Huffpost Japan

イーロン・マスクに挑む男。発電可能な屋根「ソーラールーフ」で世界を変える

投稿日: 更新:
印刷


デトロイト郊外に拠点を置く、ソーラールーフを扱うスタートアップ「ルマ・リソーシズ」。ソーラー製品市場でテスラ、ダウ・ケミカル、サンゴバンの大手3社に挑む。

電気自動車メーカー「テスラ」創業者兼CEOのイーロン・マスク氏が10月28日、傘下のエネルギー会社「ソーラーシティ」が開発した発電可能な屋根「ソーラールーフ」の新製品を発表した。マスク氏によると、このソーラールーフは、屋根に取り付けるソーラーパネルシステムではなく、太陽電池そのものが屋根板に使われるという。

マスク氏は8月、この製品について、「競争相手がいない製品になる。これまでにない勝負だ」と語っている。

しかし、競争相手はいた。アメリカ・ミシガン州南部に拠点を置くソーラールーフのスタートアップ「ルマ・リソーシズ」のロバート・アレン社長(62)だ。

アレン氏はここ10年を、ソーラールーフの開発に費やしている。

「マスク氏が何を始めようとも、私は負けたくはありません」とアレン氏はハフポストUS版の電話インタビューで語った。「ソーラールーフは私たちのフィールドです。長年やっていますし、評価も得ています」


【参考記事】イーロン・マスクは、どんな困難があろうと火星へ人を送り込もうとしている(最新計画)


ルマ・リソーシズは2007年に「ソーラーシングル」を開発した。この製品は太陽電池の付いたシリコンシートを金属の屋根板に接着させたものだ。それぞれの家の屋根の形や輪郭に合わせて調整できる。同社は当初、製品の販売に慎重だったが、2010年11月に製品の安全を保証するアメリカのUL規格認証を得た。

この認証は絶好のタイミングだった。業界大手のダウ・ケミカルがその月に自社製のソーラーシングルを販売したからだ。ミシガン州デトロイト郊外にあるルマ・リソーシズと同じミシガン州ミッドランドに本社を置くダウ・ケミカルは、野心的な目標を設定した。ダウ・ケミカルは、ソーラーシングルから10億ドル(約1037億円)の収益を見込み、全体的な市場価値を少なくとも50億ドル(約5200億円)とした。フランスの大手「サンゴバン」も、その数か月後に独自のソーラールーフ製品を発表した。

「大手2社が同じようなことを簡単にやったように見えますが、私たちの方が先です」と、アレン氏は語った。「始めたのは、私たちです」


ロバート・アレン氏(右)。ビジネスパートナーで弟のゲイリーと。

しかし、ソーラーシングル、業界用語で言う「BIPV」は「建物に組み込んだ太陽光発電」で、課題の多いビジネスとなっている。サンゴバンは依然として「アポロ」システムを販売しているが、ダウ・ケミカルは2016年6月に販売を中止した。ソーラーシングルや似たような製品を製造している会社は他にも数十社あったが、ここ数年で廃業しているか、または倒産している。

環境技術関連のニュースサイト「グリーンテク・メディア」の総合編集長エリック・ウェソフ氏は、「ソーラーシングルはイケてるように見えるが、人々は建物に新しい装置を取り付けることをいつも信頼しているとは限らない」と語った。

「建物の屋根は、いわば保守的な市場です。そこにまったく新しいタイプの製品を送り込もうとしているのだから、難しい挑戦なのです」と、ウェソフ氏は8月にマスク氏に送った公開書簡に書いている。「伝統的なラック式のソーラーパネルは、美的にはパーフェクトでないかもしれないが、販売経路と専門知識があるのです」

それでも、ルマ・リソーシズは頑張っている。他の企業は失敗した。アレン氏は競争力があるからだと話す。彼らは何よりもまず、屋根職人だ。アレン氏の父親が67年前に「アレン・ブラザーズ・ルーフィング」を創業した。ロバートとゲイリー(55)兄弟が1986年にその事業を受け継いだ。2001年9月11に同時多発テロ攻撃を受けたペンタゴン(国防総省)の再工事なども請け負った。彼らのソーラールーフへの取り組みは、アメリカを襲った大不況の真っただ中で、会社を改革する試みだった。実際、アメリカ復興・再投資法からの借り入れで改革を進めている。

バラク・オバマ大統領は、2011年の一般教書演説でアレン兄弟をアメリカ改革のモデルとして称えた。「これこそがアメリカが200年間してきたことです。改革です。アレン兄弟の成功に刺激を受け、私たちはエネルギー政策を改革し始めました」

ロバート・アレン氏は、業界での成功は長い経験によるものだと話している。「私たちは屋根職人なので、いつでも屋根という観点からアプローチするのです。屋根はとても単純なものだと考えられていますが、そうではありません。複雑です。失敗は許されません。雨漏りしてもいけません」

アレン・ブラザーズ・ルーフィングの子会社となるルマ・リソーシズは、困難に直面している。会社は合計で約75万ワットのソーラーシングルを売った。アメリカ、カナダ、ジャマイカの住宅およそ150戸から200戸に取り付けた。現在、価格が上昇している。住宅の電気の80%を賄える5.5キロワットのシステムで、設置に平均約3万3000ドル(約342万円)かかる。工事費用は含まれていない。屋根職人にソーラーシングルの設置の仕方を教えるのも難しい。結果、ルマ・リソーシズは、設置のために約6人の社員チームをアメリカ全土に派遣しなければならなくなっている。


シングルを設置するために6人の特殊作業員がチームになって働いている。アレン氏はアレン・ブラザーズ・ルーフィングには設置作業ができる社員が50人近くいると話している。

ルマ・リソーシズがビジネスを続ける中、ソーラーシティのルーフ製品が脅威となるかもしれない。ソーラーシティはニューヨーク州バッファローに工場を作っている。ルマ・リソーシズよりも、ルーフ製品を大量に安く生産できる。製品はリチウムイオン電池とセットで販売される予定で、マスク氏の自動車会社「テスラ」がすでに余剰エネルギーを貯蓄できる夜間用ソーラーパネルを販売している。テスラは6月にソーラーシティの買収を明らかにした。買収により電池とソーラー技術の融合が実現すると投資家に呼びかけている。合併の是非を問う株主総会が11月17日に開かれる予定だ。


【参考記事】イーロン・マスク、テスラモーターズを「詐欺師」と呼んだ"石炭王"に反撃


「小人が巨人を倒す典型的なシナリオです」とアレン氏は語った。「マスク氏やダウ・ケミカル、サンゴバンがどうであれ、私たちは本腰を入れてやるべきことをしました。製品を世に出し、10年ほど利用され続けています」

ソーラーシティは、この件についてコメントを控えている。

業界でソーラーシティのやり方にいら立ちを感じているのは、アレン氏だけではない。9月、カリフォルニア州サンノゼにあるソーラーパネルメーカー「サンパワー・コーポレーション」が、シングルのデザインを盗用したとしてソーラーシティを訴えた。訴状では、サンパワーは、後に合併したモジュールメーカーのソーラーシティと極秘の製図を共有したと述べている

また、マスク氏は他に4つの訴訟を抱えている。ソーラーシティの買収について株主への連帯義務に違反した疑いがかけれれている。多くの投資家は、この買収が財政問題を抱えているソーラーシティにとって救済措置になるのではないかと危惧している。また、テスラが大きな利益の見込まれる安価な電気自動車「モデル3」の事業から分離されるのではと心配している。「モデル3」には約40万件の予約注文が入っているが、新規予約注文の納車時期が2017年から2018年、またはそれ以降にずれ込んだ。

マスク氏はさらに、9月、個人所有の宇宙事業スタートアップ「スペースX」を通して火星に人間を送る計画を明らかにした。彼にはすべきことがたくさんある。

アレン氏は、ソーラールーフ事業はマスク氏が考えているよりも厳しいと話す。

「火星移住と比べることはできないかもしれないが、ソーラールーフ事業は彼が考えているよりも、はるかに難しいのです」

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

▼画像集が開きます

Close
テスラ「ソーラーシティ」など
/
シェア
ツイート
AD
この記事をシェア:
閉じる
現在のスライド

(スライドショーが見られない方はこちらへ)

関連記事

テスラが太陽光発電ベンチャーを買収へ、イーロン・マスク氏の野望は「21世紀型のエネルギー帝国」



2015-04-13-1428914872-4591641-gengo.png