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ロシア全土に広まった抗議デモ 背景には反体制派の「告発動画」があった

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RUSSIA PROTEST DUCK
(Photo by Alexander Petrosyan/Kommersant via Getty Images) | Kommersant Photo via Getty Images
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ロシアの首都モスクワをはじめ、サンクトペテルブルクやウラジオストクなど90以上の都市で3月26日に開かれた、プーチン政権の汚職に抗議するデモに数万人もの人々が参加した。全国規模で行われる抗議デモとしては、過去5年間で最大規模となった。ロシア政府に対する一般市民の批判が驚くほどの規模で示されたこのデモは、ロシア全土に広がった。

ロシア政府は抗議デモに参加したジャーナリスト、通行人の一部までも拘束し、その数はモスクワだけでも1000人を超えた。デモを呼びかけた野党指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏も、15日間の身柄拘束と罰金の支払いが命じられた。


2017年3月27日、法廷に現れたロシアの野党政治家アレクセイ・ナワリヌイ氏。モスクワの抗議デモに参加中に身柄を拘束された。ANADOLU AGENCY VIA GETTY IMAGES

当局の予想以上に大規模となったが、このデモはある調査報告の動画をきっかけに、何週間もかけて計画されていたものだった。大きな反響を呼んだこの動画は、ナワリヌイ氏の汚職告発団体「反汚職基金」が2日に公開したものだ。ドミトリー・メドベージェフ首相が贈収賄で莫大な不動産資産を集めていたと告発する内容だ。

動画の長さは50分近い。書棚の前に腰を下ろしたナワリヌイ氏が視聴者の方に向かって歩きながら調査報告をする姿が映し出される。動画には、視覚効果を凝らし、証拠文書の画像やメドベージェフ首相と関連があるとされる豪華な不動産物件の映像などが映し出される。

動画には、広大な豪邸の敷地をドローン撮影した映像も使用されている。ナワリヌイ氏は、サウナやテニスコート、池などを備えた邸宅にはそれぞれ何千万ドルもの資産価値があると主張している。メドベージェフ首相と関連があるとされる邸宅の一つにアヒル専用の家がついていたことから、抗議デモの参加者らは26日のデモで、ゴム製の黄色いアヒルを持参した。


2017年3月26日、おもちゃの黄色いアヒルを掲げてモスクワの反汚職デモに参加する男性。ALEXANDER MIRIDONOV/KOMMERSANT VIA GETTY IMAGES

ナワリヌイ氏は動画の中で、こうした不動産物件はどれも本人名義ではないが、事実上はメドベージェフ首相の持ち物になっていると述べている。動画によると、メドベージェフ首相は大学時代の友人や慈善協会からなる仲介人のネットワークを有しており、そのため莫大な資産の集積が可能になっているという。

動画の中でナワリヌイ氏が紹介した、資産価値8500万ドル(約95億円)とされる不動産物件は、ロシアのある資産家からメドベージェフ首相の大学時代の友人イリヤ・エリシーバ氏が運営する慈善団体へ寄付された。ナワリヌイ氏は、これは新興財閥からメドベージェフ首相への贈賄にあたるもので、慈善団体への寄付を通じた粉飾、隠蔽行為だと主張している。

「前大統領であり現首相であるロシアの副司令官は、慈善団体という形で不正なネットワークを築き、新興財閥から賄賂を得たり、全国各地で狂ったように自分の豪邸や別荘を建てるのに利用しています」と、ナワリヌイ氏は動画の中で述べている。

動画はメドベージェフ首相を偽善者として描き出しており、首相が汚職を非難する声明を出す場面が大量に散りばめられている。動画では1990年代にロシアでヒットした曲「アメリカン・ボーイ」も流れる。これは、メドベージェフ首相が2011年に大学の同窓会で、音楽に合わせてぎこちなく踊る姿を撮られた時に流れていたのと同じ曲だ。


ドミトリー・メドベージェフ首相に対する抗議デモに向き合うロシアの機動隊。2017年3月26日、ロシア、サンクトペテルブルクにて。

「反汚職基金」の動画は、YouTubeで再生回数が1300万回を超え、多くのロシア国民の怒りを買っている。メドベージェフ首相とクレムリンは汚職疑惑について沈黙を守ってきたが、国会の下院議員の中には調査を求める声もある。

汚職は、公共部門でも民間部門でも、ロシアに深く広がる問題だ。汚職を監視する非政府組織「トランスペアレンシー・インターナショナル」では、腐敗認識指数で、ロシアを176ヵ国中131位に位置付けている。

ロシア政府はこのところ、汚職疑惑が次々とふりかかっている。2016年に流出したパナマ文書(パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出し、2016年4月3日に公表された機密の金融取引文書)には、プーチン大統領と家族が、友人や仲介業者を通して少なくとも20億ドル(約2.2兆円)規模の海外資産や貸付金のやりとりに関与したとみられる記述がある。

しかし、ナワリヌイ氏の動画と違って、パナマ文書で暴露された内容は、ロシアではほぼ無視されている。ロシア国内の報道機関はプーチン氏への疑惑を広く扱わず、プーチン氏は「ロシアの弱体化を図る外国の陰謀」として、告発を退けた。他の国々では、文書が流出して大規模なデモが起き、アイスランドのように首相の辞任につながったケースもあったが、モスクワでは小規模の抗議デモが発生しただけだった。

しかし、26日のデモはいくつかの点で注目に値する。例えば、抗議活動に参加する若者の割合が高かったことや、当局がデモは許可していないと警告していたのに、多くの人が積極的に参加したことなどだ。ロシア政府は、一部の人間が扇動したものと主張し、抗議デモを矮小化しようとし、国営テレビもほとんど報じていない。

プーチン氏は2018年の大統領選で4期目を目指すとみられるが、どのような対抗馬が現れるかは不明だ。今回のような抗議活動が特定の汚職疑惑に対して1回限りのものに終わるのか、あるいはより大きな反政府運動へと発展するのかも見通せない状況だ。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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ロシア全土で反政府デモ(2017年3月26日)
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