「ニュース女子」沖縄報道でBPOに人権侵害申し立て 「放送局の体をなしていない」と辛淑玉さん

「最低限の取材も怠ったまま誹謗中傷するもので、放送倫理を著しく逸脱した」と指摘している。

東京の地上波テレビ局「TOKYO MX」が放送した「ニュース女子」の内容が、沖縄の基地反対運動について事実と異なる報道がされているなどとして、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会に1月27日、人権侵害の申し立てがなされた。

申し立ては、ヘイトスピーチや人種差別への反対運動をする「のりこえねっと」共同代表で人材育成コンサルタントの辛淑玉さん名義。

申し立て後に記者会見した「のりこえねっと」メンバーら

申立書では、沖縄の基地反対運動に関わる人を「テロリスト」「犯罪者」「無法地帯」などと表現したほか、「のりこえねっと"辛淑玉"とは何者?」「反対運動を扇動する黒幕の正体は?」「韓国人はなぜ反対運動に参加する?」などのテロップを流したことについて「申立人がテロ行為、犯罪行為の『黒幕』であるとの誤った情報を視聴者に故意に提示した」ことで、名誉が傷つけられたと訴えた。

また、番組について「関係者に一切の取材をせず、反対運動の現場の約44キロメートル手前(二見杉田トンネル前)地点で『ここから先が高江の抗議現場であり、トンネルを抜けた先が危険であり近寄れない』などとする明白な虚偽を織り交ぜて、故意に取材を怠ったまま報道を行っている」と指摘。

「徹頭徹尾、何ら事実に基づかず、事実確認のための最低限の取材も怠ったまま高江ヘリパッド建設反対運動参加者らを誹謗中傷するものであるため、総体として、放送倫理を著しく逸脱した」としている。

番組では1月16日の放送で「今後とも、さまざまな立場のご意見を公平・公正にとりあげてまいります」とテロップを流したほか、番組を制作した「DHCシアター」は1月20日に「数々の犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を聞く必要はない」などとする見解を出した。

辛さんは申し立て後の記者会見で、こう述べた。

「彼らは笑いながら私を名指しし、笑いながら沖縄の人を侮辱しました。その中で黒幕とされ、北朝鮮親北派といわれ、運動でメシを食っていると言われ、私が訳の分からないところから集めたお金で過激派を送り込んでいるという文脈でした」「汚いと思ったのは、沖縄を叩くために沖縄の人を使っている。これは植民者の手口です。私もウチナンチューも反日非国民としてともに名指しされたのです。許してはならない」と、在日コリアンとして番組を批判した。

MXの対応についても「地上波の放送局としての体をなしていないと思います。抗議文に回答すらできない。真摯に報道に向き合ってきた経験がないのだろうと思います」と疑問を呈した。

また、「ニュース女子」が「反対派が日当を受け取っている」として放送した、のりこえねっとの「市民特派員」についても説明した。川原栄一・事務局長によると、2016年9月から12月まで計16人に、1人あたり5万円を支給して派遣し、ソーシャルメディアの投稿や1000字程度の寄稿を求めた。辛さんは「沖縄のことがほとんど知られていないと実感し、一般の人に行ってもらった」と話した。

原資は一般市民からのカンパだったが、川原事務局長は「まだそこ(会計報告)まで行っていない」、辛さんは「5万円集まると1人行かせ、また5万円集まると1人、といった具合にバラバラに行ってもらった。力が足りず、16人しか送れなかった」と説明した。

■沖縄から「沖縄の声を馬鹿にしている」

会見は、沖縄県庁の記者会見場とSkypeで結び、基地反対運動の参加者らも発言した。

高江ヘリパッドの建設反対運動に参加しているという安慶名奈々さんは「軍事ジャーナリストという男性が『(沖縄では)辺野古(埋め立て)に反対している人はいない』と言い切った。沖縄の声を馬鹿にしている。公共の電波が一言で言い切ったことは絶対に許せない」と憤った。

芥川賞作家の目取真俊さんは「基地反対派は県外から来ており、出所不明の金が出ている」といった語られ方について「(本土側の人々は)基地に沖縄が不満を持っていないと思いこみ、基地を押しつけている後ろめたさを解消したいという願望の表れでは。沖縄への負担強要に目をそらさず、目を向けて欲しい」と求めた。

TOKYO MX編成部はハフィントンポストの取材に対し「『ニュース女子』については調査・確認を進めており、2月10日開催予定のBPO放送倫理検証委員会においてご報告する予定です」と回答した。

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