デートDVの実態とは? 「無理矢理キス」「全額おごって」も該当(調査結果)

デートDVの事例の中には、「LINEの既読がつかないことで怒る」といったいわゆる束縛の一種としてよく耳にするようなものも含まれる。
Studio shooting - copyspace
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martin-dm via Getty Images

交際中のカップルの間で起こる暴力「デートDV(ドメスティックバイオレンス)」について、交際経験のある10代女性の約44%が経験していることがNPO法人などが実施した広域調査でわかった。調査対象は1都10県に住む中高大学生の男女2122人で、若い世代のみを対象としたデートDVの全国的な被害実態調査は初めて。

調査の結果、交際経験がある女性の44.5%、男性の27.4%にデートDVの経験があった。10代に限ると女性43.8%、男性26.7%が経験しており、若い女性の約半数が何らかの形でデートDVの被害にあっているという実態が浮き彫りになった。

デートDVは、恋人同士の間で起きるDVを指す言葉。デートDVは5つのタイプに分けられ、殴る・蹴るといった身体的な暴力だけでなく、「通話履歴やメールをチェックする」「強引にAV動画などを見せる」といった精神的な暴力や、「デートの費用を全て出させる」などの経済的暴力も含まれる。

今回の調査はNPO法人エンパワメントかながわ、ガールスカウト日本連盟などの支援団体によって実施されたもの。総合学習などデートDVの啓発授業を行った後に、生徒等に対してアンケート調査を実施した。

■調査概要

調査方法 :総合学習などデートDVの啓発授業後、アンケート調査を実施

調査地域 :東京、岩手、埼玉、千葉、神奈川、静岡、宮崎、長崎などの1都10県

有効回答数:男女の中高大学生2122人(女性1321人、男性801人)

調査日時 :2016年10月~12月

■デートDVとは?5種類の「暴力」の事例一部

DVという言葉は広く知られているものの、「デートDV」という言葉は認知度が低い。2014年度の「男女間における暴力に関する調査」によると、「デートDVについて知っているか」という問いに対して、「言葉があることは知っているが、内容はよく知らない」と答えたのは33%、「言葉があることを知らなかった」という答えに関しては31.5%だった。

前述したように、デートDVには5つのタイプがある。そのうちの一つである「行動の制限」には、「LINEの既読がつかないことで怒る」といったいわゆる束縛の一種としてよく耳にするような事例が含まれている。「SNSの投稿を常にチェックする」など、SNSへの関心度が高い若者たちだからこそ生じるような事例も確認できる。

デートDVの種類別の具体例(一部)は以下の通り。

①行動の制限

LINEの既読がつかないと言っていつも怒る

自分以外の異性と口をきくなと約束させる

SNSへの投稿を常にチェックし、気に入らないことがあると怒る

②精神的暴力

他の人の前でも、デブ、バカなどと言う

趣味や特技をけなしてやめさせる

別れたら自殺すると言う

③経済的暴力

高いプレゼントを無理やり買わせる

デートの費用を払うよう強要する

アルバイトをさせてお金を巻き上げる

④身体的暴力

思い通りにならないことがあるとキレて殴る

腕などを強い力で握る

髪を引っ張る

服で見えないところを噛んだり、つねる

⑤性的暴力

無理やりキスやセックスをする

コンドームをつけるなど避妊に協力を得られない

見たくないのにセックスの動画を見せる

裸の写真や動画を送らないと別れると脅す

(『デートDV110番——NPO法人エンパワメントかながわ』より。)

■予防授業を受けて、やっと「自分はデートDVの被害にあっていた」と気づいた

今回の調査結果をふまえて、デートDVの被害実態や防止法などについて、NPO法人エンパワメントかながわの理事長・阿部真紀氏に電話取材した。デートDVの始まりは些細な束縛だったとしても、どんどんエスカレートしていき、時にひどい暴力に至ってしまうケースがあると阿部氏は指摘している。

——デートDVの被害の一例として、若い人たちからはどのような声が寄せられましたか?

1番多かったのは、「LINEやメールなどの返信が遅いことに怒る」という事例です。その他にも、少数でしたが「裸で外に出ろ」と強要されたというケースもありました。男性側の被害としては、「高いプレゼントを買ってほしい」と言われたという声が最も多かったです。

——特に女性に多いですが、調査の結果では、デートDVの被害にあった若者の数が約半数にも上りました。デートDVの被害を減らしていくにはどうしたら良いのでしょうか。

まず、デートDVの認知度が低いということを問題に感じています。今回の調査はデートDVの予防授業を行った上で実施したもので、授業を受けて、やっと「自分はデートDVの被害にあっていた」と気づいた人たちが多かった。そもそもデートDVについて知らない人が圧倒的に多いというのが現状のため、このような啓発活動や予防教育を進めていき、認知度を高めていくことが第一だと思っています。

——現在のDV防止法は、婚姻関係や事実婚状態にない恋人間の暴力は対象外です。デートDVの被害にあう人たちのセーフティーネットとなるものはあるのでしょうか。

NPO法人エンパワメントかながわでは、フリーダイヤルの「デートDV110番」を設けて被害にあっている女性・男性から電話相談を受け付けています。また、3月に「デートDV防止全国ネットワーク」を設立し、相談機関となる約80団体とともに予防教育や啓発活動に取り組んでいきます。

——中高大学生に実施する予防教育では、被害を防ぐためにどのようなことを伝えているのでしょうか。

デートDVの被害にあっている当事者は、本来好き合っている恋人同士ということもあって、なかなか物事を客観視できません。ですので、被害にあった時にどうすればいいかというよりも、「被害にあっている人が周りにいた時にどうすればいいか」ということを伝えています。

その人を思って「別れなよ」とアドバイスすることは、別れを勧められることを嫌がり距離を置かれてしまうなど、時に逆効果になってしまいます。「それはデートDVというんだよ。辛いなら、いつでも相談して。私はあなたの味方だよ」と伝えて相手に寄り添うことが大事だと伝えています。

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