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大統領選前夜、かつてない緊張に包まれるアメリカ、ジョン・ボンジョヴィも登場

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CLINTON
Carlos Barria / Reuters
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【アメリカ・オクラホマ州タルサより、ジャーナリスト津山恵子氏がレポート】

「やきもきしないで。まだやることがある」
「最後のチャンスだ」
「あと60時間で何ができるのか」

といったメールが、クリントン民主党候補陣営から、トランプ共和党候補陣営から、毎時のように飛び込んでくる。こんなに緊張を感じる大統領選挙前の週末は、過去になかったのではないだろうか。

さらに、これでもかという速報を、米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コミー長官が発した。10月28日、捜査を再開することを表明したクリントン国務長官時代の私用メールサーバー問題で、新たな証拠は見つからなかったと、11月6日、連邦議会に報告した。捜査再開は、クリントンの支持率急落を招いた「爆弾」だったが、その疑いの霧を晴らしたことになる。

しかし、そのダメージで、選挙の見通しがますます不透明になった。世論調査の分析サイト「538(ファイブ・サーティエイト)」によると、10月中旬、88.1%だったクリントンの勝率は、11月6日現在、64.7%にまで低下した。ニューヨーク・タイムズが割り出している、複数の世論調査の平均は6日現在、クリントンの支持率が45.3%、トランプが43.0%と、2ポイントの差しかなく、誤差の範囲内だ。

週末は生放送をしないテレビも、週末が終わる日曜日午後4時過ぎ(米東部時間)、中西部オハイオ州クリーブランドで開かれているヒラリー・クリントン民主党候補の集会を中継。なんと、最も影響力があるアスリートといわれるバスケットボール選手のルブロン・ジェイムズが、舞台でマイクを握り、クリントンを紹介している。金曜日の夜は、ビヨンセのダンサーが、クリントンのために、ブルー(民主党の色)のパンツで舞台で踊った。

1時間前に来たクリントン陣営からのメールは、月曜日、投票日11月8日の前夜についてのプレスリリースだ。オバマ大統領とミシェル夫人、ビル・クリントン元大統領と娘チェルシーに、ブルース・スプリングスティーン、ジョン・ボンジョヴィが加わって、有権者に投票を呼びかけるというプレスリリースが入ってきた。舞台は、ペンシルベニア州フィラデルフィアにある「独立記念館」で、米国の独立宣言と合衆国憲法の誕生の舞台であり、建国の象徴だ。

その場所の選定と、オバマ大統領の選挙にも一役買ったジョン・ボンジョヴィの起用といい、格式ある大統領選挙の「締めくくり」を感じさせる。

一方、トランプは集会で、FBIの発表をこう非難した。

「ねじ曲げられたシステムだ。ヒラリーは、守られているんだ」

トランプを強力に指示してきた共和党の重鎮で、元下院議長のニュート・ギングリッチも、こうツイートした。

「コミー(FBI長官)は、とてつもない政治的プレッシャーに降参したに違いない。彼が知るはずもないことについて、こんな形で発表できるはずがない」

このツイートは、トランプ支持者の気持ちをよく代弁している。トランプは選挙戦中、女性に対するセクハラ・スキャンダルが浮上しても、「嘘だ」とはねつけた。雇用や賃金問題などをどうやって解決するのかと討論会などで聞かれても、「クリントンが30年政界にいながら、何も、何も、してこなかったから、米国はこうなったんだ」と、すべてライバルのせいにしてきた。

こうした思考方法が、トランプを支持する有権者にも染み付いている。

投票日前の最後の1週間、保守的な有権者が多い中西部オクラホマ州、激戦州のアリゾナ州などを、ロードトリップで駆け抜けた。

そこで、トランプ支持者が読んでいる保守系情報サイト「ブライトバート」を読んで、背筋が寒くなった。選挙の終盤は、新しい情報はほとんどなく、上の方に並ぶ記事は、クリントン夫妻の腐敗を書いた批判ばかりだ。

同様に、トランプ支持者が聴いているアレックス・ジョーンズのラジオも聴いてみた。こちらは、もっと気持ちが悪くなった。FBIが10月28日から捜査を始めた新たなメールの中に、クリントン夫妻が、カルトの儀式に参加した、人身売買を行ったという証拠があったというニュースを毎時、流している。

MSNBCのニュースに出演したトランプスポークスウーマンのケリーアン・コンウェイが、こう話している。

「クリントン陣営が言うことは、嘘に、嘘、嘘を積み重ねている」

トランプは月曜日、計5つの激戦州を精力的に回り、最後の集会は、ミシガン州グランド・ラピズで行われる予定だ。おそらく「嘘だ」「ねじ曲げられている」と言い続けるのだろう。

米国民主主義の発祥の地フィラデルフィアを、最後の集会の地に選び、米市民としての義務と統一を訴えるクリントン集会。激戦州の地を1日に5回も回って、地方の支持者に「怒り」を植え付けていくトランプ集会。かけ離れたスタイルのどちらが勝利するのか、不安な投開票日の火曜日が迫っている。

筆者・津山恵子

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ニューヨーク在住。ハイテクやメディアを中心に、米国や世界での動きを幅広く執筆。「アエラ」にて、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOを単独インタビュー。元共同通信社記者。

【参考記事】「ヒラリーは罪人だ」"嫌われ者"クリントン、私用メール問題の捜査再開で一転逆風に
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