トランプ次期大統領、ベン・カーソン氏を住宅長官に 中絶反対の保守強硬派、トンデモ理論も

大統領予備選から撤退した後すぐにトランプ氏を支持し、安定した関係を維持していた。
STEVE MARCUS/REUTERS

アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は、元脳神経外科医で、公職を経験したことのないベン・カーソン氏を住宅都市開発長官に指名した。

12月5日に発表された声明の中で、トランプ氏はベン・カーソンを「素晴らしい知性」を持った「優れた国のリーダー」と呼んだ。

カーソン氏を住宅都市開発省の次期長官に指名したトランプ氏の選択は、政治家の経験よりも、自分を支持した人への論功行賞を優先していることの裏付けとも言える。トランプ氏が政府高官として最初に指名したのは、保守系オンラインニュースサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」会長、白人至上主義者と言われるスティーブン・バノン氏だ。バノン氏は大統領選でおけるトランプ氏のアドバイザーを務めた側近だ。

トランプ氏はまた、商務長官に投資家のウィルバー・ロス氏を、財務長官にゴールドマン・サックス出身のスティーブン・ムニューチン氏を指名した。

住宅都市開発長官として、カーソン氏は低価格住宅の供給や都市開発などを含む住宅政策を決定する任務を担い、住宅の機会均等法、開発計画の資金調達、ホームレス問題などの取り組みを監督する。しかし、彼は住宅に関する政策や開発については何の経験も持っていない。カーソン氏が大統領選で掲げた差別的政策(彼は「強制的な社会工学の構想」と呼んでいる)が、公平な住宅供給に影響を及ぼす懸念が指摘されている。

「人種間の平等を法制化しようとする政府のせいで、問題が悪化している」と、カーソン氏は2015年、保守系新聞ワシントン・タイムズに寄稿している。「住宅政策は低所得者層の購入機会を拡大するために適切な方法ではあるが、この国で社会主義実験が失敗した歴史に基づけば、住宅問題の解決を政府に委ねるのは実に危険なのは明らかだ」

トランプ氏は11月23日の時点で、カーソン氏を住宅都市開発長官に考えているとツイートし、報道は引退したドクターが公人として政権に参加するとして加熱した。

私は真剣にベン・カーソン医師を住宅都市開発長官に考えている。彼のことをよく知っている——彼は人を愛する素晴らしい才能を持った人物だ!

大統領選の共和党予備選でトランプ氏と指名候補を争ったカーソン氏は11月17日、FOXニュースに、政権入りについて「検討している」と語った。それ以前は「閣僚の役職に就く資格がない」と発言していた。

FOXニュースのインタビューで、カーソン氏は住宅都市開発長官としての資格に関して、デトロイトで育ったことに触れた。

「私はスラムで育ち、多くの時間を過ごしてきた。そこで多くの患者を診てきた。もし弱者がいるスラムを抱えていたら、強い国にはなれない」と、カーソン氏は語った。

住宅都市開発省が抱える問題は重大な時期を迎えている。バッファローにある大学「スクール・オブ・アーキテクチャー・アンド・アーバン・プランニング」のロバート・シブレー氏は、住宅都市開発省の次期長官が、「ホームレス問題と低価格住宅」に関する主要な任務を理解することが重要だと語った

「アメリカは、ある人のためにはあまりにも多くの人がいる一方で、他の人のためには人が不足しているような国だ」と、シブレー氏は11月23日にハフィントンポストUS版に語った。「長官が経験豊富な人物なら気付くことです。 そうでなければ、経験豊富な人々の中に身を置く必要がある」

シブレー氏は、ホームレスや低価格住宅に関する問題は住宅都市開発省だけでは解決できないという。省のリーダーが、環境保護庁、保健福祉省、労働省や国立科学財団といった他の省庁と連携する能力を持っていることが重要だと、シブレー氏は指摘した。

「ホームレス問題と低価格住宅は市場の力で解決してくれると決めてかかっても、そうはならないだろう」と、シブレー氏は付け加えた。

カーソン氏は共和党の大統領予備選から撤退した後すぐにトランプ氏を支持し、安定した関係を維持していた。 トランプ氏、カーソン氏および元ヒューレット・パッカードのCEOカーリー・フィオリーナ氏の3名が、政治経験なしで大統領選に出馬した候補者だった。

カーソン氏は、これまで自伝や講演で語っていた過去の経歴に虚偽があると指摘されており信頼性に欠ける上、議会に対応する能力にも疑問符が付いている。一方で人工妊娠中絶や進化論に反対の考えを貫き、保守派の中で人気が高い。しかし、インタビュー中に自分の荷物を確認するために抜け出す、「エジプトのピラミッドは穀物貯蔵庫だ」という奇妙なトンデモ理論もを披露するといった奇行で知られるようになった。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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