「君の記事でそれなりの物は頂いた」上司の言葉に記者クラブで泣いた。斎藤貴男氏が語る

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ジャーナリストの斎藤貴男氏(58)は2月19日、1980年代に業界紙の記者だった時代に上司の命令で、特定の企業に利益供与することで見返りをもらう種類の記事を書いたことがあると明かした。

早稲田大学ジャーナリズム研究所が運営する非営利の調査報道メディア「ワセダクロニクル」が都内で開いた無料セミナーの一幕だった。ワセダクロニクルは1日、「買われた記事 電通グループからの『成功報酬』」という記事を掲載。電通の子会社から、共同通信の子会社に55万円が支払われたという内部文書をもとに、製薬会社の宣伝とも取れる記事が配信されるまでの経緯を描いて大きな反響を呼んでいた。

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斎藤貴男氏


■「何で俺がこんなのやるんだろう?」部長に聞くと…

斎藤氏は大学卒業後に入った業界紙時代のことを思い返し、ワセダクロニクルが取り上げた「買われた記事」と同種のことを体験したとして、以下のように語った。

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鉄鋼業界の担当記者というのを少しやってたんですが。忘れもしません。ワセダクロニクルで取り上げていたような「買われた記事」というのを自分でも体験してしまったんですね。

記者クラブにいたら、部長から電話があって「今すぐ社に上がってこい」と言われて行ったところ、60歳くらいのおじさんを紹介されて、「今からこの方が言うことを記事にしろ」と言われて書いたんですね。

どこかの中小企業の社長さんらしくて「我が社の経営戦略」ということを滔々と語るものだから、「ナントカ会社は○日、○年度までの中長期計画を明らかにした。それによると…」なんて、結構カッコいい原稿を書いて、次の日に一面に大きく載りました。

でも鉄鋼業界担当なのに鉄の話でもないし、「何で俺がこんなのやるんだろうな?」と思ったんで、部長に聞いたら、こういう返事でした。

「君が書いたあの記事を持って、彼は銀行に行く。すると融資が下りることになっとる。我が社もそれなりの物はいただいた。おっと、君の言いたいことは分かるが、これは君の給料にもなるんだから、ここは何も言うな」と、言われました。

「俺は一体、何をしているんだろう。記者になりたかったはずなのに、こんな恥ずかしいことをしているのか」と思ったんだけど、そもそもうちの新聞はそんなに信用されてないし、中小企業の役に立てるならいいか……と、そのときは割り切ったんですが、記者クラブに戻って隅っこの方で泣いてたんですね。

すると隣の別の業界紙の先輩から「お前、うっとうしいんだ。俺たちは普通の新聞記者とは違うんだ。そもそも、朝毎読(全国紙の朝日、毎日、読売)に入れなかったお前が悪いんだ」と言われて、「それもそうだ」と思って諦めたんです。
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斎藤さんはこの体験を「みっともない思い出」と振り返った上で、「僕はその会社は大好きでしたが、マスコミの嫌な部分が分かりやすく出ていました。どこの会社も似たようなことをやっているけど、そこまで露骨にやらないだけ。これからはもっと巧妙になっていきます」と警鐘を鳴らしていた。

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