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「宇宙は希望を与えてくれる」 ジェフ・ミルズが野心作『Planets』を語る

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電子音を多用したダンスミュージック「デトロイト・テクノ」の草分け的な存在のジェフ・ミルズの新作は、クラシックの交響楽団との共演だった。2月22日にリリースされるアルバム『Planets』では、水星、火星、地球、火星から冥王星まで。太陽系の各惑星をイメージした楽曲を組み合わせという点では、ホルストの管弦楽組曲『惑星』を彷彿とさせるものだ。

クラシックと電子音という異質な音同士を、どうやって融合させたのか。公演とトークイベントのために来日中の11月16日、都内のホテルでインタビューした。

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11月18日、浜離宮朝日ホールでの公演で「THE TRIP」で演奏を披露するジェフ・ミルズさん(右)

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■「クラシックの楽器は、テクノの歴史の最初からあった」

--新作の『Planets』ですが、クラシックと電子音楽を融合させる上で難しかった点は何でしょう?

難しいと感じることは、特になかったです。クラシックと電子音の役割をきちんと理解し、どういう役割でどちらを使うかをきちんと理解できると、意外と簡単なんです。このアルバムでは、惑星を表現する曲ではクラシック音楽を多く使い、惑星間の旅に当たるミステリアスな曲には電子音を多用しました。

--なぜクラシックと電子音という異質なものを融合させようと思ったのでしょうか。

デトロイト・テクノはもともとサンプラーやシンセサイザーでストリングスの音を多用する傾向がありました。それはシカゴ・ハウスも同様です。そういう意味ではクラシックの楽器を使うことは、テクノの歴史の最初からあったことなんです。私も子供のころに、テレビや映画を見ていてもそれに使われているのはストリングスの効いたクラシック風の音楽でした。そういうものにずっと親しんでいたから大人になってダンスミュージックを作る際にも、影響が出ているのではないでしょうか。

--他の作品と同様に『Planets』の中でも、Roland TR-909という80年代の日本製のリズムマシン使っていますね。あなたにとってTR-909はどんな楽器でしょうか。

よく慣れ親しんでいる機材なので、必要としている音をすぐに出すことができます。私の音楽キャリアを通して、スタジオでもライブでもずっと使っている楽器で、すごく信頼しています。もちろんTR-909がなくても音楽は作れますが、私の耳と習慣はこの機材にすっかり慣れてしまっています。

--ちなみに最近発売された復刻版「TR-09」は試しましたか?

先日試しました。音はいいんですけど、サイズが小さくて私はうまく操作が出来ませんでした。


■準惑星になった冥王星を敢えて入れた理由は?

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2015年7月、NASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」が撮影した冥王星

--ホルストの管弦楽組曲『惑星』とあなたの『Planets』の違いは何になりますか?

ホルストは『惑星』をローマ神話などに基づいて作曲しました。しかし、私の『Planets』では最新の科学データを元に作曲するようにしました。たとえば実際の惑星の直径によって曲の長さが決まったりとか、あるいは惑星の質量で音を決めたり、また自転速度などを参考にして作曲しています。

--冥王星は、2006年に惑星から準惑星に降格したんですが「Planets」に敢えて入れたのはなぜでしょう?

冥王星が惑星から降格したことは、もちろん知っていました。しかし、冥王星は重要な星であって、太陽系の外周にあるカイパーベルト(小惑星や氷・ちりなどが密集した領域)を通って、海王星の軌道の内側に入り込みます。一般的な意味での太陽系から一旦外に出てまた戻ってくるという意味で、他の惑星にはない情報を冥王星は持っているに違いない。そういう意味で外せなかったんです。


■火星有人探査で「人類は次の章に入った」

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火星有人探査のイメージ図

--惑星探査により太陽系の惑星の様子がわかってきたことについてどう思いますか?

人類はいよいよ次の章に入ったと思います。2030年代の火星移住計画は、人間が火星に行ってそこに居住する前提で進められています。それがうまくいけば2040〜50年ごろには、火星で生まれる人間が出てくるかもしれません。その人は、地球人ではなく火星人ということになりますよね。そういう意味で、人類の全く新しい章が始まっていると思います。

--火星ということで言えば将来テラフォーミングなどで環境を変えて人類を移住させることも可能になると思いますがそれについてはどう思いますか。

まずとんでもない金額の費用がかかりますよね。それ以外にも今の人間の能力では不可能な困難が待っているのではないかと思います。その意味ではかなりリスクが高いと思います。もしかしたらロボットに環境整備をさせる以外にも、まずは何年かロボットに生活させて、いかに人間にとって難しい環境かということを調査してから、人間を送りこむのでもいいのではないかと思います。


■「進化の可能性に魅力を感じる」

--あなたは以前から宇宙をテーマにした曲を多く手がけていますね。なぜ宇宙をテーマに選んだのですか?

宇宙というテーマは、将来への希望を与えてくれると思います。人間は誰しも進化の可能性があるものに、魅力を感じるのではないでしょうか。特に私は、アメリカという暗い歴史を持った国の出身ですからね。

--我々が住んでいる国や社会が不完全なわけですが、それとは違う可能性が宇宙にはあるということですか?

可能性はあると思います。ただし火星に送る人たちがお互いに仲良くできないのであれば、地球で人間社会が抱えている問題を火星に持っていっていくだけで、全く問題解決になりません。僕の想像ですが、問題を少なくするために多様なタイプの人ではなく、ある特定のタイプの人だけが火星に行くメンバーに選ばれることになると思います。

--最後になりますが、11月18日に浜離宮朝日ホールで行った「THE TRIP」は無数のSF映画のコラージュに音楽を合わせるという試みでしたね。特に難しかった点はありますか?

いえ、難しい点はなかったです。一連の作業はすごく楽しかったんですよ。様々な映像をトリミングして使っていますが、テーマとしては「ここからもう後戻りできない」というターニングポイントになるシーンを映画から抜き出して、それを繋ぎ合わせています。奇妙で変わった体験を提供することで、「人類が地球という惑星の外に出る」という感覚を味わってもらいたくて作りました。


■ジェフ・ミルズさんのプロフィール

jeff mills
1963年、デトロイト生まれ。電子音楽「デトロイト・テクノ」のパイオニアとして知られるDJ・プロデューサー。現在はフランス・パリを拠点に活動している。Axis Records主宰。 新作の『Planets』は、太陽系の惑星をテーマにクラシック・オーケストラのために書き下ろした意欲作で、2017年2月22日にCDをリリースする。同作の日本公演では、東京フィルハーモーニー交響楽団と共演を果たす。2月22日に大阪・フェスティバルホール。25日はBunkamura オーチャードホールで予定している。


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