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ドナルド・トランプ氏の13歳少女レイプ疑惑、メディアが報じなかった理由

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FacebookやTwitterをやっている人なら、この数カ月間で、1994年にドナルド・トランプ氏が13歳の少女をレイプしたとして告訴され、裁判が進んでいたことはご存知だろう。

被害女性は匿名のまま、2日に新しい弁護士リサ・ブルーム氏同席のもと記者会見を開く予定だった。ブルーム氏は同じく弁護士のグローリア・アラリド氏の娘だ。ブルーム氏は2015年の夏、この訴訟についてハフポストUS版にブログを書いた。

速報:未成年に対するレイプでドナルド・トランプ氏を訴えた女性が今日沈黙を破る。

しかし、会見は開かれなかった。被害女性がいくつもの脅迫を受けたからだという。「彼女は今、恐怖におののきながら暮らしています」と、ブルーム氏は会見キャンセルの理由を語った。

この数カ月、人々はなぜマスコミがもっと、というよりほとんどこの訴訟に関心を持たないのか疑問を抱いている。トランプ氏が12月16日の公判で判事から状況確認される日が間近に迫っているにもかかわらずだ。

この疑惑はまったく信憑性がないとは言えない。原告はパーティでトランプ氏から何度もレイプされたと述べている。このパーティは、すでに有罪判決が出ている小児性愛者で、若い女性や少女との乱交パーティを開くことで有名なジェフリー・エプスタインが開催したものだ。エプスタインは2008年に未成年の少女を売春させて有罪判決を受け、懲役18年を言い渡されたが、服役したのはそのほんの一部の期間だった。

アメリカの週刊誌『ニューヨーク・マガジン』によるエプスタインの特集記事は、彼が服役する前、そしてトランプ氏が大統領に立候補するよりもはるか前に掲載されたものだ。この中でトランプ氏は、エプスタインを知っていると認めていた。トランプ氏は記事の中でこう述べている。「ジェフとは15年前からの知り合いだ。すごくいいやつだよ。彼と一緒にいるとすごく楽しい。俺と同じくらいきれいな女性が好きで、その多くは若い子らしい。間違いなくジェフリーは社交生活を楽しんでいる」

トランプ氏に対する訴訟には、事件を目撃したという2人の匿名女性の宣誓供述書が含まれている。しかしこの件についてはほとんど報道されていない。あまり報道していないメディアの1つとして言えることは、報道を避けた理由が主に2つあるということだ。

1. 原告の女性が匿名。

この事件の原告は匿名であり、ニューヨークでの提訴には仮名が使われた。カリフォルニアでの前回の訴訟では「ケイティ・ジョンソン」という名前が使用された。児童性的虐待で誰かを書面で告発するということは、一歩間違えれば逆に訴えられかねない、重大なことだ。匿名の原告による告発は異例のことで、取材する記者の信用にも関わってくる。

両陣営について報道している全国紙のベテラン記者によると、匿名だということが大きな障害だと述べた。「もしそれが候補者にダメージを与えるようなものなら、よく気を付けた方がいい。彼女は匿名だからだ」と記者は述べ、匿名の原告に告訴決断に至るまでの過程を包み隠さず話すよう求めた。「もし彼女が公の場に出てインタビューに応じれば話は別だ。でも彼女は匿名の原告だ」

匿名の情報源を元に報道を行えば、原告が主張する内容の信憑性に対する責任は記者に降りかかる。名前を公表している人なら、記者はその人の発言を報道しているだけだと主張できる。原告の発言を信じるかどうかは読者の自由だ。しかし匿名の人物が世間に対して何かを語る場合は別だ。つまり、私がジャーナリストとしてこの人物や事件について調査し、名前を出さずに記事を掲載するには十分な証拠が必要となる。特にローリング・ストーン誌の失敗(匿名女性の嘘の主張を検証せずにそのまま報じた事件)からも分かるように、情報源には信頼のおける証拠が多く必要になる。

訴訟が起こされた経緯からは、こうした信頼性が感じられなかった。

2. 原告側の支持者に対するメディアからの評判が悪い。

メディアにこの事件について関心を持たせようとする中心的人物の1人スティーブ・バー氏は遠慮なくものを言う共和党の献金者だ。バー氏は最近、ケビン・マッカーシー氏(共和党、カリフォルニア州選出)とレニー・エルマーズ(共和党、ノースカロライナ州選出)の不倫疑惑を暴露し、マッカーシー氏の下院議長への就任を阻止したことでニュースになった。バー氏のスタイルは大勢の有力者に大量のCC、BCCを付けて送るというもので、そのせいで通常、彼の話を真面目に聞く者はほとんどいない。

例えば10月31日の夜、私はバー氏にメールを送り、メディアが児童性的虐待の記事を取り上げない理由について書くつもりだと伝えると、彼は大勢のメディア関係者と共にワシントン・ポストのマーティ・バロン編集長をCCに入れて返信してきた。

それでもバー氏は、原告の支援者の中では比較的信頼できる人物だ。

原告は当初、カリフォルニア州で代理人を付けず自力で裁判を起こしたが、明確な人権侵害は認められないと棄却された。そして今回はトーマス・ミーガー弁護士を代理人として、再びニューヨークで訴訟を起こした。ミーガー氏はそれほど信憑性のある証拠を提示していない(彼にコメントを求めたが応じなかった)。

最も信頼が置けない支持者は「アル・テイラー」と名乗っている男だ。彼はテレビ番組『ザ・ジェリー・スプリンガー・ショー』の元プロデューサーのノーム・ルボーという男とされている。

被害を訴えた女性と連絡を取ろうと試みたメディアは非常に苦労した。 ニュースサイト「デイリー・ビースト」は7月に裁判と原告を支持する人を特集したが、結果は衝撃的だった。デイリー・ビーストのブランディ・ザドロズニー記者は「トランプ氏の支持率が下がるどころか、ケイティ・ジョンソン氏と支持者の方が悪印象だった」と述べた。

ガーディアン紙と女性向けサイト「イザベル」も現状を調査したが、同じように原告側を好ましく思わないという見方が多かった。 被害を訴えた女性と実際に話したというある記者は、疑惑をどう判断すべきか困惑したという。この件で挙げられている二人の目撃者、ティファニー・ドウやジョアン・ドウと直接話すことができた者がいるのかどうかも、定かではない。「イザベル、ガーディアン紙、デイリー・ビーストはケイティの信憑性を著しく下げています」と、バー氏は悔しそうにハフポストUS版に語った。

もしもまだ、この件があまり報道されない理由にピンとこないのなら、少しの間自分が記者になったつもりで、数週間この件について調査することを想像してみてほしい。それからデイリー・ビーストの記事を読んでみよう。それでもまだ敢えてリスクに飛び込む覚悟があるだろうか?

しかし公判日が近づくにつれ、トランプ氏が自ら複数の女性に性的暴行を加えたことを認めたこともあり、この件を無視し続けることは難しくなってきている。バー氏は、2つのメディアが最近被害を訴えた女性を取材し、近く記事が公表されて話題になるだろうと述べた。

ワシントンポスト紙のメディアレポーター、エリック・ウェンプル記者は、この話題を取り上げないという自分たちの決断に関してはあまり多くのジャーナリストと話していないと述べた。「すべてを報道することはできません。春頃、ワシントン・ポストは24人の記者にトランプ氏関連の取材を割り当てたことでバッシングにあっていました。私はそれでもまだ充分な取材体制とは言えないのではなかろうかとコラムに書きました。結果、充分ではなかったと明らかになったわけです」

このニュースを広めたのが主にFacebookだったということで、同じようにメディアのほとんどに無視されたこれまでのニュースに比べると、ある意味では既存メディアの無関心もそれほど不都合にはなっていない。オープン・プラットフォームもこの記事を広めるのに一役買っている。ブルーム氏がハフポストUS版のブログに掲載した記事はFacebookで14万回シェアされ、記事自体は6月以来522万1475回閲覧されている。

2日にブルーム氏が記者会見を開けば、すべてが変わる可能性もあったが、実現しなかった。5日、原告の女性は告訴を取り下げた。

ジェーン・ドウ(匿名の女性の呼び名)から、トランプ氏とエプスタイン氏への告訴を取り下げるよう要請がありました。彼女にとって辛い週でした。彼女の幸福を祈ります。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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