「臓器を提供するために」母は、無脳症の赤ちゃんを産むことを選んだ

泣いている顔を上げて妻はこう尋ねました。「最後まで妊娠して娘を産んだら、臓器を提供できるのでしょうか?」

静かに眠るこの女性のお腹には赤ちゃんがいる。しかしその赤ちゃんは、生まれた後、数日しか生きられない運命にある。

写真を投稿したのは、アメリカ・ニューオーリンズ州に住むロイス・ヤングさん。眠っている女性は、妻のケリ・ヤングさんだ。

ケリさんのお腹の赤ちゃんは、妊娠20週目の超音波検査で無脳症だとわかった

ロイスさんは、その時のことをFacebookにこうつづっている。

「お医者さんに、私たちの赤ちゃんには脳がないと告げられました。それを聞いたケリは、全身をふるわせて泣きました。しかし泣いている顔を上げてこう尋ねたんです。『最後まで妊娠して娘を産んだら、娘の臓器を誰かに提供できるのでしょうか?』」

心を引き裂かれているであろう妻の言葉に、ロイスは衝撃を受けたという。

「お腹の赤ちゃんが死ぬ運命にある、という人生で最もつらい事実を突きつけられてから1分もたたないうちに、妻は他の人のことを考えていたのです」

「私たちは結婚して8年(一緒にいるのは15年)になります。その間に何度も『なんて素晴らしい女性なんだ。彼女が僕と結婚してくれて、本当にラッキーだ』と、思ってきました」

「しかし、このときはこれまでと全く違う気持ちを彼女に対して抱きました。僕が結婚した相手は、単なるベストフレンドじゃない。彼女は特別に素晴らしい人間だ、こんな人は滅多にいない。その事実に気付かされたんです」

ケリさんとロイスさん

覚悟しての産む決断だったが、妊娠はケリを苦しめる時もある。赤ちゃんはケリのお腹の中で動いたり、しゃっくりをしたりする。そのたびに「この子が長くは生きられない」という事実を否応なしに思い出す。

エヴァを産むという決断をした理由は、臓器を提供するためだけではなく娘に会いたいためでもある、とロイスさん説明している。

「エヴァは生きている、彼女にはママとパパに会う権利がある、と気付きました。そう考えたら、やはりこの子を産みたいと思ったんです」

しかし、ロイスさんもまた、苦しい気持ちを抱えている。

「出産日は否応なく近づいてきます。エヴァが生まれて彼女に出会えるのは素晴らしくもあり、つらくもあります。出産するために病院に行っても、一緒に家に帰ってくる娘はいないのですから」

「何とかならないんだろうか、と何度も考えました。だけど私には何もできません。変えられない現実です」

苦しみの中、ロイスさんとケリさんは、ふたりを支えてくれる人たちへの感謝を伝えている。ケリさんは、自身のFacebookに超音波写真を投稿し、エヴァの成長を知らせている。

「エヴァの最新情報です。今日の午後、4D写真を撮影しました」

「彼女は順調に成長しています。写真を見ると、彼女を腕に抱くのが待ちきれなくなります」

ハフィントンポストUK版に掲載された記事を翻訳しました。

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Klimt - Mutter mit Kindern

アートの中の「お母さん」


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