Huffpost Japan

「もう大統領いらねえや!」ダニエル・カールの3分でわかるアメリカ大統領選

投稿日: 更新:
印刷

アメリカ大統領選の投開票日が、いよいよ11月8日(現地)に迫ってきた。共和党候補のドナルド・トランプ氏と民主党候補ヒラリー・クリントン氏の間で政策そっちのけで低レベルな中傷合戦に終始、「史上最低」の大統領選とも呼ばれている。

そんな大統領選を、日本在住35年のマルチタレント、ダニエル・カールさん(56)は冷ややかな目で見ている。アメリカと日本をこよなく愛するダニエルさんにしても、今回は「あまりにひどい」と嘆く。

なぜ大統領選はここまで混乱してしまったのか。そしてアメリカと日本の関係は変わってしまうのか。ダニエルさんが今回の大統領選をメッタ斬りする。

■「ドロッドロの選挙。面白くもなんともねえんだ」

――1人の有権者として、今回の大統領選をどう思われていますか? 討論会や演説を聞いていると、「子供のケンカ」のようにしか聞こえないのですが……。

アメリカ人として今回の選挙は、はっきり言って恥ずかしい。オラが見てきた中で一番汚い、ドロッドロの選挙なんだな。オラこういうの嫌いなんだよ。面白くもなんともねえんだ。

トランプ氏は発言が子供ですよ。具体的政策は言わずに相手の悪口を言い続けてる。なぜかそれが彼の支持者にウケてた。「もっとやれ!」って囃し立てられているからトランプ氏もエスカレートする。

donald trump

もともと政治家ではないから、「新しい風が吹いてきたな」っていう新鮮さがあって面白かった。それでいて口達者で話が面白い。タレントさんやっていたからね。タレントさんは人が面白がることを理解している。だから発言が具体的だとか、答えになっているかどうかとか別にして、ノリのいい、サウンドバイト(短いキャッチフレーズ)になりやすい言葉をポーンと言うのが得意なんですよね。この人、タレント性はあるんだけれども、政治家としての芯があるかどうかはっきりしねえんですよ。

にもかかわらず、支持率はある程度伸びている。オラも今までいろんな大統領選を見てきたけど、本来は候補者同士で議論しながら目指す政治に近づくはずなのに、お互いに泥団子を投げつけるような闘いになってるんですよ。

クリントン氏は元々議論に慣れていたはず。旦那さんも大統領だったしね。周りの友達も政治のことをよくわかっているから、普通の政治家の議論はできるはずなんだけども、相手が悪口ばっかり言っていると、仕方がなく自分も言うようになっちゃったし、足を引っ張って、けなすようになっちゃった。トランプ氏が子供みたいにケンカをふっかけてきたからこうなったんでしょうね。クリントン氏がこんなザマになることはなかったでしょう。

hillary clinton

■ 「どっちが勝っても喜ばねえよな。究極の選択だからな」

――ダニエルさんは一貫して共和党を支持しています。それがなぜ、今回はトランプ氏を支持できないのでしょうか。

オラが大学生の時に選挙権をもらったときは、大統領が民主党のカーターだったんです。ところがウォーターゲート事件の後だったもんだから政治も経済もボロボロで、アメリカ国民が「アメリカってダメだな」と自信を失っていたんだね。ほんとアメリカ全体ががっかりしていた。その次の大統領選挙で、共和党からロナルド・レーガンが出てきた。政治家としての経験も豊富だったし、俳優だったからトークもうまい。

ronald reagan
ロナルド・レーガン元大統領

最初は「どうかなあ」と思っていた人も多かったんだけれども、レーガンの一番良かったところは、ポジティブシンキングだったことなんですね。いろいろあんだけど、アメリカはボロボロじゃない、アメリカは偉大な国だ、力もポテンシャルもあるんだから一緒に活かしていこうぜ、って国民を励ましながら、落ち込んだ気分を引き揚げてくれたんだな。アメリカ人としてのプライドを蘇らせてくれた。これが共和党のトップの理想的な姿だと思って、オラはずっと共和党を応援してたんです。

その後、パパブッシュになった。彼も明るいし、尊敬できるタイプだった。そしてビル・クリントン。最初は嫌だなあと思ってたんだけれども、彼も結構国民を盛り上げるのが上手だった。だから彼の任期が終わる頃にはそんなに悪くなかったなと思えるようになった。次のブッシュは……イラク戦争とかあったり、政策的にも反対するところはいろいろありましたけど、彼も「アメリカは捨てたもんじゃない」っていう前向きな姿勢だったから支持できたんです。

で、今のオバマが大統領になった時、これも「どうかなあ」って思ったんですけれども、この人も演説がうまかった。だから、レーガン以来、共和党も民主党も関係なくずっとポジティブシンキングの大統領が続いていたことが共通点だったと思うんです。

ただねえ……今度の選挙はやばい。トランプ氏はネガティブなことばっかり言う。「アメリカは外国とか他の宗教のせいでこんなザマになってんだ。政治家のお偉いさんのせいでおかしくなってんだ。エスタブリッシュメントが腐っているんだ」って。そうするとだんだん気分が暗くなってくるし、アメリカ人同士でも疑心暗鬼になっちまった気がするんですよ。

それに対してクリントン氏が「そうでもないよ」とか前向きなことを言おうとしてるんだけれども、あんまりにもトランプ氏に勢いがあるから何かネガティブになっちまう。だんだん変な選挙になってきているんですよね。これじゃどっちが勝っても喜ばねえよな。これが一番心配なんですよね。究極の選択だからな。

――ダニエルさんが考えるような、共和党の理念と相容れないトランプ氏なのに、それでも彼を支持する共和党員がいるのはなぜでしょう。

私が見る限り、共和党を支持する人も大きく2つに分かれているんですよ。1つは、これは共和党支持者に限らず民主党支持者にも言えることだと思うんですが、党に対するロイヤリティ(忠誠心)が強いから、党の候補者は応援せざるを得ない。で、もう一つは共和党支持者の多くが、クリントン氏が大嫌いっていうのがある。

共和党がダメになった原因の一つとして、7、8年くらい前からティーパーティーっていう保守派の市民団体が出てきたことがあるんですね。その時、お年寄りのベテラン共和党議員が追い出されて、絶対に民主党と妥協しない若い議員が入ってきちゃった。それ以来共和党は討論もしない、交渉もしない政党になっちまった。共和党議員も若いくせに上から目線なんだな。ちょっとファシストっぽいところが出てきている。オラみたいな中年は、そんなとんがった若い議員もいずれは丸くなって落ち着くんじゃねえかと思っていたんだけれども、あんまりにも若い議員が多くなっちゃって、共和党の中にいくつも派閥ができて好き勝手主張するもんだから、話し合いも何もないんです。

もう去年くらいからずっと共和党の予備選で争ってきていた。16人も候補いたのに、結局生き残っていたのが、あれ。「ハァ?何で?」と思いましたよ。

怖いのは、このままじゃ共和党が分裂すんじゃないかってことなんだ。そうすると民主党ばっかり強くなる。これからずーっと民主党の大統領になっちまったら……やっぱりね、いかん。そうしたらオラは日本人になるしかねえんだよな。

共和党は捨てたわけじゃないんですけれども、今回は支持できません。

photo

――トランプ氏もクリントン氏も、環太平洋経済連携協定(TPP)には反対していますし、安全保障面で公平な負担を求めるなど、日本に厳しい姿勢で臨むのではとみられています。日本在住のアメリカ人として、今後の日米関係に変化はあると思いますか。

トランプ氏は、当選するためにはどんなことでも言っていいと思っているでしょう。元々タレントだから、いい加減なことを言っても許されると思っている。クリントン氏は国務長官をやっていたから、そういうわけにはいけねえんですよ。ただ、トランプに負けないように彼女も日本には批判的なことを言っている。これも選挙のために言っていることで、彼女が当選すれば、日本との関係は心配ない。大事にされると思います。

でも、誰が大統領になろうが、国務省とかペンタゴン(国防総省)は米日関係が重要だってことは大統領以上にわかってるから、特に安全保障的なことについては彼らがアドバイスするでしょう。アメリカにとってアジアの友好国は日本と韓国。この友好関係を捨てたらアメリカのアジアでの立場はなくなるって、安全保障のお偉いさんはみんなわかっている。だからトランプが変なことをする前にアメリカ軍の人たちが出てきて「コラーッ!」と喝をいれるから、そんなに心配ない。

ハッタリをかます、ホラを吹くのは選挙ではよくあること。日本とアメリカは70年以上も友好関係が続いているんだから、そう簡単には壊すことはできないと思いますね。

■ 「トランプ氏のダメなところを3つ挙げろって? 足んねえよ!」

――クリントン氏のダメなところを3つ、トランプ氏のダメなところを3つ挙げてください。

クリントン氏はまず、以前からずっとイメージが悪いんです。旦那さんが大統領になったと思ったら、彼女を医療保険制度改革委員会の委員長にしちゃったんです。ヒラリーはその時政治家じゃなかったのに。いくら頭のいい奥さんだっつっても、選挙で選ばれていない人に政治を任せたのは、アメリカではまずいことなんです。それ以来、彼女にはアメリカの政治を乗っ取ろうというイメージがつきまとっている。その後は上院議員もやって国務長官もやっているけれども、私用メール使っていたりとか、とにかくイメージが良くない。

もう一つ、彼女は秘密主義で、隠すことが好き過ぎるんですよ。政治家としての経験が長いから、秘密が漏れるのを怖がるし、あとでスキャンダルにならないようにってとにかく内緒にする。そうすると国民の目から見ても「何か隠しているな」って疑心暗鬼になりますよね。そうするとますますイメージが悪くなる。

あとは何だべ……そう、これも実態がよくわからないんだけど、旦那さんと一緒につくったクリントン財団。これもイメージが良くないんだな。企業にプレッシャーかけて寄付集めているし、献金した人に便宜を図ったりとか、偉い人と会わせるから献金しろとか何か紹介サービスみたいなことやって、ガンガン儲かっている。どういう風に使っているのかも、秘密にしているからはっきりしていない。娘さんが財団の運営やってるんですよね。なんか一族経営みたいで、ますますイメージ悪くなるんですよ。

clinton foundation chelsea bill
ビル・クリントン元大統領とチェルシー・クリントン氏

クリントン氏の問題って、ほとんどイメージ的なものなんです。信用しがたいし、胡散臭い。

トランプ氏のダメなところを3つ? えっ、3つだけ? 足んねえよ! 足んねえんだよ、全然。

まずね、彼は坊っちゃんで、商売のセンスがない。自分が会社作って大成功してるって自慢してるけど、あれはすべて父ちゃんのおかげ。不動産王とか言ってるけど、父ちゃんのほうがもっと不動産王だった。金持ちなのは間違いないけど、何回破産してるんだよ。4回か。借金だらけだし。

2つ目は、外交センスがない。商売でいろんな国に行って交渉しているんだけど、相手の国の文化とか人を尊敬してないんですよ。なんかニューヨーカーの交渉術みたいなんだな。そういう態度を英語で「In your face!」(思い知ったか!)って言うんだけど、勝ち誇ったような態度なんです。「ふーん」って人を見下してるというか。そういうニューヨーカーと、オラみたいなカリフォルニアの人間は息が合わないんですよ。同じアメリカ人でもニューヨーカーの態度って「いやー、こいつ強がってるな」って思っちゃう。

ビジネスマンとしてはそういう態度のほうがいいという人もいるけど、それがすべてじゃないんだな。

3つ目はな……英語があんまりうまくないんだ。はっきり言って。トランプ氏の発言いろいろ聞いてるんだけれども、文法的なミスが多い。オラ英語の先生やってたから分かるんだよな。「ハア? 動詞と名詞が合ってないやないか。複数と単数の違いとか分かってねえな!」って。おそらく小学校の成績が悪かったんだろうな。坊っちゃんだから。

「Make America Great Again!」(アメリカを再び偉大な国に!)って、それだけはちゃんと言っている。

photo

この人はビジネスセンスもない、外交センスもない、英語も下手。どないしよ。これはアメリカの大統領になっちゃいけねえ人なんですよ。笑ってしまうほど大統領の資格がない。

――投票日を、どのような心境で迎えますか。

いやあ…今回の選挙は最悪でしょ。もうやり直し! 一回白紙に戻して! それかもう一つの案として、オバマをもう1期延ばしてもらえねえかなって。こんな最悪な状況だったら、オバマはそんなに悪くない。政策的にオラが賛成するところはそんなにないんだけれども、この2人に比べたら天使みたいなもんだ。でも今さら遅いか。ハァ……。

それともこれから4年間大統領なしでやっていこうか。そんだったらまだ面白いかもしんねえ。どうなるかわからないけれども。議員同士でガーッとやりあえばいいかもしんねえな。

もう大統領いらねえや! 今回はどっちもダメだ。ろくなのがいねえんだよ。……困ったな。

ダニエル・カール

1960年、アメリカ・カリフォルニア州モンロビア市生まれ。高校時代に交換留学生として奈良県に1年間在住。大学卒業後、日本に戻り英語指導助手として山形県に赴任し、3年間英語教育に従事した。その後上京し、セールスマンを経て翻訳会社を設立。山形弁を駆使してドラマ、司会、コメンテーターとして活躍するマルチタレント。

▼画像集が開きます

Close
アメリカ大統領選2016
/
シェア
ツイート
AD
この記事をシェア:
閉じる
現在のスライド

(スライドショーが見られない方はこちらへ)関連記事アメリカ大統領選もあとわずか 前代未聞だらけのレースを振り返る(画像集)