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アメリカのイスラムフォビア(イスラム嫌悪)には6つの「法則」がある

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ISLAMOPHOBIA
(Photo by Ray Tang/Anadolu Agency/Getty Images) | Anadolu Agency via Getty Images
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2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロ事件の後、ドナルド・トランプ氏をはじめ共和党の大統領候補が反イスラム的なスピーチを繰り返すようになった頃から、私たちはイスラムフォビア(イスラム嫌悪)の言動をリストにまとめ始めた。悲しいことだが、2カ月も経たないうちにリストは長文となってしまい、ウェブページでは重くてなかなか読み込めないことが多い。

そこで、反イスラム的な事件がアメリカ国内に急増していることに気が付いた。多くの人は認めたがらなかったが、実際に起きていた。イスラム教徒に対するヘイトクライムを「まったく聞いたことがない」と言ったFOXニュースの司会者エリック・ボーリング氏を思い出してほしい。

そこで私たちは「イスラムフォビア・プロジェクト」を立ち上げ、 2016年に起きた反イスラム的な暴力、野蛮行為、差別、公共政策、政治演説を調査した。

2016年、アメリカ。セントルイス近郊で銃を持った1人の男がイスラム教徒の一家に叫ぶ。「イスラム教徒か?」と男は言った。「全員死ね」

こうした事件を集めてみると、イスラムフォビアが起きるタイミングには、一定のパターンがあることがわかった。選挙期間中、トランプ氏の支持者がイスラム教徒に対して攻撃したり、嫌がらせをしたり、殺そうとしたことが13回以上あった。つまりトランプ氏の発言と支持者の行動は潜在的に関係している。私たちはイスラム教徒の祝日中、明らかに急増していた反イスラム事件を記録した

プロジェクトを始めて1年だが、悲しいことにアメリカのイスラム教徒が攻撃や脅しを受け、濡れ衣を着せられ、どういう人物かを決めつけられ、礼拝所が破壊され、信仰を侮辱される場面を目撃したという話が400近くあり、その数は今も増え続けている。

情報源としてislamophobia@huffingtonpost.comというメールアドレスを作り、数百件の回答を作成した。多くの人がこのプロジェクトに感謝を伝えてくれた。あるメールは、イスラム教徒の陸軍退役軍人が、ロッカーに「テロリスト」と書かれているのを見つけたという記事につながった。しかし私たちが受け取るメールは、ほとんどが反イスラム的なヘイトメールだ。


【参考記事】トランプ氏が勝利してから、イスラム教徒の女性はこんな攻撃を受けている

プロジェクトの記者や編集者たちは、反イスラムグループのサイトで攻撃されたりTwitter上でしつこく挑発を受けた。このプロジェクトが大きな波を起こしている証だ。

また2016年3月10日まで遡ると、共和党の大統領予備選挙で当時最有力候補だったトランプ氏のこの発言を読むことができる――「イスラムは我々を憎んでいると思う」

あまりにも多くの皮肉や間違った情報が、この言葉の中に詰まっていた。トランプ氏がそんな発言をしてもアメリカの大統領になれたので、アメリカ国内でイスラム教徒を「部外者」と定義するのに大成功したことだけはわかる。

ある集団を「部外者」とする場合、彼らを攻撃し、市民権を奪うことは簡単になる。プロジェクトの追跡では何度もこうしたことを記録した。

しかし、別の意味では、イスラムフォビアは徹底的に追跡できるものではない。あまりにも多いので、すべての事件がニュースになるわけではない。

これはアメリカのイスラム教徒にとって日常茶飯事となっている。イスラム教徒の母親は、今はヒジャブ(イスラム教徒の女性が人前で髪を隠すのに用いるスカーフ)を着用しない方がいいと娘に伝えている。父親は「おまえたちは市民だから強制送還されるはずがない」と子供たちに説明しなければいけない。映画の中に出てくるほとんどのイスラム教徒はテロリストとして描かれ、ケーブルテレビのニュースチャンネルはイスラム教徒にテロを非難するかどうかの質問しかしない

トランプ氏の出現で、希望があるのは反イスラムのヘイト行為に注目する人が増えたことだ。報道機関は前よりもしっかりとこの問題を報じている。非営利調査報道機関『プロパブリカ』は「ドキュメンティング・ヘイト」という独自のプロジェクトを開始し、ニューヨークタイムズは「ディス・ウィーク・イン・ヘイト」という週刊のコラムを始めた。

2017年、私たちはイスラムフォビアの追跡をアップデートしない予定だ。1つのプロジェクトでは収まらまいほどストーリーが溢れかえっているためだ。しかしヘイトと過激思想については伝え続ける。またイスラム教徒を中傷し、苦しめる新大統領の政権にも細心の注意を払うつもりだ。

1年間ヘイトを追跡して、イスラム教徒のアメリカ人を見下す人は、ほとんどが決まった言い回しを使っていることがわかった。このプロジェクトさえ反イスラム的な偏見を持つためのガイド のように思われている可能性もある。ここにアメリカのイスラムフォビア6つの「法則」をリストにした。

もしあなたの側にいるイスラム教徒の隣人、同僚、友人、家族を守るために役立てるなら、この6つの「ルール」を絶対になくさなければならない。


法則1 イスラム教徒はアメリカ人ではない。


MARK WILSON VIA GETTY IMAGES

「国に帰れ」。男がコネチカット州のモスクから帰る礼拝者たちに叫んだ。オハイオ州では別の男が「おまえたちはこの国の人間じゃない。自分たちのクソみたいな国に帰れ」とイスラム教徒の女性とその家族に向かって怒鳴った

「あばずれのイスラム教徒はさっさとこの国から出て行って」。メリーランド州で女がイスラム教徒の母親と娘に叫んだ。「おまえはここの人間とは違うんだ、ふざけるな!おまえも家族もくたばれ、このテロリスト野郎!」とニューヨークのクイーンズ地区で男がモロッコ人のUberドライバーに怒鳴った。

「アメリカから出ていけ、くそ女」。ニューヨークのブルックリンでは、女がベビーカーを押すイスラム教徒の女性2人に向かって叫んだ。「ここはアメリカよ。私たちとは違う人間はいるべきじゃない」

アメフトのチーム「サンフランシスコ・フォーティナイナーズ」のクォーターバック、コリン・キャパニックが国歌斉唱中にひざまずき、起立しなかったことを批評家や政治家が非難したとき、彼らは何の根拠もなく、すぐにこの行動をイスラム教徒のガールフレンドのせいにした

イスラム教徒はここにはいてはいけないという考え方が広まっている。イスラム教徒たちはアメリカ軍として戦い、戦争で亡くなっているし、アメリカはイスラム教徒がいなかったら今存在していないのだが。


法則2 イスラム教徒は全員テロリスト。

在米イスラム改善協会サンフランシスコ支部には憎悪に満ちたボイスメールが残っていた。

「あんたはテロリストよ」。ニューメキシコ州の食料品店で女がイスラム教徒の女性に叫んだ

「ここにテロリストはいらない #トランプ」と書かれたメモを家のドアに貼られたのはアイオワ州に住むイスラム教徒の家族だ。

イラク戦争の退役軍人でアメリカ人のモハメド・アッバスさん(32)はPTSDを抱えるイスラム教徒だ。カリフォルニア州の海兵隊基地内で自分のロッカーに「テロリスト」と書かれているのを見つけた

マサチューセッツ州の委員の一人、マイク・グッドマンはこう言った。「『イスラム』という言葉は『テロリスト』を意味する。『イスラム教徒』は人間を指す。『イスラム』はテロリスト以外の何物でもない」

それは違う、マイク。


【参考記事】「イスラム教徒の入国管理には、戦時中の日系人強制収容が前例になる」トランプ氏支持者が発言


法則3 イスラム教徒にとっての豚肉は、吸血鬼にとっての十字架かニンニクと同じ

テキサス州の反イスラム系武装集団は弾丸に豚の血を塗っている。 なぜか?イスラム教徒たちを「地獄に直行させる」ためだ。

フロリダ州では男がモスクの正面玄関にベーコンを置いた後、マチェテという山刀でモスクを破壊した。ネブラスカとラスベガスのモスクでは、男たちがドアノブにベーコンを巻き付けた。ノースカロライナ州レイフォードでは、拳銃を持った男がモスクに複数のベーコンを置いて参拝者たちを殺すと脅した。

フィラデルフィアでは、何者かがモスクの外に豚の首を置いた。またオクラホマ州ロートンにあるモスクの外では、何者かによって豚の死体が捨てられていた

その後はトランプ氏だ。2016年、彼は一般的なアメリカ人が、反乱するイスラム教徒を豚の血に付けた弾丸で殺す方法という、真偽不明の話を好んでしていた。

ユダヤ教と同じようにイスラム教は一般的に豚肉を食べることを禁じている。こうした豚肉を使ったヘイト行為は間違いなく侮辱を意味するものだが、一方で加害者たちは豚肉がまるで魔法のようにイスラム教徒を排除したり、まっすぐ地獄に落ちるような神話的、非人間的な特質がイスラム教徒にあると考えていた。ある反イスラム活動家はコメディアンのサマンサ・ビー氏の番組でこう言った。「イスラム教徒にとっての豚は吸血鬼にとっての十字架のようなものだ」

もちろんイスラム教徒たちはそんなものを信じていない。ほとんどの人は豚肉を食べない、でも知られているのはそれぐらいだ。イスラム教徒のハフィントンポスト社員は、オクラホマ州の豚の死体の話を聞いてこう言った。「イスラム教徒はカップケーキを食べないという噂を広めなければと心に誓っています」


法則4 肌が褐色の人は全員イスラム教徒、だからテロリストかもしれない。

アラブ系アメリカ人のハーリド・ジャバラさんは、近所の住人に射殺された。犯人はジャバラさんのことをよく「汚いアラブ人」「アイラブ人」「ムースレム」と呼んでいた

シムラン・ジート・シンさんはニューヨークシティマラソンを走っていたとき、誰かから「汚いイスラム教徒」と呼ばれた。ハーマン・シンさんは、マサチューセッツ州ケンブリッジの店内で男から「クソイスラム教徒」と呼ばれた。「この国を吹き飛ばそうとしているんだろ、俺は今すぐおまえを殺さなきゃならない」とバルミート・シンさんはカリフォルニアのバーガーレストランの外で男から言われた

3人のシンさんは関連はないが、全員ターバンを巻いたシク教徒でイスラム教徒ではない。シク教徒はアメリカではイスラム教徒とみなされ、反イスラム的なヘイトクライムの標的になっている。シク教とイスラム教はまったく別の宗教だが、そこは重視されていない

オクラホマ州では8月、61歳で前科持ちのスタンレー・メイジャーズ容疑者が、37歳のハリード・ジャバラさんという男性を自宅前で射殺した。メイジャーズ容疑者は数年間ジャバラさんの家族に嫌がらせを繰り返していたという。彼はジャバラさん一家を「汚いアラブ人」などと呼んでいた。ジャバラさん一家はレバノンからの移民でキリスト教徒だ。

こうした事件も「イスラム差別」と呼ばれる。アメリカ人の約30%(おそらくトランプ氏も含む)が、いまだにアメリカ初の黒人大統領がイスラム教徒だと思っている理由もそこにある。


【参考記事】「喉をかっ切ってやる!」イスラム教徒の警察官を脅迫した男が逮捕される



法則5 イスラム教は宗教ではなく、暴力的なイデオロギーだ。

マイケル・フリン元陸軍中将はトランプ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官で、反イスラムの陰謀論者だ。彼はイスラムは宗教ではないと述べている。

イスラムは「宗教を装ったイデオロギーです。イスラム教は不寛容でインチキで、信者たちは私たちの生活様式を根本から変えてイスラム法『シャリーア』に置き換えるよう命じられています」と、ニューハンプシャー州のケン・ウェイラー下院議員(共和党)が州議会議事堂に提出した書簡で述べた。

ペンシルベニア州では、教育委員会のあるメンバーがイスラム教は「宗教ではない」「神の存在を否定するだけでなく、異端」と述べた。バージニア州では、共和党の州中央委員会のあるメンバーが、イスラム教は「サタンが組織する死のカルト教」「平和の宗教ではなく、イデオロギー」とツイートした。

さらにユタ州では、州で3番目に大きな政党が、イスラム教は宗教ではないので、アメリカの憲法修正第1条では守られないとしてイスラム教の完全禁止を求めた。

メリアム・ウェブスター辞典では、イスラム教は「アッラーを唯一神、ムハンマドを予言者とするイスラム教徒の宗教的信仰」と定義されている。16億人の信者がいて、キリスト教に次いで世界で2番目に大きな宗教だ。本質的には暴力的でないことや平和的なのは他のどの宗教とも変わらない


法則6 イスラム教徒には、アメリカと西洋文明を内部から乗っ取る、または破壊するための策略がある


大統領選でテッド・クルーズ上院議員のアドバイザーを務めたフランク・ガフニー氏は、長い間「文明的ジハード」陰謀論を推し進めてきた。アメリカのイスラム団体を解体できる法案の記者発表で、クルーズ氏は「文明的ジハード」という言葉を引用した。

共和党大統領候補だったベン・カーソン氏はアメリカに「文明的ジハード」を警告した。その中で「穏健なイスラム教徒」のふりをする「ジハーディスト(聖戦主義者)」は「ユダヤ教とキリスト教に共通の価値観をイスラム教の価値観に置き換える」ために「浸透し、増殖し、権力を奪う」と述べた。

ミシェル・バックマン元下院議員はヨーロッパやアメリカへのイスラム教徒の移民・難民流入について「西側のキリスト教国」を破壊するための「計画された侵略」だと述べた。ミネソタ州の保守系団体ティーパーティー(茶会)の女性議員は、西側諸国の「イスラム化」を狙った「文明的ジハード」の一部だと説明した。

ニュースサイト『ザ・ヒル』は大統領候補テッド・クルーズ上院議員(共和党テキサス州)のアドバイザー、フランク・ガフニー氏による記事を掲載した。その中でガフニー氏は、アメリカにいるイスラム教徒が「西洋文明の破壊」を狙って「文明的ジハード」を起こすと述べた。このイスラム教徒の陰謀には、「政府と市民社会の制度に浸透し、これを崩壊させるため、有力者の言動やグループの行動といった水面下で破壊していく手段」を使うと彼は説明した。

「文明的ジハード」は明らかに間違った陰謀論だ。にも関わらずまことしやかに話が広まっており、イスラム教徒に対する懐疑的な見方に繋がっている。最近の調査で、アメリカ人は国内に5400万人のイスラム教徒がいると考えていることがわかった。しかし実際は300万人である。

「反イスラムの偏見を拡散しようとしても、それは人口のほんの一部にしか共感されていない。まったくうまくいっていないということです」と、在米イスラム改善協会のスポークスマン、イブラヒム・フーパー氏はハフィントンポストUS版に語った。「そういう人々は、アメリカを乗っ取ろうとするイスラム教徒が大勢押し寄せているという印象を作り出さない限り、成功しないでしょう」

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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