Huffpost Japan

変革に必要なリーダーは、どうしたら生まれるのか。これからのダイバーシティを考えよう

投稿日: 更新:
CHANGEWAVE
Changewave | changewave
印刷

これからのダイバーシティや変革に必要なリーダーを考えるイベント「WhyDiversity2〜変革リーダーは、何処から生まれるか」(ChangeWAVE主催)が10月5日、開催された。

「女性の活躍」や「仕事と子育ての両立」を支援する、これまでのダイバーシティから、「多様な人材による個性を発揮」してイノベーションをはかる、これからのダイバーシティへ移行するために大切なことは? 本当のダイバーシティ推進企業は、どのようにリーダーを生み出しているのか?

慶應義塾大学大学院の前野隆司教授の基調講演と、企業の人事・ダイバーシティ推進室担当者や、変革リーダーらによるパネルディスカッションの様子をレポートする。

■「満足度」と「幸福度」は違う。パフォーマンスが高くなるのは「幸福度」

2016-11-16-1479268616-217586-photo.jpg
慶應義塾大学大学院の前野隆司教授

幸せな組織づくり、システムデザイン・マネジメント学、幸福学と幅広く研究している前野教授は、「地位財」型の幸せは長続きしないとして、「非地位財」型の幸せを紹介した。

「地位財」とは「金、モノ、社会的地位」など他人と比べられる財である。一方、長続きする幸せは「非地位財」で、夢や目標を叶える自己実現と成長をしている人、利他的で社会問題解決のための活動参加意欲があり多様な友人を持つ人、前向きで自己肯定感が強く、自分らしさを持っているといった4つの心的要因が重要だと語った。

また、「満足度」と「幸福度」は異なる概念で、給料、休暇、福祉など部分的なことに対して得られる「満足度」よりも、仕事や家庭など全般において幸せを感じられる「幸福度」が強いほうが、パフォーマンスが高くなる研究結果もあるという。

■働き方改革、一人ひとりの自主性が問われるように

パネルディスカッション1では、ChangeWAVE代表の佐々木裕子さんがモデレータをつとめた。
登壇者は、企業の人事・ダイバーシティ推進室担当者の3人。それぞれの企業の制度や風土の違いがよくわかる発言が目立った。

2016-11-16-1479268662-5048570-photo1.jpg
(左から)リクルートホールディングスの伊藤綾さん、ソフトバンクの源田泰之さん、日立ソリューションズの小嶋美代子さん。

株式会社リクルートホールディングスの伊藤綾ソーシャルエンタープライズ推進室長は、「働き方改革なども実践する中で、一人一人の自主性がますます問われるようになった」と語った。

リクルートでは、毎月審査が行われる新規事業開発プログラムがあるほか、ほぼ全ての社員が「Will(やりたいこと)」、「Can(できること)」、「Must(やるべきこと)」を書き込んだシートを持ち、半年に一度見直して上司と面談。「Will」は、会社ではなく人生における「Will」も含まれるため社員それぞれの想いは多種多様だが、リクルートでは組織のなかで「Will」と「Can」「Must」を接続して考えることを大事にしているという。

株式会社日立ソリューションズの小嶋美代子ダイバーシティ推進センタ長は開口一番、「ダイバーシティ推進室の解散も視野に入れて、新たな施策を考えている」と明言して参加者を驚かせた。理由は「戦略的に次の変化や波を持ってくるためには、ひとつの前の波を終わらせる必要があるため」。そのうえで「会社のなかで多様性をつくりきれない場合は、強制力を持って社員を社外の活動に送り出していきたい」などと語った。

ソフトバンク株式会社の源田泰之人事本部採用・人材開発統括部長は、「ソフトバンクでは、年齢、性別、国籍はまったく関係ない。多様な社員がイノベーションを起こしているイメージ」と発言。その背景には、「買収を繰り返してきた関係で会社自体がダイバーシティ」があること。また「チャンスはたくさん用意しており自分自身で掴むことを大切にしている。また、公正公明な評価制度」があると語った。

■一人ひとりの“やりたいこと”をチャレンジさせる企業風土

パネルディスカッション2では、ジャーナリストでChangeWAVEメンバーでもある中野円佳さんがモデレータを務めた。実際に先進企業でイノベーションを起こした「変革リーダー」として、リクルートが運営する一時保育の検索予約サービス「CoPaNa」プロダクトオーナーの鳥巣彩乃さん、ソフトバンクVR事業推進室の加藤欽一さんが登壇した。

2016-11-16-1479268698-8079889-.jpg
リクルートの鳥巣彩乃さん、ソフトバンクの加藤欽一さん

鳥巣さんは4人だけのベンチャー企業から、社会のインフラになれるような事業づくりを目指してリクルートに転職。入社後、自分の結婚を機に子育てに興味を持ち、既に子供を持っている友人へのインタビューや、保育園でのボランティアを業務時間外にスタートしたという。

「産後うつになった知り合いも身近にいた。子育ては母親が我慢し、犠牲になるべきという社会通念は、変えられるはずだ」と、温めてきたアイデアを前述の新規事業開発プログラムに提案。鳥巣さんは「新規事業に提案する前のボランティアのときからずっとアドバイスしてくれた上司がいた。それほど人に対して“Willを応援する”風土がある」と語った。

加藤さんは、ソフトバンク内にて新規事業となるVR(バーチャルリアリティー、仮想現実)事業の立ち上げを立案し、今年VR事業の専門部署を設立し事業責任者を務める。ソフトバンクは「やりたいことがある人が自ら言うということと、やりたい人にチャレンジさせようという風土が定着しているので何でも言いやすい。一般的に気軽に時間を取っていただけない役員でも相談を持ちかけるとちゃんと時間をとってくれた」という。

二人の話に共通したのは「会社が社員一人ひとりに期待していることを実感している」点だ。その期待に応えたいという思いが高いモチベーションとパフォーマンスにつながっていると言えるだろう。

2016-11-16-1479269726-8726322-discussion.jpg
ChangeWAVEの佐々木裕子社長

最後は、ChangeWAVE代表の佐々木裕子さんが登壇。「人間が本来持っている個の強さ、潜在力はものすごく強い。保育園の運営をしていて、これからの子どもたちの保育を考えるために勉強をしているが、自分で考える力、生き抜く力を身につけさせるためには、何もしないことも必要。人間がもともと持っている原始的な力を信じて、固定観念や枠にはめずに個々の多様性をどれだけ解き放っていけるかどうかがカギなのでは」と、これからのダイバーシティの展望を語った。

(取材・文 樺山美夏)

…………

佐々木裕子(株式会社チェンジウェーブ代表)
sasakisan東京大学法学部卒、日本銀行を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。シカゴオフィス勤務の後、同社アソシエイトパートナー。8年強の間、金融、小売、通信、公的機など数多くの企業の経営変革プロジェクトに従事。マッキンゼー退職後、企業の「変革」デザイナーとしての活動を開始。2009年チェンジウェーブを創立し、変革実現のサポートや変革リーダー育成など、個人や組織、社会変革を担う。キャリア形成や女性の働きかたに関する講演も多数。著書『実践型クリティカルシンキング』『21世紀を生き抜く3+1の力』ディスカバー21

佐々木さんは、12月18日(日)に東京・御茶ノ水で開かれるハフィントンポストのイベント「Work and Life これからのダイバーシティ――子育て・介護・働きかた」で、「私の人生にも、ダイバーシティは必要なの?――子育てから介護まで、これからの働きかたを考えよう」のテーマにしたパネルディスカッションに登壇する。