同種の訴訟などに大きな影響を与えそうだ。

(朝日新聞2000年6月23日夕刊)


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