トランプ大統領の施政方針演説は共和党の描いたシナリオ通りだった? 必ずしもそうではない

すべて実現させるのは無理がある。
US Vice President Mike Pence (L) and Speaker of the House Paul Ryan (R) applaud as US President Donald J. Trump (C) arrives to deliver his first address to a joint session of Congress from the floor of the House of Representatives in Washington, DC, USA, 28 February 2017. REUTERS/Jim Lo Scalzo TPX IMAGES OF THE DAY
US Vice President Mike Pence (L) and Speaker of the House Paul Ryan (R) applaud as US President Donald J. Trump (C) arrives to deliver his first address to a joint session of Congress from the floor of the House of Representatives in Washington, DC, USA, 28 February 2017. REUTERS/Jim Lo Scalzo TPX IMAGES OF THE DAY
POOL New / Reuters

共和党員は、ドナルド・トランプ大統領が2月28日に行った施政方針演説が自分たちの望んだ通りのものだったと考えているのだろうか。

いや、そうとも限らない。

ドナルド・トランプ大統領は、戦争の英雄を一人も侮辱しなかった。大統領選で数百万の不正投票があったという陰謀論を語らなかった。メディアを「アメリカ国民の敵」とは呼ばなかった。

ハラハラしながら施政方針演説を見ていた共和党員にとって、新大統領が穏やかなリーダーシップを示したのはは良いニュースだった。2月28日、就任以来初の両院議会合同会議に出席したトランプ氏が、およそ5000語を費やした1時間の演説は、ほとんど全て、プロンプター(原稿を表示させる装置)を読み上げたものだった。

トランプ氏は「全ての国民にお願いします。アメリカの精神の再生を心から支えてください」と、どんな党員でも、どんな大統領でも使えるフレーズを読み上げた。「連邦議員のみなさん、国のために私と共に、大きく、力強く、勇敢な夢を持って下さい」

ここからは悪いニュースだ。トランプ大統領は医療保険制度改革(オバマケア)の代替案、「歴史的な」税制改革とその財源、そして「1兆ドル」を投資するインフラ整備計画について詳細に語らなかった。

さらに演説は、トランプ氏がお得意のTwitterでの発言とは別物だ。Twitterでは準備された原稿を読むのではなく、彼が本当に思っていることを発言できる。

トランプ氏が議員たちの大げさな拍手に包まれながら下院本会議場を退場した直後、共和党のポール・ライアン下院議長は大統領への賞賛を喚起した。ライアン氏は演説を「ホームランだった」と称賛し、オバマケアの廃止や、共和党議員の念願だった税制改革をトランプ氏が指揮することに感謝した。

28日夜にトランプ氏が掲げた幅広い約束は、翌朝にはライアン氏の頭痛の種となる可能性がある。REUTERS/JIM LO SCALZO/POOL

■ 施政方針演説でも詳細を語らなかったトランプ氏

ライアン氏は声明で「より良い未来への道へと私たちを押し進めてくれるトランプ大統領に感謝したい」と述べた。

しかし、ライアン氏はこれからの数週間、あるいは数カ月のうちに、こうした熱狂ぶりから目が覚めるかもしれない。

なぜなら、トランプ氏は、連邦議会の議員たちに取り囲まれているのに、これからすべきことの詳細について語らなかったからだ。

たとえば医療についてトランプ氏は、オバマケアの代替案は「選択肢を広げ、アクセスを増やし、コストを削減すると同時に、より良い医療を提供する」ことを求めたが、すべて実現させるのは無理がある。

トランプ氏の新しい計画では、契約前発病のある人はそのまま保険を継続し、税額控除と医療貯蓄口座(HSA)で支払いの援助をするという。この税控除はどの程度で、誰が対象となるかはトランプ氏は語らなかったが、彼は「健康保険を誰もが利用できるようにする方法は、医療保険費用を下げることだ。私たちはそれを実現する」と約束した。

税制改革について、トランプ氏は法人税と中間層の減税を継続的に支持すると発言した。これは、ポール・ライアン氏ら共和党首脳も乗りやすい。「とても大きな、大きな減税になるだろう」と、トランプ氏は約束した。しかし卜ランプ氏は、輸入品への課税強化や輸出補助金にも意欲的だ。ライアン氏はこれも支持しているが、すでに産業界や上院では激しい反対が起きている。

トランプ氏が推進する道路、橋、トンネルなどを再建する1兆ドルのインフラ再生計画について、施政方針演説ではわずか56語しか費やしていない。今回語られた唯一詳細な約束は、公的資金と民間資本の両方を含め、「何百万もの新しい雇用」を創出することだけだった。

移民改革に関して、28日の演説に先立ちトランプ氏が示唆した不法移民の合法化を含む「妥協案」については一切語られなかった。そのため民主党は、トランプ大統領と歩み寄る必要はないと判断した。

「わが国で壊れているものはすべて修復できる。どんな問題も解決できる」と、トランプ氏は述べた。 「民主党と共和党は互いに手を取り、国益とアメリカ人の利益のために結束すべきです」

トランプ氏は、こうしたことを実行することがプロンプターの言葉を読み上げるよりもずっと難しいという現実に直面することになる。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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