トランプ大統領の入国禁止令に翻弄される移民たち

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イラク出身のエンジニアで2児の母であるライラさんは、トルコの難民キャンプで2年間過ごした後、2016年11月にフロリダ州ジャクソンビルに定住の地を見つけた。しかし義理の父はトルコで足止めされ、残りの近親者は未だにバグダッドにいる。本人が落ち着き先を見つけた今、彼女は家族を呼び寄せようと必死になって努力している。

ドナルド・トランプ大統領が打ち出した、移民の受け入れを120日間一時停止する入国禁止令は3月16日、ハワイ連邦地裁によって一時差し止められたが、トランプ大統領は「連邦最高裁まで争う」と、強硬姿勢を貫いている。今後、ライラさん家族を呼び寄せるのは、はるかに困難となることが予想される。

トランプ大統領の新しい大統領令は、1月27日に署名し裁判所から差し止められた大統領令と比べて、制限を緩和した部分もある。しかし新大統領令は、アメリカの移民受け入れプログラムに大打撃を与える点では、初回のものと比べて変わりがない。以前の大統領令と同様に、トランプ大統領は本会計年度の移民受け入れ枠を11万人から5万人に削減したままだ。新大統領令では、あらかじめ日程が決まっていた場合を除き、すべての難民がアメリカに120日間入国できない点では変わりがない。

「文言がどう変わろうとも、大統領令の意図するところは変わらず、難民の受ける打撃は同じです」とRCUSA(アメリカ難民委員会)のナオミ・スタインバーグ理事は述べた。難民政策により「難民の家族は引き裂かれ、5万人以上の国外に暮らす難民たちが非常に追い詰められた危険な状態のまま放置されることになります」と、スタインバーグ氏は述べた。

「我々の見解では、今回の大統領令は前回と同じものの焼き直しにすぎません」と難民受入れ支援組織CWS(チャーチ・ワールド・サービス)のエロール・キケッチ事務局長は付け加えた。この団体はアメリカ国内に9つある難民受入れ支援組織の1つだ。

トランプ氏の最初の大統領令ではではシリアからの難民の入国を無期限停止としていたが、今では他国からの難民と同様に最低限120日間の入国停止となった。しかし120日間とはいえ難民受け入れプログラムが機能しなくなることで、アメリカで新生活を始めようとする何千人もの難民たちの計画が、完全に狂いかねないことに変わりはない。

難民がアメリカ入国の審査を受ける場合、段階を踏んで承認を受けねばならず、承認項目の有効期間はそれぞれ期限が異なる。たとえば、難民との面談内容は15カ月有効だが、健康診断が有効なのは90日間だ。要するに120日間の難民受け入れ中断期間内に、様々な承認項目が失効する可能性があるということだ。ということは項目によって、再度審査を受けなければならなくなる。これでは何年も待たされることになりかねないと、スタインバーグ氏は述べた。

「現行のアメリカの身元調査手続きが極端に厳しいものなので、安全審査全体と、難民たちが受けなければならない審査は一刻を争う性質のものです」と、スタインバーグ氏は語った。「ですから入国禁止令の有効期間中にアメリカ入国を希望していた何千人もの人々は、審査基準があまりにも厳しいせいで振り出しに戻ってしまうでしょう」

サキナ・アロスマンさん(27)はこういった政策の影響を直接受けて困惑している。彼女はシリア出身のクルド族難民で、2016年11月妹とニューヨーク州のバッファローに落ち着いた。弟が1月に合流したが、両親と残りの兄弟はイラクのクルド人自治区の首都アルビールでいまだに足止めされている。残りの家族はトランプ大統領が最初の大統領令に署名した後に、アメリカ行き航空機の予約を取ったが、いまだに予約を取り直せていない。アロスマンさんや兄弟に対する説明は全くないままだ。

アロスマンさんによると、彼女の家族はビザを取得済みで2月15日に到着するはずだったという。「私たちは心配でたまりません」と語った。

トランプ大統領の120日間一時受け入れ停止で、弱い立場の難民が被害に遭う

全体的に見て、再開後の移民受け入れ政策がどのようなものになるのか、いまだに相当不透明なままだ。どのような身元調査基準が追加され、どういった人が許可を得られ、そもそも難民全員が歓迎されることになるかは不透明だ。

前回のものと同じく、新しい大統領令でも州や地方当局が難民受け入れについて、より大きな発言力を持つと定めてある。2015年には多くの州知事がシリア難民の受け入れに難色を示したが、法的に入国を認められた難民の居住を阻む権利はないとされた。

移民受け入れ支援団体ではすでにスタッフの削減が始まっている。バラク・オバマ元大統領が定めた11万人の受け入れ枠を、トランプ大統領が削減すると決定したからだ。難民受け入れNPO組織は定住を支援した難民の数に応じて助成金を受ける。この助成金は難民やその家族が、住居、医療、職、学校を探すのを支援するために使われる。

スタッフの数を最小限に抑えた団体が、120日の間にすでにアメリカに入国した難民の支援を担うこととなる(2017会計年度になってすでに入国した難民の数はおよそ3万7000人)。7月中旬にその期間が終わると、本会計年度中の難民受け入れ枠の残りの人数の落ち着き先を探すのに、約2カ月半しか残らない。およそ1万3000人だ。

「4カ月間経った後になると、難民を支援する能力が非常に限られるということになります」と、ケキッチ氏は述べた。「ですから、政府はまさに最悪の状況を引き起こしてしまったのです」

財源のほかに、難民受け入れプロセスを円滑に実行するにあたって、支援組織が政権の意向と協力を頼る部分は大きい。難民の身元調査には、誰かしら連邦政府機関の職員が直接面談を行うことが必須だからだ。

「私が一番心配なのは、移民の受け入れには政権の意向が関与する部分が大きいということです」と、元NSC(国家安全保障会議)のスタッフで難民問題に携わったエイミー・ポープ氏は述べた。「政府が受け入れプロセスが回るよう配慮しなければ、全てが急停止してしまいます」と、ポープ氏は指摘する。

現時点では、ライラさんの家族のような人々は行き詰まっている。アメリカに定住した難民は1年後にグリーンカード(外国人永住権)を申請できる。それ以前の時点で、移民限定の家族呼び寄せプログラムを2つ利用できる。

しかし、家族呼び寄せプログラムが2つとも両方「120日間一時受け入れ停止の対象となり、難民受け入れ枠が削減されたため、家族を呼び寄せるまで120日間よりずっと長く時間がかかりそうな雲行きです」とIRAP(国際難民支援プロジェクト)の政策担当理事を務めるベッツィー・フィッシャーは述べた。要するに、家族によっては再開までに何年も待たなければならない場合が出てくるということだ。

ライラさんは2016年11月に入国後家族呼び寄せの手続きを開始したが、状況がどうなるか不透明な状態だ。

「バグダッドにいる家族と、トルコにいる義父のことが心配です」と、ライラさんはアラビア語で語った。「トルコでは生活の安定がありません。就労できないんです。権利というものがトルコではもらえません。家族で頑張ったのに、完全に無駄になりました」

ライラという名前は仮名。家族がまだ中東にいることを配慮した。

ロワイダ・アブデラジズとニック・バウマンの寄稿をもとに記事を執筆した。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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