たばこの屋内禁煙の影響は? 路上禁煙を進める千代田区に聞いてみた

たばこの屋内禁煙に関して、千代田区の担当者に区への影響などを聞きました。

厚生労働省が3月、受動喫煙対策となる改正健康増進法原案を公表し、屋内禁煙の対象施設や規制内容が示された。

現在喫煙が認められている施設や店舗の多くに、全面禁煙や喫煙室の設置が義務付けられる見通しだ。受動喫煙の問題から、たばこを吸う吸わないに関わらず、国民的な関心ごととなっている。

「屋内」禁煙の影響は、「屋外」の路上喫煙対策に取り組む自治体にも広がる。国の基準や規制次第では、条例や施策の運用変更を迫られる可能性もある。

2002年に全国で初めて、歩きたばこに罰則を設ける条例を制定し、路上喫煙ゼロを目指す東京都千代田区。国が進める屋内禁煙について、「喫煙者は吸うのをやめないと思う。外に出てくる人も増えるので、吸える場所を整備する必要がある」と語る安全生活課の担当者に、区への影響や考えを聞いた。

■喫煙者と非喫煙者が共存できるように

--歩きたばこなどを禁じている生活環境条例の運用状況について教えて下さい

条例で喫煙ができない場所を定めています。大きく分けると、道路上とそれ以外、また道路上でも公道と私道では運用が違います。皇居内以外の公道上と、区が指定した場所での喫煙を禁止しています。秋葉原公園は公園内ですが路上とみなし、禁煙エリアで喫煙すれば過料処分にしています。過料処分の対象は、原則公道上だけです。

次に私道上は、条例で過料処分はしていませんが、歩きたばことポイ捨てに対しては規定は設け、注意したり周辺の喫煙所を案内したりしています。また公園内や、公開空地というビルやマンションの敷地で誰でも通れる場所も、私有地なので努力義務という形で歩きたばこやポイ捨てはやめましょうというふうに規定しています。

千代田区の路上禁煙エリア

--屋外の喫煙場所は、私有地を除くと秋葉原公園以外の公園内のみに限定しています。屋内の喫煙所で喫煙するように促しているのでしょうか

千代田区としては屋内喫煙所の設置を推進しています。民間が独自に設けているほか、2009年からテナントに助成金を出し、喫煙所を数を増やしています。ただ、テナントがなかなか空かず、家賃も高いところもあるので、増えづらくはあります。民間の会社は、社員用の喫煙所は自分で賄ってほしいと思いますし、また今後も喫煙所は増やしていきます。

(健康増進法の)受動喫煙の防止は、喫煙自体をどんどん減らそうという流れですが、区としては、路上喫煙対策をする私たちの課は特に、分煙のイメージが強いです。喫煙はあくまでも本人の趣向なので、私たちがやめましょうとは言っていません。ただ、喫煙者と非喫煙者が共存できるように場所をしっかり整備し、お互いうまくやっていきましょうという方針です。

千代田区の助成制度を利用してたばこ店に設置した屋内喫煙所

--歩きたばこに罰則を設けた条例は当時、全国で初めてでした。過料処分があることで、路上喫煙者は大幅に減っているのでしょうか

14年ほど前になりますが、住民から(ポイ捨て、歩きたばこに関する)要望が強かったと伝え聞いています。問い合わせや苦情のほか、喫煙者からの意見も多かったと思いますし、かなりの反響があったとは聞いています。

区民の方の話では、大通りなど目立つ場所や、ポイ捨ても以前に比べたらすごく減ったと聞いています。ただ、特に秋葉原は初めて来た人もかなりいるので、吸ってしまう人も多いです。秋葉原という土地柄か、特に外国人が目立って多いわけではないですが、中国人や欧米人もいます。

■屋内禁煙で外に出る人が増える

--厚労省が改正健康増進法の原案で示した屋内禁煙が進むと、屋外の喫煙を担当する区への影響が大きいのでは

今の段階で特に対策は進めてはいません。ただ、屋内が禁煙になれば外に出てくる人も増えるでしょうし、「煙や臭いが充満して、屋外でもすごい困っています」という意見をよくもらいます。

それを防ぐには、煙の管理ができればいいのかなと思います。区が助成する屋内喫煙所を含め、吸える場所を整備する必要が出てくると予測しています。

おそらく喫煙者は禁煙しないでしょうし、吸う場所が変わるだけだと思います。千代田区は分煙を目指しているので、喫煙所を増やしながら、ちゃんと決められた場所で吸うよう、取り締まりを含めてお願いしていくことになります。

--助成制度への影響や、設置済みの喫煙所が使えなくなる可能性は

もちろんあるでしょう。現状では喫煙所をどんどん増やしていき、決まった段階で対応していくことになります。既存の喫煙所は5年間据え置くという話なので、様子見という状況です。

今の規制内容なら、事業所内や飲食店も、喫煙所の設置が認められています。その他店舗は規制の対象になっていないですし、特にたばこ店は対象外というので、問題ないのかなと。幸い飲食店での設置はありません。

問題が出るとすると、厚労省が喫煙室に規制を設けると言っているので、その基準に合致するかどうかをよく精査する必要があります。それがクリアできれば、喫煙室については今のところは問題ないと思っています。

--屋外の喫煙場所が限られた中で、さらに屋内が禁煙になると、吸える場所がなくなるのではといった指摘はありますか

「喫煙所をもっと増やしてほしい」という意見は毎月何件かありますが、「吸える場所がなくなってしまう」という声は、1件あるかないかです。自宅で吸うか、各企業で喫煙所を設置するよう努力してもらい、今の世情に合わせて習慣を変えてもらわないといけなくなると思います。

どちらかと言うと、取り締まりを求める声が圧倒的に多いです。敷地や公園内でも、煙に対する苦情が多くて、「取り締まりできないので『喫煙所を使ってください』というお願いしかできないんです」と伝えています。吸わない人からすると、どうしても臭いや煙が耐えられないようで、「なんとかそこも取り締まるようにしてくれないか」という声が多いです。

--助成をした喫煙所の周辺での苦情はあるのですか

1カ所だけ。2017年度に竹橋にあるコンビニが屋内喫煙所を作りましたが、開け閉めの際に煙が漏れていたようで、苦情が入って閉鎖しました。煙が原因での閉鎖は、初めてかもしれないです。苦情については、運営者に問い合わせ、「しっかりやってください」と言うしかないです。それで助成をやめるところはないです。

インタビューに答える千代田区安全生活課の担当者

--他の自治体と比べ屋外の喫煙場所が少なく、過料も課すなど、厳しい対応を取っている理由は

始めは千代田区も禁煙エリアが狭かったんです。区民の方々からの意見を踏まえて、何年かごとにどんどん増えていき、2012年ごろにほぼ全域になりました。それなりの裏付けや要望があったと思っています。厳しいかで言うと、2000円の過料を徴収をしていますが、苦情や意見はほとんどないです。逆に、「もっと厳しくしてもよいのでは」とか、「刑罰化してくれ」と言う人もいます。最近では、「私道も取り締まってほしい」という意見がすごく多いです。敷地内は、自助努力でなんとかしてもらうしかないんですが・・・。

--そうした意見を踏まえて、今後はより喫煙を規制する考えはありますか

いえ、公道上は、指導員の人数を増やすぐらいで、これ以上取り締まりの方法は変わらないと思います。吸わない人にとって、禁煙にするかはおそらくどちらでもよくて、煙や臭いをかぎたくないので、自分の周りで吸うなという話だと思います。もしたばこが煙や臭いが出ないものになったら、不満は消えるのでは。であれば、特に全面禁煙にしなくても、分煙で煙や臭いが漏れなければ、問題にはならないと思うんです。

喫煙者なりのルールがあって、「飲食店で子どもの近くには絶対座らないし、道路上でも隅っこで邪魔にならないように吸っている」と言う人は結構います。周りに若干影響を与えているという自覚はある人がほとんどだと思います。

--小規模な飲食店が例外になるかどうか、区への影響はどうでしょうか

直接ではなく、それによって屋内から屋外に出てきた喫煙者が3、4人も同じ場所に集まれば、煙はすごく膨大になって、非喫煙者から不満が出るのではないかと強く懸念されます。それに対して、例えば飲食店側に「喫煙場所を変えてください」と対策をお願いすることは考えられます。

--喫煙所の設置が認められない施設もあり、外も中も喫煙場所がなくなります

公開空地や公園内など、現在過料の対象でない屋外の場所は、人がたくさん集まって吸うようになるだろうと想像しています。それに対して苦情が出たら、公園内に改めて喫煙所を作るのか、それとも公園内を禁煙にしてしまうのか。公園内を禁煙にしたら、その人たちはどこに行くんだという話になると、喫煙所の設置の仕方や考え方が変わる可能性があると思います。それで、いよいよ区で独自で作ろうという話が出ないとは思わないです。ただそれは世論次第です。

(喫煙者は)たばこをやめないと思うので、吸う場所がどこに変わるのか。屋外に場所を確保する考えになるのかもしれないですが、空気が拡散します。煙と臭いを管理は屋内分煙が一番やりやすいと思うのですが・・・。

今が一番の過渡期だと思うので、半年、1年後にはガラッと変わっているかもしれません。世論も変わる可能性があるので、そうすると自治体も変わらざるを得なくなってきます。

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千代田区長選

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