オランダで支持集める極右政党、Twitter駆使し表に姿を現さない、その過激な選挙活動とは

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GEERT WILDERS
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ヨーロッパでは極右ポピュリズム(大衆扇動型)政党の党首が、近年ますます存在感を高めており、奇抜な顔ぶれが揃っている。中でも、オランダのヘルト・ウィルダース氏は突出している。

ウィルダース氏は従来型の選挙活動はほとんどしない。討論会に出ず、テレビ局のインタビューに出ず、全国紙の取材にも応じない。本人の身の安全を確保するため、10年以上も24時間厳重な警備下にあるからだ。支持者とコミュニケーションする手段は、Twiter上の扇動的な投稿がほとんどだ。1990年から政治活動をしているが、自らをマイナーな扇動主義者として位置付けている。

ウィルダース氏が党首を務める自由党は、反イスラム、反移民政策を掲げる政党だが、党員は彼1人だけだ。しかし、3月15日のオランダ総選挙では、全政党の中でも最多得票を獲得しそうな勢いだ。

オランダは複数政党が乱立する政治体制なので、ウィルダース氏が連立与党の一員になる可能性はゼロに等しい。しかしオランダ政治全体を自分のペースに巻き込み、歴史的に寛容性のある社会の中で差別的な考え方を拡散することに成功してきている。

今回のオランダ下院選は、ウィルダースがキャリアをかけて選挙戦の争点にしようと企んできた事柄を中心に動いてしまっている。とりわけオランダ社会のイスラム教徒や移民に関する議論だ。ウィルダースはコーランの禁止やヒジャブ(顔を隠すためのスカーフ)を被るイスラム教徒の女性に課税するといった政策を訴えている。エスニック・ナショナリズム(民族主義)を訴え、メディアを計算して利用することで、選挙戦の話題を誘導してきた。

アメリカのドナルド・トランプ大統領と非常に似たやり方で、ウィルダースは扇動的発言や過激な政策提案を繰り返し、注目を集めている。エスタブリッシュメント(既得権益層)の政治家たちも、ウィルダースの見解についてコメントせざるを得なくなっている。ウィルダースの手法は、トランプ大統領が政治の世界に足を踏み入れる以前から使っているものだ。しかしトランプ大統領の戦略を明らかに一部取り入れ、「オランダを再びオランダ人の国に」すると公約している。


オランダの極右政党「自由党」の政治家ヘルト・ワィルダース氏が、2017年3月11日、南部の自治体ヘールレンでの決起集会で笑顔を見せる様子。DYLAN MARTINEZ/REUTERS

テロ攻撃やイスラム過激派が関わる事件が起こるたびに、ウィルダース氏は素早くこれを利用して79万7000人のフォロワーにツイートしている。その場でイスラム教徒を非難したり、国境の閉鎖を訴えたりという調子だ。

ウィルダース氏はさらに、他国のニュース番組を賑わすことさえできる。2016年12月、ドイツ・ベルリンでテロリストが運転するトラックが群衆に突っ込む事件が起きた後、手に血がついているように加工したドイツのアンゲラ・メルケル首相の画像を投稿した。彼の影響力に便乗し、アメリカ・アイオワ州選出のスティーブ・キング議員は白人至上主義的な言葉を使ってウィルダース氏を肯定するようなツイートを投稿した。

トランプ大統領とよく似たウィルダース氏の桁外れの人格や、エリートへの攻撃、オランダ人のアイデンティティ保護といった論法は支持者への受けがいい。彼はオランダの先進的な価値観を歪めることで、「イスラム教徒の移民は同性愛者の権利保護といった理想の実現に逆行しており、したがってオランダ国家の一員ではない」と主張している。

ウィルダース氏は2016年12月9日、2014年の演説集会でオランダ国内に多くいるモロッコ系移民に対するヘイトを扇動した罪で有罪判決を受けたが、罰則は与えられなかった。演説中、ウィルダース氏は集まった支持者たちに、「モロッコ人を国から追い出せ」と繰り返させた。裁判後ウィルダース氏の支持率は上昇し、2月に行った選挙活動開始演説の際、ウィルダース氏は「オランダにはモロッコ人のクズどもが大勢いる」と発言した

難民の流入が増加し、欧州連合への無関心が拡大、そして既得権者の政党への反感が高まる中、ヨーロッパでポピュリズムが復権している。ウィルダース氏は、彼の思想に反対することで足掛かりをつかんだ小規模政党の興隆を通し、オランダの政治の地方分権化にさえ貢献した。

しかし、移民賛成の立場をとるデンク(訳注:「考える」の意)のような新興政党はいずれもウィルダース氏ほどの成功は収めていない。2004年に保守派の与党自由民主党(VVD)と袂を分かって以来、ウィルダースはオランダの政治では馴染みの顔となり、自由党は2010年の選挙で3位となった。

こうした人気にも関わらず、ウィルダース氏がおそらく実現できないと思われること、あるいは彼自身も実現したくないことがある。実は、政治そのものだ。選挙に出馬している政党は数十に及ぶが、単独政権をつくるのに十分な議席を獲得できる政党はゼロだ。代わりに、台頭するウィルダースの差別的な政策を排除しようとする連立政権が樹立する可能性が高い。3月12日に発表された調査では、ウィルダース氏の自由党の支持率は13%で、VVDに数ポイント遅れをとっている。

有権者の85%以上が彼に投票したくないと考えていることを考慮すれば、ウィルダース氏がオランダ政治に及ぼしている影響の大きさは注目に値する。他国の極右候補は経済の低迷を武器にして従来の政策を批判することが可能だったのに対し、オランダ経済は上向きで、失業率は過去5年間で最低を記録している。


2017年3月13日、選挙活動を行う中、オランダ、ロッテルダムで開かれた記者会見に出席するオランダのマルク・ルッテ首相。DYLAN MARTINEZ/REUTERS

一見するとワイルダース氏はまたもや連立政権から締め出されたようだが、すでに国政を担う政党へ重大な影響を及ぼすことに成功している。極右派のポピュリズム運動が顕著な他のヨーロッパ諸国と同様、ウィルダース氏のような人物には、政治の議論を本筋からそらす力がある。

例えば、オランダ下院は2016年12月、一部の公共の場でヒジャブの着用を禁止する法案を可決したが、この政策はかつてウィルダース氏が支持していたものだ。

自由民主党(VVD)のマルク・ルッテ首相もまた、ウィルダース氏支持層の切り崩しを狙い、政略を保守寄りに切り替えた。ルッテ首相は1月、オランダの生活習慣を尊重しない人々は「普通に振る舞わなければならない。さもなければ国を出ていくことだ」とする「ウィルダース調の」公開書簡を発表し、多くの議論を呼んだ。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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