フォルクスワーゲンの排ガス不正、1200人が早期に死亡する恐れ MITとハーバード大の研究で判明

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VOLKSWAGEN
The Volkswagen logo is seen at the company's display during the North American International Auto Show in Detroit, Michigan, U.S., January 10, 2017. REUTERS/Mark Blinch | Mark Blinch / Reuters
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大手自動車メーカー「フォルクスワーゲン」(VW)グループは2015年9月、世界中で販売した同社のディーゼル車1100万台に、排ガス試験をでの不正をためのソフトウェアを搭載していたことを認めた。

10月になって、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学の合同研究チームは、アメリカで販売された車の48万2000台から出る排ガスによって、全米で約60人の寿命が縮まり、回収が進まなければ140人が早期に死亡すると警告した。

イギリスの科学誌 「エンバイロメンタル・リサーチ・レターズ」が3月3日に発表した最新の研究によると、現在、同じ研究チームは、2008年から2015年の間にドイツで販売された260万台の影響を受けた自動車による死亡数の予測数を20倍高くし、少なくとも1200人の寿命が10年短くなると予測している。

その数字は、ドイツ当局がVWにすべての自動車を回収し修理するよう命じなかった場合、2700人に膨らむという。

影響を受けた車両(ドイツのヴォルフスブルクを拠点とするVWグループ・ブランドやアウディ、シュコダ、セアトなど、フォルクスワーゲン傘下で販売されたもの) は、2008年から2015年の間に約2200億マイル(約3540キロ)走行し、スモッグと酸性雨の原因となる24万トンの窒素酸化物を大気中に放出した。

研究グループによると、早期に死亡する人々のほとんどはドイツ人ではないという。推定によると、風で国境を越える排ガスによって、ドイツ国外の700人が早期に死亡する可能性がある。内訳はポーランドで160人、フランスで84人、そしてチェコでの72人などだ。イギリスでも、30人が死亡する可能性がある。

「全面的に越境大気汚染が原因です」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)でこの研究を共同執筆した宇宙航空学のスティーブン・バレット准教授は、ハフィントンポストUS版に語った。「私たちは、ドイツ国外で走っているドイツ車両を考慮に入れていませんでした」


2015年9月25日、中央ドイツのヴォルフスブルクにあるフォルクスワーゲンの本社で監査役会が行われていたが、同社の前では環境保護団体「グリーンピース」が抗議を行い、ピノキオの人形が並べられた。JOHN MACDOUGALL VIA GETTY IMAGES

研究チームは、ドイツの連邦自動車庁が収集した新しい情報から、フォルクスワーゲンの不正排ガス問題による公衆衛生上の影響を研究したデータを強化した。科学者グループは、広く受け入れられている疫学的手法を適用して研究結果を導いた。数十年にわたって大集団に及ぼす汚染への暴露の影響を追跡した研究で集められた結果だった。

フォルクスワーゲンの不正排ガス問題は、ウエスト・バージニア大学の「代替燃料エンジン大気汚染物質センター(CAFFE)」の研究結果から明らかになった。

CAFFEはフォルクスワーゲンの「パサート」「ジェッタ」「X5」の排ガスを測定し、ジェッタが基準の15〜35倍、パサートは5〜20倍の窒素酸化物(NOx)を排出していたことが判明した。ドイツでは、VWの車両が規制値を5倍上回っていた。

CAFFEの研究は予期せぬ影響をもたらし、「ディーゼルゲート」として知られるようになった。自動車業界の企業の不正行為に関する他の事件とは違って、排ガス試験をごまかすために、違法ソフト「ディフィート・デバイス」を設計したとして訴追された元従業員の少なくとも1人は、懲役刑に直面している

フォルクスワーゲンは1月11日、アメリカ司法省に刑事責任を認めて民事制裁金や罰金など43億ドル(約5000億円)を支払うことで合意した。民事では自動車の所有者やディーラー、環境規制当局との間で175億ドル(約2兆円)の支払いで和解している。また同社は、この問題に対処するためにさらに192億ドル(約2兆1800億円)を確保している。

フォルクスワーゲン社によると、ヨーロッパで300万台以上のリコールを完了した。ドイツではおよそ150万台がリコールとなり、週に25万台の割合でリコールしたという。

「この調査についてコメントすることはありません」と、フォルクスワーゲンの広報担当者ジェニーン・ギ二バン氏は、ハフィントンポストUS版に宛てたメールで回答した。「フォルクスワーゲンは、このディーゼルの件をできるだけ早く解決することに全力で取り組んでいます」

問題は、フォルクワーゲンだけではない。スキャンダルが起こった直後、アメリカの環境保護庁(EPA)は、同庁のコンプライアンス試験を強化すると表明した。

EPAは1月12日、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のディーゼル車約10万4000台の車両にディーゼル排出試験を操作するための不正ソフトウェアを使用したと発表した

バレット准教授は、将来的により多くの企業の関与が発覚すると見込んでいる。

「フォルクスワーゲンは見つかってしまったが、多くのディーゼル車両は、人が思っている以上に排出している。さらに広範な問題になるでしょう」と、バレット氏は語った。「同じような他の『ディフィートデバイス』はないかもしれませんが、他のメーカーの車も、認定されたとき以上の排ガスを出している可能性が高いのです」

「ドイツでは、スキャンダルが起きた直後に排ガス試験の基準を引き上げました。もともと基準が厳しいアメリカでは、今後の事故を防ぐためにさらに厳しい取り締まりが必要かもしれません」と、バレット氏は述べた

今後、EPAの取り締まりが問題になる可能性がある。ドナルド・トランプ大統領はEPA予算の4分の1を削減し、職員の5人に1人を解雇することを提案しており、事実上、すでに身動きができなくなっているEPAの業務をまひさせることになる。

化石燃料産業との関わりが深いスコット・プルーイット環境保護庁長官は、規制の厳密な解釈を徹底的に見直す意向を表明し、オバマ前政権による政府の行き過ぎた規制を阻止すると述べている。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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