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いじめを機に14歳で統合失調症に、女性の「人生が変わった」理由とは?

2017年01月31日 21時37分 JST
strideclub

「精神障害者」をサポートし、ともに働いている人たちがいる。

内閣府が発表している精神障害者の推計人数は320.1万人。100人あたり2.5人いる計算になる。決して遠い存在ではない。

そのうち入院しているのは約1割で、ほとんどの人が自宅で生活している。彼らを支える形の一つが「クラブハウス」だ。そこでは、精神障害者が「メンバー」として共に働く。

1997年から渋谷で活動している、NPO法人「ヒューマンケアクラブ ストライド」の事務局長で看護師の原真衣さん、そして統合失調症であるメンバーの鈴木尚子さん(仮名)に話を聞いた。

■みんなで運営する「クラブハウス」方式

――数日間、見学させていただきました。仕事場でありながら、休憩時間やランチの和やかな様子を見ていると“みんなの家、部屋”という雰囲気もありますね。

原真衣(以下、原):ここは、1940 年代にニューヨークで始まった精神障害者支援を基盤にした「クラブハウス」というモデルで成り立っています。

大きな特徴は「クラブハウス」を運営維持するための仕事を、「メンバー」と呼ばれる利用者の精神障害者と、私たち「スタッフ」が横並びの関係で“共働する”ことです。

従来の施設の授産活動と同じだと思われるかもしれませんが、「クラブハウス」はお互いに尊重して協力し、仕事を行うことを通して自助力を育みます。

「スタッフが指示をして受け手がそれをやる」という関係ではないんです。

例えば、年に1回の宿泊レクリエーションの行き先を決めるときには、みんなで提案し合って、多数決で決定します。

運営にみんなが参加することを大切にしているんです。

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事務局長で看護師の原真衣さん。

――対等に、ともに働くということですね。

原:はい。失ってしまった自信や能力を回復することを目標にしています。

遊びに来ているのではなくて、それぞれの目標を達成するために利用する場所です。

利用料はかかりませんが、ここで行う仕事に工賃は出ません。基本的に外部で働こうという考え方です。企業での封入作業などをした時には、ストライドから時給を支払います。

ストライドの収入は、病院の診療報酬のように、メンバーさんの人数や内容などに応じて自治体から入るようになっています。

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自分たちでランチをつくり、一緒に食べる。

■いじめを機に14歳で統合失調症になった

――では、メンバーである鈴木さんにもお話をお聞きします。病気になったのはいつ頃なのですか。

鈴木尚子(仮名・以下鈴木):中学2年の夏休みからです。きっかけはいじめでした。

食事ができなくなり、精神分裂病(現在は「統合失調症」)だと診断されて、それからは入退院を繰り返し、高校に行くこともできませんでした。今44歳です。

――ストライドに出会ったのはいつですか?

鈴木: 26歳の頃です。ストライドのメンバーになって、自分が変わったし、人生が変わりました。それまでは、原さんたちのように親身になってくれる人がいませんでした。

ここは、スタッフが元気で、明るさがあります。お友達もでき、居心地がいいです。母から「ストライドから帰って来ると明るい」と言われました。

「いてもいいんだ」と思えるし、いたいと思う場所です。

精神障害者については、世の中にはこういう人もいるって、知ってもらえたらと思います。理解しろとまでは言いませんけど、認めてもらえたら。

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原さん(写真右)と話す鈴木さん。原さんと話すのが大好きだという。

■その人らしく生きることを支える

――ストライドの就労支援は、「過渡的雇用」というそうですね。

原:自信をつけたら次のステップとして、必要に応じて外部の企業への就労支援をしています。

メンバーさんに企業や工場で働く機会をあっせんする「クラブハウス」独自のプログラムです。

大きな特徴として、メンバーさんが欠勤する場合には他のメンバーやスタッフが出勤して仕事をやりとげる、と雇用主に保証します。

欠勤が多いと他のメンバーやスタッフの負担にはなります。だけど定着支援こそが大事なんです。

今実施しているのは一人です。ある研究所に毎日出勤し、検査結果の束の梱包や発送作業をしています。他の「クラブハウス」では、海外の新聞社の東京支局で働いている方もいるんですよ。

就職に向けた熱意の高い人には、就労支援センターやハローワークの障害者窓口、区市町村障害者就労支援事業実施施設などをすすめることもあります。

大切なのは「その人の幸せが何なのか」ということですよね。

働くことが目的ではない人もいます。障害とは「社会的に生活上で不自由や生きにくさを感じるもの」です。同じ病気であっても障害と感じる部分は人それぞれです。

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2016年11月に開催された「ヒューマンライブラリー」。障害をもつ人が自ら話をするイベントだ。

■相互理解のために、できることから始める

――どうしたら、精神障害者と社会との接点をつくることができるのでしょうか。

原:結局は「精神障害をどこまで企業に理解してもらえるか」だと思います。

高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援制度」では、雇用後の職場適応支援もしています。

精神障害者の変化にはとても時間がかかります。ストライドに10年通ってやっと就職できた人もいるくらいですから、5、6年のスパンをみないといけない。

でも、一般企業はそんなに待てませんよね(苦笑)。それで一般の求人は、ハードルが高くなってしまうのです。

企業側にもご理解をお願いしたいです。

――今、メンバーの方が渋谷区役所内で実習をしているそうですね。

原:はい。区内で郵便局を通さないで届ける「交換便」というものがあって、その仕分けと部署への配達の仕事です。

初めて障害者と一緒に働いたという区役所の方がほとんどで、「この仕事なら任せられるかな」という声が出ています。

相手を知らなければ、どれくらいの仕事を頼んだらいいのか分からないでしょうから、お互いの理解に努めていきたいです。

これからも、簡単ではないけれど、小さなことを積み重ねて、必要なときに必要な人の背中を押していきたいと思っています。

(取材・文 小久保よしの

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