将棋不正疑惑、公開された報告書とは別の報告書が存在 連盟広報「お答えできることはない」

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日本将棋連盟が入る将棋会館(東京・渋谷区) | Kei Yoshikawa
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将棋ソフト不正使用疑惑について、日本将棋連盟は1月16日に第三者調査委員会の「調査報告書(概要版)」を公式サイトで公開した(公開版)が、それとは異なる「ドラフト版」が別途存在していることが分かったと、インターネットメディアの「ねとらぼ」が報じた。

ドラフト版は将棋連盟の公式サイトで17日深夜まで閲覧できる状態だったが、現在は非公開となっている。作成日についてはドラフト版は2017年1月13日、公開版は2016年12月26日と記されている。

ハフィントンポストでは「公開版とドラフト版、2つの報告書が存在している」という指摘について、18日午後に日本将棋連盟に問い合わせた。同連盟の渉外部広報課の担当者はドラフト版の存在を認めた上で、「手違いでドラフト版を公開状態にしてしまった」と説明した。

調査報告書は、日本将棋連盟の委嘱を受けた第三者調査員会が作成し、同連盟に報告したものと発表されている。概要版は、それを第三者調査委員会が要約したものだとしている。本来であれば、第三者調査委員会からの報告を、連盟側は手を加えずに公開することになるはずだ。にもかかわらず、なぜ文言が異なる2つの報告書の要約が存在するのだろうか。文言が変更された経緯について、同連盟の広報担当者は「こちらからお答えできることはありません」と説明を避けた。

■ドラフト版と公開版の違いは?

ドラフト版と公開版では、報告書の骨子自体は変わっていない。ただ、「意見も呈された」を「疑惑も指摘された」など、表現を修正した箇所が複数箇所見られたほか、竜王戦挑戦者の変更について「(スポンサーの)読売新聞社と協議した」と記された部分が削除されていた。以下、ドラフト版と公開版の主な相違点を比較して記載する。

1:三浦九段の指し手とソフトの一致率について

<ドラフト版>
「本件ヒアリングにおいては、一部の連盟所属棋士から、プロ棋士であっても一定のミスを犯す(悪手を指す)ことが通常であるところ、本件4対局の一部においては悪手が少なすぎ、それゆえ自力で指しておらず、将棋ソフトを用いているのではないかという趣旨の意見も呈された

<公開版>
「本件ヒアリングにおいては、一部の連盟所属棋士から、プロ棋士であっても一定のミスを犯す(悪手を指す)ことが通常であるところ、本件4対局に関しては悪手が少なすぎ、それゆえ自力で指しておらず、将棋ソフトを用いているのではないかという趣旨の疑惑も指摘された

2:「疑惑」とされた4対局の分析について
<ドラフト版>
「可能な範囲で、連盟所属棋士に対する本件ヒアリングの中で見解を聴取し、その結果を分析した(以下、かかる分析を「本件対局分析」という。)」

<公開版>
「可能な範囲で、見識の高い棋士を含む連盟所属棋士に対する本件ヒアリングの中で見解を聴取し、その結果を分析した(以下、かかる分析を「本件対局分析」という。)」

3:疑惑発生の経緯について

<ドラフト版>
「三浦棋士は、2016年7月26日、将棋会館で開催された第29期竜王戦決勝トーナメントにおいて、久保棋士と対戦し、勝利した。この対局時、久保棋士は、三浦棋士が、夕食休憩後という終盤において、しかも自分の手番で午後6時41分から7時12分までの31分間も離席したり、終盤はほぼ1手ごとに離席するなどその回数も極めて多かったという認識を持ち、そのことに強い不信感を抱いた」

<公開版>
「三浦棋士は、2016年7月26日、将棋会館で開催された第29期竜王戦決勝トーナメントにおいて、久保棋士と対戦し、勝利した。この対局時、久保棋士は、三浦棋士が、夕食休憩後という終盤において、しかも自分の手番で午後6時41分から7時12分までの31分間も継続して離席したほか、他にも離席が見られたことなどから強い不信感を抱いた。ただし、本件映像分析の結果では31分間にわたる離席という事実は認められない。

4:久保棋士の証言について

<ドラフト版>
「久保棋士は、当時時計を確認していたとのことであり、本件ヒアリングでも、かかる時刻を明言した。なお、第5の3で後述するとおり、三浦棋士は、実際には、久保戦において約30分間の離席をしていない

<公開版>
「久保棋士は、当時時計を確認していたとのことであり、本件ヒアリングでも、かかる時刻を明言した」

5:2016年10月3日、渡辺竜王との対戦について

<ドラフト版>
「しかし、翌日以降、観戦記者との意見交換、将棋ソフトに詳しい千田棋士らとの意見交換、自らの技巧を用いた検証等により、三浦棋士の離席の多さや、三浦棋士の指し手と技巧の指し手との一致率等から、三浦棋士が渡辺戦でソフト指しをしたのではないかという疑いを強めた

<公開版>
「しかし、翌日以降、観戦記者との意見交換、将棋ソフトに詳しい千田棋士らとの意見交換、自らの技巧を用いた検証等により、三浦棋士の離席の多さや、三浦棋士の指し手と技巧の指し手との一致率に基づく疑惑を深め、さらに久保戦についての情報を得ていたこと等から、三浦棋士が渡辺戦でソフト指しをしたのではないかという疑いが確信に近づいた

6:2016年10月10日、島常務理事の自宅で開かれた非公式会合について

<ドラフト版>
「参加した棋士の中には、上記のとおり、渡辺棋士と千田棋士がそこまでいうのであれば三浦棋士が不正をしたのではないかという疑念を示す意見、その場で初めて聞いた話でもあり疑わしいものの結論は出せないという意見、疑念を払拭するために三浦棋士本人から話を聞くべきではないかという意見等もあった。また、本件10月10日会合が理事会や常務会ではなく(参加メンバーには理事でないものも多く含まれる)、非公式の会合であったこともあり、各参加者の同会合及びそこでの自分の意見がどのような影響を及ぼすのかについての捉え方も様々であった。しかし、他方で、本件10月10日会合において、本件疑惑の内容を否定する者もまたおらず、連盟としてはその事実を重く受け止めざるを得ない状況であった」

<公開版>
「参加した棋士の中には、上記のとおり、渡辺棋士と千田棋士がそこまでいうのであれば三浦棋士が不正をしたのではないかという疑念を示す意見、その場で初めて聞いた話でもあり疑わしいものの結論は出せないという意見、疑念を払拭するために三浦棋士本人から話を聞くべきではないかという意見等もあった。また、本件10月10日会合が理事会や常務会ではなく(参加メンバーには理事でないものも多く含まれる)、非公式の会合であったこともあり、結論というべきものはなかった。しかし、他方で、本件10月10日会合において、本件疑惑の内容を否定する者もまたおらず、連盟としてはその事実を重く受け止めざるを得ない状況であった」
※この会合には、谷川会長、島常務理事、佐藤(天)棋士、佐藤(康)棋士、千田棋士、羽生棋士、渡辺棋士が参加した。

7:10月11日の常務会について(三枚堂棋士からの聴き取り)
<ドラフト版>
「三浦棋士に対する聴き取りが始まるまでの間、島常務理事及び杉浦理事が、三枚堂棋士から聴き取りを行い、三枚堂棋士から、スマートフォンを使ってパソコン上の将棋ソフトを遠隔操作する方法があることを三浦棋士に教えた旨の回答を得た」

<公開版>
「三浦棋士に対する聴き取りが始まるまでの間、島常務理事及び杉浦理事が、三枚堂棋士から聴き取りを行い、三枚堂棋士から、スマートフォンを使ってパソコン上の将棋ソフトを遠隔操作する方法があることを三浦棋士に教えたがダウンロードはしていない旨の回答を得た」

8:10月11日の常務会について(三浦棋士からの聴き取り)
<ドラフト版>
「三浦棋士は、久保棋士が指摘した久保戦における約30分間の離席については、その事実を否定することなく、将棋会館4階にある休憩室「桂の間」以下「桂の間」という。)で休もうとしたところ、同部屋内で先輩棋士が囲碁を打っていたため横になりづらく、守衛室に行って体を休めていた旨を説明した

<公開版>
「三浦棋士は、久保棋士が指摘した久保戦における約30分間の離席という誤った前提に基づく質問に対し、その事実を否定することなく、将棋会館4階にある休憩室「桂の間」以下「桂の間」という。)で休もうとしたところ、同部屋内で先輩棋士が囲碁を打っていたため横になりづらく、守衛室に行って体を休めていた等不合理な弁解に終始した」

9:竜王戦の挑戦者変更の経緯について
<ドラフト版> 「一方、この間、島常務理事及び杉浦理事は、竜王戦を共同主催する読売新聞社を訪れ、同社に対し、三浦棋士が休場し竜王戦七番勝負の挑戦者を丸山棋士へ変更することについて理解を求めた。また、杉浦理事は、読売新聞社と協議した後、同行した連盟職員を通じて三浦棋士に対し、休場届を早急に提出するよう伝えた」 ↓ <公開版> 「一方、この間、島常務理事及び杉浦理事は、竜王戦を共同主催する読売新聞社を訪れ、同社に対し、三浦棋士が休場し竜王戦七番勝負の挑戦者を丸山棋士へ変更することについて理解を求めた。その後、杉浦理事は、同行した連盟職員を通じて三浦棋士に対し、休場届を早急に提出するよう伝えた」

日本将棋連盟の谷川浩司会長、辞任の経緯を語る(テキスト中継)



日本将棋連盟の谷川浩司会長が辞任表明「心身ともに不調をきたすように...」(コメント全文)


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