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「人工知能と僕ら作曲家は競うことになる」X JAPANのYOSHIKIが語る音楽の未来

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ロックバンド「X JAPAN」のリーダー、YOSHIKIは海外公演や、着物のプロデュースを通して、世界の音楽マーケットで存在感を高めている。様々な活動のプロモーションにSNSを積極的に活用し、政治家やシリコンバレーの起業家とも交流が深い。YOSHIKIは自身と音楽の未来をどう描いているのだろうか。ハフポスト日本版が単独インタビューで、話を聞いた。

――音楽で世界進出するだけでなく、着物ブランド「YOSHIKIMONO」で海外に日本の文化を発信しているのはなぜですか。

海外に住んで20年以上経つんですが、やはり海外に居れば居るほど、日本の文化の大切さ、素晴らしさというのを実感するようになりまして。伝統的な日本の文化を海外に紹介できればなと。

僕は呉服屋の長男に生まれたのですが、着物の業界も今の時代、縮小してきていますよね。どうやって今の人たちに着物に興味を持ってもらうか。僕の手法は賛否両論あると思うけど、興味を持ってもらうという意味ではいいんじゃないかな。昨年もやって(デザインやファッションショーでのドラムパフォーマンスの演出などに)いろんな意見をいただいたけど、海外の方からはすごく絶賛されたからいいかなと思っています。

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YOSHIKIさんがデザインした着物ブランド「YOSHIKIMONO」の春夏コレクション。(東京・渋谷で2016年10月17日撮影)

そして、「ヴィジュアル系」の音楽というのはやはり、ある種日本で生まれた、西洋と東洋が絶妙に合体した文化だと思うんですけど、それも日本独自の文化として海外に発信していきたいなと思っています。

――10月16日まで3日間、「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」(VJS2016)も開催されましたね。「ヴィジュアル系」の概念が約30年ほど前から広がったと思いますが、今の日本の音楽シーンの中でどういうポジションにあると思われますか?

僕は元々クラシック音楽をやっているんですが、クラシックはいかにモーツァルトに近づくか、ショパンに近づくか、ショパンが何を考えてっていうのを考えて演奏する世界だと思うんですね。「ロック」は、基本的には西洋から始まって、イギリスとか、ドイツから始まった音楽です。

日本で生まれたロックというのは、僕が音楽を始めた初期の頃、先輩たちはいかに西洋のロックに近づくかというスタイルでやってきたものでした。それは決して悪いわけではないんですけれど、僕はちょうど時代的にすべてが、ロックもパンクもPOPミュージックも日本のアニメーションの音楽も自分の中に入ってきた時代で、4歳でクラシックから入った僕も「ロックって何?」と考えました。

僕は小さい頃に父親が自殺してるんですよ。その時に、「ロック」っていうのに偶然出会いまして、自分の怒りなり悲しみなりをぶつける場を見つけたわけです。だから入り方がちょっと違ったんですね。

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X JAPANのパフォーマンス 写真提供:VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten

入り口はKISSだったんですけど、それからLed ZeppelinとかDavid BowieとかSex Pistolsとか、そういうものがどんどん日本に入ってきまして。「あ、なんか自由なんだ」という気持ちを持ちました。で、パンクも全部混ぜてしまったんですね。

気づいたら、海外に近づくというよりは、自分たちの音楽を作っているという感覚なんだと思うんですよ。それが、最終的に今の形になったと思います。

「ヴィジュアル系」というのは、当時はその言葉もまだなかったんですけど、居場所がない。「激しい音楽をするんであれば、なぜメイクをするんだろう?」と疑問を持つ方たちもいて、「(メイクを)落とした方がいい」とか、「アーミールックでやったほうがいい」とか、いろんなことを言われたんですけど、よく分からない。ロックって自由なものじゃないのかと。

そういうものを正していった時に、もうどこのジャンルに属さなくてもいいという。まさか自分たちのジャンルを確立するとは思っていなかったですけど、思った道を進もうと思って始めたら、どんどんシーンが広がってきまして。それはファンの方たちだけでなく、バンドの方たちも集まってきてくれてこのシーンができたという。

着物もヴィジュアル系もそうですけど、その文化を世界に広められないかなと思って。

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YOSHIKIさんがデザインした着物ブランド「YOSHIKIMONO」の春夏コレクション。(東京・渋谷で2016年10月17日撮影)

――「ヴィジュアル系」という言葉は、かつては場合によっては蔑む言葉として使われていました。例えばL'Arc~en~Cielさんは意識的に使っていなかったと記憶しています。いま、言葉のイメージは変わってきていますか?

そうですね。例えば海外で、日本で言う「オタク」という言葉も広まっています。その「オタク」という言葉がカッコいいか、カッコ悪いか、それは人によって違うと思うんです。

僕なんかからすると「オタク」という言葉はけっこう好きなんですね。なぜかと言うと、そこまで入れ込んでいるわけだから、物事に。海外でも同じように「オタク」という言葉が、かっこいいものとして捉えられている部分もある。

「ヴィジュアル系」というものに対しても、最初は1つの概念を持っていたと思うんです。どんなジャンルもそうですが、ヴィジュアル系の中からカッコいい奴が出てきて「ヴィジュアル系」と名乗るならば、カッコよくもなっていく。ちょっとヴィジュアル系を聞きたくない、という時代、いろんな時代があったと思うんですけど。

今はまたその中間地点に来てると思うんで、これからヴィジュアル系がカッコよくなるか、カッコよくならないかは、僕たち含め今のミュージシャンの皆にかかっている。

――ToshlさんもMCでヴィジュアル系という言葉を使いますね。

僕なんかどこを取ってもヴィジュアル系でしょ、金太郎飴じゃないですけど。

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X JAPANのパフォーマンス 写真提供:VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten

――YOSHIKIさんはゴールデングローブ賞のテーマを作曲されるなど、海外でも存在感を示されたと思います。どうして日本のアーティストにとって、海外、主にアメリカへの進出が難しかったんだと思いますか?

数十年前ですかね、坂本九さんのことはすごくみんな言いますけどね。まず1つ、彼の場合は英語ではなかったでしょうけど、素晴らしいメロディだと。

やはり言葉の壁というのはあると思いますね。僕も向こうに行ってから死ぬほど勉強したんですが、やはり世界中を回っていると、一番日本の方の英語が通じにくいという現状はあります。

ただ、英語みたいな言語というのは勉強しちゃえばすぐにできるものなので、それに関してはそんなに大きな問題ではないと思うんですけど、やはり、例えば音楽の世界で言いますと、日本の市場で閉じてしまっていたんですね、今まで。例えば、K-POPは今すごい勢いで世界に上がってきていますけど。たぶん、国内だけだと成り立たないという、ビジネスとしての側面があると思います。

――危機感があって。

はい。それを海外に行くことによって、広げることによってビジネスが成り立ってきているという、同じ現象が日本でもこれから起こってくると思うんですよ。人口もどんどん減ってきますし。そういう意味で、これからは逆にそういうふうになるんじゃないかと。

今まで、やはり僕なんかが海外に進出した時というのは、日本にいたほうが、居心地がよかった。あのときもメンバー全員で進出はしたんですけど、休みがあると皆戻ってしまって。それが別に悪いことじゃないんですけど。海外にいて戦い続けなきゃいけない理由があまりなかったというのはあるかもしれないですね。

――韓国などは人口が少ないので、危機感に早く気付いて、海外進出のためのマーケティングを熱心にしましたよね。日本はやはり少し遅れていた面があるんでしょうか?

以前から企業はどんどん出てきていますけどね。ただやはり、特に芸術に関しては、国の中で成り立っていたというのが大きかったのもあるかもしれませんね。

――もう1つは、今、例えばYouTubeで“X JAPAN”と検索したらタダで音楽が聴けてしまう時代ですよね。あるいはSpotifyなどの新しいサービスが出てくるときに、音楽というのはビジネスとして今後どういう風になると思われますか?

とても興味深い質問なんですが、おっしゃる通りで、著作権ビジネスと言っていいんですが、著作権とか確立されて、そこから音楽にして収入を得るというのはまだ始まって60年程度なんです。

200年前、例えば、クラッシックの作曲家がやっている時代というのは、もちろんそんなのないですし。だから何百年という大きなタームで見た場合に、それをどう捉えるかということだと思うんですけど、場合によると、アルバムを購入して聴く時代から、音楽をダウンロードする時代を経てストリーミングが主流になってきているわけですよね。

それは本当にこの数十年という短いタームの中で起きているもので、じゃあ100年後はどうなっているかというと。そこを考えた時に、今どのポジションにするかということの、答えを僕は持っていないんですが、要するに、音楽を作る、作ってそれが皆さんに届く、その過程ってどこでそれをビジネスにするかということなので、それがコンサートビジネスに繋がればいいのかもしれない、それがマーチャンダイズになればいいのかもしれない。

僕がこういうことを言うと賛否両論が生まれてしまうと思うんですけど、音楽そのものを売っていく、そこから退いていかなければいけないのか?というのをまず考えないといけない。本当に、ストリーミング自体がダウンロードよりも収支が合わない、何百万ストリーミングがあってもこれだけの収入にしかならない、さらにその前のCDとかのセールスも全然合わないということなら。

どうやってこれから音楽業界をサバイブしていくかというのは、僕はシリコンバレーに友達が多いんですが、これから彼らと音楽業界がどういうシステムを作っていくかによるんじゃないかと僕は思っているんです。

――一方でポジティブな面もあると思っています。例えばX JAPANさんがお休みしてる間、当時を知らなかった世代の方は気軽にネットやスマホを通して、音楽に触れられた。ただその分、ビジネスが今のところ成り立っていないという難しい問題があります。

僕的にはそれはすごくあると思っていまして。ちょうど僕なんかは、X JAPANが解散して復活するまでに10年間ありました。その休んでいた10年間でX JAPANの音楽が世界的に広まったわけですよ。気づいたら世界ツアーができるようになっていたという。

それはインターネットが貢献してくれた賜物なんですよ。だからコンサートでもこれだけお客さんを動員できるというのもありまして。本当にそこは重要なことだと思っているんです。だから、なんでもかんでもそこに課金、課金と考えるのは……とも思っています、本当に。

――最近はニコニコ動画のチャンネルでプロモーション活動をされていたり、ネット配信ですとか、そういうところに力を入れて取り組まれていますね。

そうですね。最近僕はいろいろなことをやっていまして。今、「We Are X」というX JAPANのドキュメンタリー映画のプロモーションを世界各国でやらせていただきまして。映画祭も多分決まっているだけで20以上の各国の映画祭にセレクトしていただいているんですけど。それで海外にまた長く行くことになっています。


「We Are X」のトレイラー映像

そうでありながら、ソーシャルメディアと言いますか、ニコニコ動画で「YOSHIKI CHANNEL」というのもやらせていただいています。たぶん、ニコ動の中では僕は珍しいと思うんですけど、海外にいても、LAなりどこなりから中継をしているんです。やはりリアルタイムでファンの方たちに伝えられるというのがいいですね。

――YOSHIKIさんは新経済連盟のサミットにも登壇されていますね。2015年のお話で大変印象的だったのが人工知能に言及されたことでした。「人工知能と音楽」というテーマで、どんなことを今お考えですか?

危機感を持たなければいけないと思います。大きな流れで行くと、人工知能は人力を弄すみたいなことまで話してるじゃないですか、イーロン・マスク(テスラ・モーターズCEO)とかね。それはそれで多分、僕の想像を超えたところにあると思う。

ただ僕の専門の音楽のジャンルで言わせてもらいますと、例えば今だと、チェスとか将棋とか囲碁とか人工知能が勝っていくじゃないですか。基本的に音楽というのは計算なんですね。五線譜に音符がありまして、その組み合わせで音楽ができているわけですよ。じゃあ過去の素晴らしいヒット曲をすべて入れました、データとして。そうしたら必ずヒットする曲というのは出てくると思います。

たぶん人工知能の作曲家と僕ら作曲家が競い合う日というのは、もう目の前に来ていると思いますよ。必ずその時代は来ると思うんですよ。

じゃあ僕らは何を勝ることができるのか?そうした場合、パフォーマンスでもあると思うんですよね。音楽って聴くだけじゃない、体感するものだし視覚的な要素も入ってくる。それも考えていますけど、音楽だけでもどうすれば人工知能に負けないものができるのか、または共存できないかということを考えてはいますけどね。

――いつ頃にそういう時代が来るんでしょうか?

もうあと10年とかそういう感じじゃないですかね。

――私がいるメディアの業界でも、今人工知能がもう記事を書ける時代になってまして。

弁護士とかもそうなると言いますね。

――そうですね。裁判官の判決とかも、人工知能の方が速いかもしれないと言いますね。その場合、やはり音楽家の方はライブというのがあるのが大きいのでは。

それは大きいですね。なかなか、そこまでは再現できないでしょうね。

――アメリカでは大統領選に関しても、著名なアーティストや俳優が盛んに発言されました。一方で日本のアーティストの方はそうではない。その違いについてどのようにお考えでしょうか?

そうですね。今は大統領選の話題で持ち切りですね。レコーディングスタジオに行ってもその話ばっかりですもんね。それだけ皆さん、興味を持っていらっしゃるんでしょうね。

日本も今後はそういうふうに変わって行くんじゃないでしょうか。

――YOSHIKIさんはチャリティ活動も含めて、海外の著名人の生き方に近いと感じています。

そうですね。ロサンゼルスに住んで長いのですが、けっこう皆さんチャリティには積極的に関わっていまして、僕も自然とその流れで始めてしまったんですけど。自分自身、子どもの時に父親を亡くしているということがあって、痛みを持った子どもたちに何かできないかということを常に考えてはいたんですけど。

海外でコンサートに回っている時には、香港で、孤児の子たちを招待したりしました。あとは、阪神大震災(1995年)の時に、壊れてしまった学校のピアノを寄付したことがあるんですけれど、そういうことをやっていくうちに、じゃあこれからもコンスタントにやっていこうということで「Yoshiki Foundation America」(米国非営利公益法人501c)というものを立ち上げました。友達の海外のセレブの方にも協力していただいたり、その逆もあったりします。チャリティしていることによって、ある種自分も救われることがあるという感じですね。

――VJS2016で、HIDE さんやTAIJIさんの楽器を使用したり、メンバー紹介でも2人の映像を流したりされていましたね。彼らはどんな存在なのでしょうか。

もう素晴らしいアーティストでした。彼らがいなければ今の僕は絶対にないですし。そして、彼らの夢だったのが海外進出でした。TAIJIもHIDEも常に「いつかは海外に行きたい」と言っていましたね。

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hide with Spread Beaverのパフォーマンス 写真提供:VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten

今、彼らはいなくなってしまいましたけど、心の中には生きている。今、一緒に海外に向かって行こうと。僕らが頑張れば頑張るほど、彼らの偉大さというのは世界に伝わっていきますので。それは僕も命ある限り頑張りたいと思います。

▼YOSHIKIプロフィール

作曲家、ドラマー、クラシックピアニスト。X JAPANは、アルバム・シングル合計売り上げ3000万枚。

1999年に作曲した天皇陛下在位10年記念式典のピアノ・コンチェルトで演奏。2005年には「愛知万博」公式ソングを作曲。ビートルズのプロデューサーとして有名な故サー・ジョージ・マーティンとの共同プロデュース・アレンジによるクラシック・アルバムを、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でレコーディングした 。

2010年、米国に非営利団体501c YOSHIKI FOUNDATION AMERICAを設立、様々なチャリティ団体への寄付に加えて東日本大震災の被災者の支援も続けている。2012年には、ゴールデングローブ賞のオフィシャルテーマ曲を作曲。2014年にはソロピアニストとしてYOSHIKI CLASSICALツアーを開催、4年ぶりのアメリカ公演をマディソンスクエアガーデンで成功させた。

外務省が日本文化の発信施設として米・ロサンゼルスに2017年オープン予定の「ジャパンハウス」アドバイザーに就任。2016年11月「CLASSIC ROCK AWARDS」にて「ASIAN ICON AWARD」を受賞。

2016年12月には大阪・東京・香港でYOSHIKI CLASSICAL SPECIAL WORLD TOUR 第2弾の公演が予定されている。X JAPANは、2017年3月4日に英・ウェンブリーアリーナで公演を開催する。

【訂正】当初のプロフィール部分の原稿で「クラシック・アルバムを、ロンドン交響楽団の演奏でレコーディングした」とあった部分は「クラシック・アルバムを、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で」の誤りでした。訂正いたします。(2016/11/16)

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